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第一章:宿怨 ― Hereditary ―
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「生きた人間は居ない。少なくとも……この周囲には……」
「さっきのお化けみたいなモノも消えた」
荒木田さんと勇気はそう言った。
「みんなも何も見えない?」
子供達は首を縦にふる。
「じゃあ、行くか……」
「行くって……どこに……?」
「この人数が乗れる車をどこかで奪うしか……嘘だろ、隠れろ」
地面が揺れる。そして……足音。しかし、人間のものにしては大き過ぎる。
「あ……そう言えば……ここで……その……」
「あれを使った『見世物』をやってるとか言ってたな」
それは……一応は「人」の形をしていた。しかし……問題は……背丈が4mで全身を装甲で覆われている事。
「中に人は居ない……無線で操作されてる」
『何が居る?』
「戦闘用パワーローダー。……とりあえず1台だけ」
『さっきの要領で、空気を熱膨張させろ。そいつが爆音に反応したなら、あんた達が居るのと、反対の方向に引き付けろ』
「判った」
あたしは言われた通りに爆音を次々と起した。すると、パワーローダーは爆音の方向に歩いていった。あたしは、爆音を更に発生させ……やがて……パワーローダーの姿は薄闇の中に消え……あぁ、そうだ……もうこんな時間か……。
「行くぞ……とりあえず……車が無事かどうかだけでも見に行くか」
「あの……もし、他に車を入手出来たら、あの車……」
「ここに残してたら、それを手掛かりに身元を知られる。始末するしか無い」
「あ……でも……あれが無いと……近所の人達が色々と……」
「どうしたモノかな……とりあえず駐車場まで行って考えよう」
そして、およそ一五分後……。
「やっぱり、こうなったか……」
駐車場には軍隊の戦闘服っぽい迷彩模様のツナギを来た男が一〇人近く居た。そして、駐車場の車の中で、あからさまに浮いている、あたし達の車を取り囲んでいる。ある男は特殊警棒を、別の男は木刀を……更に別の男は拳銃や小型の機関銃を持ってる。
一端、建物の陰に隠れてたあたし達だが……。
「マズい……バレたか?」
男達は、あたし達の方向に近付いて来る。しかも、誰かと無線で話しながら……。
「でも、どうやって?……監視カメラは潰した筈」
「……なあ……馬鹿な事を聞いていいか? この辺りって、ネズミって多いのか?」
荒木田さんが、いきなり変な事を聞いてきた。
「えっ?」
「私は……その……生物の生命力みたいなモノを感じ取る能力が有る。……人間は全然居なかった……けど……」
『さっきから、ずっと付いて来てる、文字通りの「ネズミ」が居た訳か……。多分、そいつを通して、あんた達を監視してた呪い師が居たんだろう』
「どうすればいい?」
『こっちも、今、考えてる。まずは……そのネズミを……』
その時、連れていた子供達がざわめき出す。
「変だ……そのネズミが死んだ」
『はぁっ⁉』
「嘘だろ……あいつは……見た事有る……そんな……」
「勇気……今度は何が見えるの?」
今度も、あたしには見えない。荒木田さんも見えてないみたいだ。そして、勇気と子供達には見えてる。
「えっと……顔は雄ライオン。背中には天使みたいな翼。胴体はビキニアーマー付けた女。下半身は蛇。半透明で全身から黄緑の光を出してる」
「そいつが何をした?」
「そいつの放った矢みたいなモノが、そこに吸い込まれて……」
勇気は、あたし達の背後の方の地面を指差した。そこに転がっていたのは……ネズミの死体。
続いて、あたし達に近付いて来る男達と、駐車場に残っていた男達が騷ぎ出す。そして……男達は……次々と倒れた。
「何か、変な感じはしなかったか? 私が『力』を使った時みたいな」
荒木田さんは、あたしにそう聞いた。
「いえ……全然」
「そうか……敵か味方かは判らんが……どうやら、この街の連中と対立している普通の魔法使いが居るようだ。私達は普通の魔法使いが使う『魔力』みたいなモノを感じられないが……普通の魔法使いの方にも、私達が力を使った気配みたいなモノは感知する手段は無いらしい」
「あの……普通って何?」
「さあな……私達が生まれる前……二一世紀最初の年に……全世界が何が『普通』か判らない時代に突入してる。……あと……勇気君、今、見えてるモノに見覚えが有るのか……?」
「はい……」
「いつ、それを見た?」
「俺の親父が死んだ時……アレは俺の親父を殺したモノです……。『神保町』の自警団の首領の……使い魔です」
「さっきのお化けみたいなモノも消えた」
荒木田さんと勇気はそう言った。
「みんなも何も見えない?」
子供達は首を縦にふる。
「じゃあ、行くか……」
「行くって……どこに……?」
「この人数が乗れる車をどこかで奪うしか……嘘だろ、隠れろ」
地面が揺れる。そして……足音。しかし、人間のものにしては大き過ぎる。
「あ……そう言えば……ここで……その……」
「あれを使った『見世物』をやってるとか言ってたな」
それは……一応は「人」の形をしていた。しかし……問題は……背丈が4mで全身を装甲で覆われている事。
「中に人は居ない……無線で操作されてる」
『何が居る?』
「戦闘用パワーローダー。……とりあえず1台だけ」
『さっきの要領で、空気を熱膨張させろ。そいつが爆音に反応したなら、あんた達が居るのと、反対の方向に引き付けろ』
「判った」
あたしは言われた通りに爆音を次々と起した。すると、パワーローダーは爆音の方向に歩いていった。あたしは、爆音を更に発生させ……やがて……パワーローダーの姿は薄闇の中に消え……あぁ、そうだ……もうこんな時間か……。
「行くぞ……とりあえず……車が無事かどうかだけでも見に行くか」
「あの……もし、他に車を入手出来たら、あの車……」
「ここに残してたら、それを手掛かりに身元を知られる。始末するしか無い」
「あ……でも……あれが無いと……近所の人達が色々と……」
「どうしたモノかな……とりあえず駐車場まで行って考えよう」
そして、およそ一五分後……。
「やっぱり、こうなったか……」
駐車場には軍隊の戦闘服っぽい迷彩模様のツナギを来た男が一〇人近く居た。そして、駐車場の車の中で、あからさまに浮いている、あたし達の車を取り囲んでいる。ある男は特殊警棒を、別の男は木刀を……更に別の男は拳銃や小型の機関銃を持ってる。
一端、建物の陰に隠れてたあたし達だが……。
「マズい……バレたか?」
男達は、あたし達の方向に近付いて来る。しかも、誰かと無線で話しながら……。
「でも、どうやって?……監視カメラは潰した筈」
「……なあ……馬鹿な事を聞いていいか? この辺りって、ネズミって多いのか?」
荒木田さんが、いきなり変な事を聞いてきた。
「えっ?」
「私は……その……生物の生命力みたいなモノを感じ取る能力が有る。……人間は全然居なかった……けど……」
『さっきから、ずっと付いて来てる、文字通りの「ネズミ」が居た訳か……。多分、そいつを通して、あんた達を監視してた呪い師が居たんだろう』
「どうすればいい?」
『こっちも、今、考えてる。まずは……そのネズミを……』
その時、連れていた子供達がざわめき出す。
「変だ……そのネズミが死んだ」
『はぁっ⁉』
「嘘だろ……あいつは……見た事有る……そんな……」
「勇気……今度は何が見えるの?」
今度も、あたしには見えない。荒木田さんも見えてないみたいだ。そして、勇気と子供達には見えてる。
「えっと……顔は雄ライオン。背中には天使みたいな翼。胴体はビキニアーマー付けた女。下半身は蛇。半透明で全身から黄緑の光を出してる」
「そいつが何をした?」
「そいつの放った矢みたいなモノが、そこに吸い込まれて……」
勇気は、あたし達の背後の方の地面を指差した。そこに転がっていたのは……ネズミの死体。
続いて、あたし達に近付いて来る男達と、駐車場に残っていた男達が騷ぎ出す。そして……男達は……次々と倒れた。
「何か、変な感じはしなかったか? 私が『力』を使った時みたいな」
荒木田さんは、あたしにそう聞いた。
「いえ……全然」
「そうか……敵か味方かは判らんが……どうやら、この街の連中と対立している普通の魔法使いが居るようだ。私達は普通の魔法使いが使う『魔力』みたいなモノを感じられないが……普通の魔法使いの方にも、私達が力を使った気配みたいなモノは感知する手段は無いらしい」
「あの……普通って何?」
「さあな……私達が生まれる前……二一世紀最初の年に……全世界が何が『普通』か判らない時代に突入してる。……あと……勇気君、今、見えてるモノに見覚えが有るのか……?」
「はい……」
「いつ、それを見た?」
「俺の親父が死んだ時……アレは俺の親父を殺したモノです……。『神保町』の自警団の首領の……使い魔です」
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