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第一章:チキンラン

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 ところが……続いて、外の明るさが微妙に変化。
「おい、久米、何が起きてる?」
「無茶苦茶だ……おい、馬鹿、迂闊に出て来んじゃねえッ‼」
「状況が判んねえんだから……何だ、こりゃ?」
 上空の複合ヘリが移動していた。
 それを追うように、空に光線のようなモノが走る。
「何だ……ありゃ?」
「曳光弾だ」
「だから……何だ?」
「機関銃なんかの弾に何発か一発入ってるヤツだ。飛んでる最中に暗闇で光って見える」
「良く知ってんな」
「ああ、俺が元居た『組』は対人用火器どころか、迫撃砲や対物ライフルや重機関銃まで持ってたんでな」
「どう言うヤクザだ?」
「仕方ねえだろ。熊本を拠点にしてた商売がたきが4mクラスの軍用パワーローダーまで持ってたんだから」
 おいおい、「NEO TOKYO」も、結構、治安がアレだと思ってたが……「本土」は、それ以上だったのかよ。
「ところで……あれ……わざとヘリを外してないか?」
「多分……あのヘリの所属先とは違う『誰か』が、ヘリに警告してんだろう。大人しく去ってくんなら、撃ち落さずに済ませてやる、ってな」
「何か……やな予感が……」
「ああ……ヘリが行ってくれた代りに……来やがった」
「何がだ?」
「この姿の時の俺は……耳も効くし……多少は赤外線も見える」
「へっ?」
 念の為……「気」を放つ。誰かの「気」を検知する為のアクティブ・センシングだ。
 甲板に「お客さん」達が居る。
 だが……それ以外の気配は……ん?
「動くな……。下手な真似はすんな」
「お……おい……」
 久米が猛ダッシュ。
 下手な「高速移動能力」持ちより速いはええかも知れ……ん?
 何だ?
 暗闇では目立つ……白い帽子に白いジャージのデブが、どこからともなく現われ……甲板で一塊になってるお客さんに近付く。
 おい……何で、俺の気配を探る術で検知出来なかった?
 久米が白豚野郎を右手の爪で攻撃。
 何だ、あのデブ? サモ・ハン・キンポーか何かか? 昔の香港映画の「燃えよデブゴン」かよ?
 あっさり、久米の攻撃を避けて、後方に大きくジャンプ。
 それも……良く見ると、ポケットに両手を入れたまま余裕かまして……。
 次の瞬間……久米のズボンが弾け散る。
「あっ?」
 久米の尻から……巨大な尻尾モフモフが出現し……そして、久米の体が回転、巨大な尻尾モフモフが暗闇に潜んでいた誰かを引っ叩いた。
 おい……そうか……あのデブが暗闇でも目立つ格好をしてたのは……おとりか……。
 暗闇の中に……黒一色の服を着た誰かの手に有る日本刀ポンとうの銀色の輝きが煌いていた。
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