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第二章:未来昔日 ― Days of Future Past ―
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あたし達は地下鉄で「銀座」に向っていた。この「島」は「人工の浮島」である以上、島の「地下」は空洞になっていて、その一部が建物の地下室や、町の地下街、電力・水道・通信その他のインフラ、そして、地下鉄に使われている。
「なぁ……来た時から気になってたんだが……この下にも……人が住んでるのか?」
「えっ?」
「いや……噂は有るけど……多分、都市伝説ってヤツ……」
荒木田さんは、首を傾げる。そう言えば、この人は「人間の生命力」みたいなモノを感知出来るんだったっけか……。って、ちょっと待ってよッ‼ マジで、「島」の最下層に「『関東難民』の中の更に『知られざる難民』」が住んでるって話、本当なのッ⁉
そして、地下鉄を降りて地上へ。正義くんと仁愛ちゃんの事が心配な上に、怪談めいた事を聞いて、朝の青空が全然さわやかに見えない。
コンビニで暁君に送られてきた「手順書」を印刷した後、待ち合わせの場所であるおしゃれ系のカフェへ。本社は沖縄で、「本土」では全国展開してるみたいだけど、この「島」では、「有楽町」と「神保町」にしか支店が無い。もちろん、あたしは、めったに行かない。
お盆の筈なのに、店内には、朝っぱらからモバイルPCで作業してるビジネスマン風の人がチラホラ。
「あ~、こっちです」
「ど~も」
イマイチダサくてイケてない感じの、あたしや勇気と同じ位の齢の男の子2人組。
1人は、短めの髪で、背は高めで、結構マッチョ。でも、いわゆる「体育会系」っぽくも「ヤンキー系」っぽくも無い顔。
もう1人は、背は中ぐらい、ガリガリ気味、気が弱そうな顔。
ガタイが良い方は、名物の焼き立てパン複数個に、多分、一番大きいサイズのカフェラテかカフェオレ、そして更にケーキ。ガリガリの方は朝食セット。
言っちゃ悪いが、この2人より、勇気の方が女の子にモてそうな気がする。ただし、外見だけなら……。勇気と付き合いたい、って女の子の友達が言い出したら、全力で止めるけど。
「今村です。今村亮介」
まずガタイがいい方が自己紹介。
「望月です。望月敏行」
続いて小柄な方。
「確か、何かのついでみたいだけど、何しに来たんだ?」
「『有楽町』と『神保町』の間あたりで開催される中古の電子部品の即売会に……」
「じゃあ、そこで、カメラ付きのドローンを何台かと、通信機を人数分買って来てもらえるか?」
「通信機は暗号化されてるヤツですよね?」
「もちろん」
「距離は?」
「この『島』内だけど……出来れば、端から端まで」
「距離は……最大で5㎞ぐらいですか? 厳しいなぁ……」
「ちょっと、高木と話して手を考えます」
どうやら、その「高木」と云うのが昨日の女の子の事らしい……。待て……「高木」?
「高木製作所の『高木』? あの……強化服の水城を作ってる……?」
勇気も、同じ事を思ったようだ。
「黙秘していいですか?」
「本土」から来た2人の男の子は、一瞬だけ顔を見合せると同時にそう言った。
どうやら、暁君が口を滑らせた事は本当だったようだ。
「あの……修理に使うネジは……普通のホームセンターで売ってるヤツでいいんですか?」
手順書を見た勇気が質問。
送られてきた手順書には、水城の部品や装甲を止める為のネジの規格も書いてあった。
「1回だけ大暴れするなら、ギリギリだけど、普通の素材で作られたネジでも持つって。あと、どうしても、最大出力の六~七〇%のパワーしか出せないんで、ネジなんかにかかる負荷も小さくなるって……メールに書いてあった」
「じゃあ、俺達がドローンとか通信機を買って来ます」
「本土」から来た2人のガリガリの方がそう言った。
「なら、私が小物類を買いに行こう。え~っと、安全靴持ってる人」
あたしと勇気が手を上げる。
「作業用の防御ゴーグル持ってる人」
続いて、またしても、あたしと勇気が手を上げる。
「色付き? それとも透明?」
「透明です」
「同じく」
「顔バレ防止の為に色付きのヤツが良いな……。あと、原付や自転車用のヤツで良いんで、ヘルメット持ってる人?」
なし。
「じゃあ、俺達が装甲の欠けた部分を作ります。高専の実習室に3Dプリンタが有るんで」
続けて勇気がそう言った。
「で、肝心の軍資金は?」
「本土」から来た2人のガタイの良い方がそう言ったので、あたしは「靖国神社」の「従業員」から奪った現金が入った袋を渡した。
「な……なに……この大金?」
「お金の出所については黙秘していい?」
「むしろ、何も知らずに『善意の第三者』のままでいたい……。金額が金額なんで……」
「なぁ……来た時から気になってたんだが……この下にも……人が住んでるのか?」
「えっ?」
「いや……噂は有るけど……多分、都市伝説ってヤツ……」
荒木田さんは、首を傾げる。そう言えば、この人は「人間の生命力」みたいなモノを感知出来るんだったっけか……。って、ちょっと待ってよッ‼ マジで、「島」の最下層に「『関東難民』の中の更に『知られざる難民』」が住んでるって話、本当なのッ⁉
そして、地下鉄を降りて地上へ。正義くんと仁愛ちゃんの事が心配な上に、怪談めいた事を聞いて、朝の青空が全然さわやかに見えない。
コンビニで暁君に送られてきた「手順書」を印刷した後、待ち合わせの場所であるおしゃれ系のカフェへ。本社は沖縄で、「本土」では全国展開してるみたいだけど、この「島」では、「有楽町」と「神保町」にしか支店が無い。もちろん、あたしは、めったに行かない。
お盆の筈なのに、店内には、朝っぱらからモバイルPCで作業してるビジネスマン風の人がチラホラ。
「あ~、こっちです」
「ど~も」
イマイチダサくてイケてない感じの、あたしや勇気と同じ位の齢の男の子2人組。
1人は、短めの髪で、背は高めで、結構マッチョ。でも、いわゆる「体育会系」っぽくも「ヤンキー系」っぽくも無い顔。
もう1人は、背は中ぐらい、ガリガリ気味、気が弱そうな顔。
ガタイが良い方は、名物の焼き立てパン複数個に、多分、一番大きいサイズのカフェラテかカフェオレ、そして更にケーキ。ガリガリの方は朝食セット。
言っちゃ悪いが、この2人より、勇気の方が女の子にモてそうな気がする。ただし、外見だけなら……。勇気と付き合いたい、って女の子の友達が言い出したら、全力で止めるけど。
「今村です。今村亮介」
まずガタイがいい方が自己紹介。
「望月です。望月敏行」
続いて小柄な方。
「確か、何かのついでみたいだけど、何しに来たんだ?」
「『有楽町』と『神保町』の間あたりで開催される中古の電子部品の即売会に……」
「じゃあ、そこで、カメラ付きのドローンを何台かと、通信機を人数分買って来てもらえるか?」
「通信機は暗号化されてるヤツですよね?」
「もちろん」
「距離は?」
「この『島』内だけど……出来れば、端から端まで」
「距離は……最大で5㎞ぐらいですか? 厳しいなぁ……」
「ちょっと、高木と話して手を考えます」
どうやら、その「高木」と云うのが昨日の女の子の事らしい……。待て……「高木」?
「高木製作所の『高木』? あの……強化服の水城を作ってる……?」
勇気も、同じ事を思ったようだ。
「黙秘していいですか?」
「本土」から来た2人の男の子は、一瞬だけ顔を見合せると同時にそう言った。
どうやら、暁君が口を滑らせた事は本当だったようだ。
「あの……修理に使うネジは……普通のホームセンターで売ってるヤツでいいんですか?」
手順書を見た勇気が質問。
送られてきた手順書には、水城の部品や装甲を止める為のネジの規格も書いてあった。
「1回だけ大暴れするなら、ギリギリだけど、普通の素材で作られたネジでも持つって。あと、どうしても、最大出力の六~七〇%のパワーしか出せないんで、ネジなんかにかかる負荷も小さくなるって……メールに書いてあった」
「じゃあ、俺達がドローンとか通信機を買って来ます」
「本土」から来た2人のガリガリの方がそう言った。
「なら、私が小物類を買いに行こう。え~っと、安全靴持ってる人」
あたしと勇気が手を上げる。
「作業用の防御ゴーグル持ってる人」
続いて、またしても、あたしと勇気が手を上げる。
「色付き? それとも透明?」
「透明です」
「同じく」
「顔バレ防止の為に色付きのヤツが良いな……。あと、原付や自転車用のヤツで良いんで、ヘルメット持ってる人?」
なし。
「じゃあ、俺達が装甲の欠けた部分を作ります。高専の実習室に3Dプリンタが有るんで」
続けて勇気がそう言った。
「で、肝心の軍資金は?」
「本土」から来た2人のガタイの良い方がそう言ったので、あたしは「靖国神社」の「従業員」から奪った現金が入った袋を渡した。
「な……なに……この大金?」
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