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第二章:未来昔日 ― Days of Future Past ―
(ⅰ)
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尿意と空腹が、俺を現実に引き戻した。
俺は、レナ達を追い出してから、ずっと、親父の形見の強化服「水城」を見つめ続けていた。
何をすべきか、当の俺が何を望んでいるか俺自身にも判らないまま、結構な時間が過ぎた。
ヒーローごっこは、あっけなく終った。いや、俺が、その「ヒーローごっこ」から、あっさりハブられた。
多分、レナ達は、正義と仁愛を取り戻すのに成功するだろう。そして、その後は、また、いつもと同じ日々が続く。
それで何も問題ない筈なのに、何故か、俺はモヤモヤした気持ちを抱えていた。
トイレに行って、そして、昼飯を喰う為に外に出る。
車のエンジンは全開なのに、どこへ行くべきか判らない。折角、得た「力」の使い道が無くなったのに、「力」だけは残っている。そんな中途半端な状態。下品な言い方をすれば、チンコがギンギンにおっ勃ってるのに、自分が何に興奮してるかも判らず、オナニーのやり方も知らないような、そんな感じだ。
表通りまで出て、一番安い牛丼屋に入り、さっさと飯を済ませようとしたが……俺が店に入ってから、ほんの五分かそこらの間に、外で「何か」が起きたようだ。
外では銃弾と……そして、「魔法使い」達が使う「式神」だか「使い魔」だかが飛び交っていた。
まぁ、年に3~4回は有る事なので、驚く程では無いが……。
「はい、牛丼大盛りね」
「おい、あの『使い魔』、『神保町』の連中が使ってるのとも、『靖国神社』の連中のとも違くねぇか?」
近くの席の客が、外を見ながら、そう話していた。
「どっちみち、魔法使い相手だと『サラマンダーズ』の方が不利だな」
「しっかし、よりにもよって、『慰霊祭』の日に騷ぎを起すかね?」
親父が死んだ時の事を思い出した。「魔法」を防げるのは、基本的に「魔法」だけらしいので、魔法使いが相手だと、強化服だろうと、パワーローダーだろうと、戦車や装甲車だろうと、基本的に「人が乗ったり着装したりする武器」は不利になる……らしい。
そのせいで、最近は、無線操作が可能なパワーローダーや戦車・装甲車が軍隊や警察だけじゃなくて、犯罪組織や自警団でも使われるようになってるらしいが……。
そして、もちろん、俺の親父も……「神保町」の自警団のトップに、「水城」を着て殴りかかろうとして……あっさり呪い殺された。
騒ぎが収まった頃を見計らって、俺は牛丼屋を出る。
丁度、俺の居る辺りを挟んで、後方には、倒れてる「サラマンダーズ」の連中や動かなくなってる防弾SUVや4足歩行ヴィーグルが有った。そして……前方には……。
「おい……居たぞ……あのガキだ」
やたらとガタイのいい連中が二〇人弱。男女問わず、スキンヘッドか、長くても五分刈り位の髪。服は動き易そうな普段着で、女でもスカートをはいてるのは居ない。そして、全員が数珠のようなモノを首にかけている。
「おめぇが、石川智志の息子か?」
リーダー格らしい三〇過ぎのマッチョなスキンヘッドが、俺にそう言った。
スキンヘッドの魔法使い……まさか……。何故、台東区の自警団「寛永寺僧伽」の連中が「秋葉原」に居るんだ?
船で片道1時間はかかる、この千代田区に?
そして、何故、俺と親父の事を知っている?
「訳が判んねぇ、って面ぁしてんな……。ちょいと借りが有るヤツに頼まれてな……お前がやろうとしてる事を手助けする事になった」
「えっ?」
「早く準備をしろ。『靖国神社』に誘拐われたガキどもを取り戻しに行くぞ」
「ま……待ってくれ……あんた達は……その……『本土』から来る『御当地ヒーロー』と何か関係が有るのか?」
「……はぁ? そっちこそ待て、何の事だ?」
「いや……その……誘拐された俺の弟と妹を取り戻す為に……『本土』から御当地ヒーローを呼んだヤツが居るんだ」
「誰が、どうやって、そんな真似をした? どうなってんだ、一体?」
「ええっと……その……たまたま、この件に巻き込まれた『本土』から来た大学生が、『本土』の『御当地ヒーロー』にツテが有ったみたいで……」
スキンヘッドの一団は、俺の話を聞いて……ポカ~ンとした顔をした。
「冗談抜きで……何がどうなってる?」
俺は、レナ達を追い出してから、ずっと、親父の形見の強化服「水城」を見つめ続けていた。
何をすべきか、当の俺が何を望んでいるか俺自身にも判らないまま、結構な時間が過ぎた。
ヒーローごっこは、あっけなく終った。いや、俺が、その「ヒーローごっこ」から、あっさりハブられた。
多分、レナ達は、正義と仁愛を取り戻すのに成功するだろう。そして、その後は、また、いつもと同じ日々が続く。
それで何も問題ない筈なのに、何故か、俺はモヤモヤした気持ちを抱えていた。
トイレに行って、そして、昼飯を喰う為に外に出る。
車のエンジンは全開なのに、どこへ行くべきか判らない。折角、得た「力」の使い道が無くなったのに、「力」だけは残っている。そんな中途半端な状態。下品な言い方をすれば、チンコがギンギンにおっ勃ってるのに、自分が何に興奮してるかも判らず、オナニーのやり方も知らないような、そんな感じだ。
表通りまで出て、一番安い牛丼屋に入り、さっさと飯を済ませようとしたが……俺が店に入ってから、ほんの五分かそこらの間に、外で「何か」が起きたようだ。
外では銃弾と……そして、「魔法使い」達が使う「式神」だか「使い魔」だかが飛び交っていた。
まぁ、年に3~4回は有る事なので、驚く程では無いが……。
「はい、牛丼大盛りね」
「おい、あの『使い魔』、『神保町』の連中が使ってるのとも、『靖国神社』の連中のとも違くねぇか?」
近くの席の客が、外を見ながら、そう話していた。
「どっちみち、魔法使い相手だと『サラマンダーズ』の方が不利だな」
「しっかし、よりにもよって、『慰霊祭』の日に騷ぎを起すかね?」
親父が死んだ時の事を思い出した。「魔法」を防げるのは、基本的に「魔法」だけらしいので、魔法使いが相手だと、強化服だろうと、パワーローダーだろうと、戦車や装甲車だろうと、基本的に「人が乗ったり着装したりする武器」は不利になる……らしい。
そのせいで、最近は、無線操作が可能なパワーローダーや戦車・装甲車が軍隊や警察だけじゃなくて、犯罪組織や自警団でも使われるようになってるらしいが……。
そして、もちろん、俺の親父も……「神保町」の自警団のトップに、「水城」を着て殴りかかろうとして……あっさり呪い殺された。
騒ぎが収まった頃を見計らって、俺は牛丼屋を出る。
丁度、俺の居る辺りを挟んで、後方には、倒れてる「サラマンダーズ」の連中や動かなくなってる防弾SUVや4足歩行ヴィーグルが有った。そして……前方には……。
「おい……居たぞ……あのガキだ」
やたらとガタイのいい連中が二〇人弱。男女問わず、スキンヘッドか、長くても五分刈り位の髪。服は動き易そうな普段着で、女でもスカートをはいてるのは居ない。そして、全員が数珠のようなモノを首にかけている。
「おめぇが、石川智志の息子か?」
リーダー格らしい三〇過ぎのマッチョなスキンヘッドが、俺にそう言った。
スキンヘッドの魔法使い……まさか……。何故、台東区の自警団「寛永寺僧伽」の連中が「秋葉原」に居るんだ?
船で片道1時間はかかる、この千代田区に?
そして、何故、俺と親父の事を知っている?
「訳が判んねぇ、って面ぁしてんな……。ちょいと借りが有るヤツに頼まれてな……お前がやろうとしてる事を手助けする事になった」
「えっ?」
「早く準備をしろ。『靖国神社』に誘拐われたガキどもを取り戻しに行くぞ」
「ま……待ってくれ……あんた達は……その……『本土』から来る『御当地ヒーロー』と何か関係が有るのか?」
「……はぁ? そっちこそ待て、何の事だ?」
「いや……その……誘拐された俺の弟と妹を取り戻す為に……『本土』から御当地ヒーローを呼んだヤツが居るんだ」
「誰が、どうやって、そんな真似をした? どうなってんだ、一体?」
「ええっと……その……たまたま、この件に巻き込まれた『本土』から来た大学生が、『本土』の『御当地ヒーロー』にツテが有ったみたいで……」
スキンヘッドの一団は、俺の話を聞いて……ポカ~ンとした顔をした。
「冗談抜きで……何がどうなってる?」
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