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第四章:ありふれた悪事/Ordinary Person
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数日後、俺は弁護士・検事・警官の付き添いて……市内の大学病院にやって来ていた。
どうやら、俺がホニャララかどうかを検査する事になったらしい。
「じゃあ、詳細な結果は、後日、検察と弁護士さんの事務所に送りますので」
「あの……医師、どうでしょうか?」
「はぁ?」
「あの……その……つまり、心神喪失が認められますかね?」
「いや、あのねえ、精神医学の見解は、法律家にとっては、あくまで参考意見みたいなモノでしょ。こっちが聞きたいよ」
「いや……でも……弁護士会の当番で、たまたま、この人の弁護をやる事になっただけで……本当は、この手の事件の弁護って、あんまりやった事ないですよ。医師の個人的な見解でいいんで……」
「じゃ、はっきり言いますよ。もっと酷い状態の人でも、裁判で責任能力有りで有罪になった事例を何件も知ってます」
「は……はぁ……」
クソ……なんで、こんな弁護士に当たったんだ?
人権派弁護士ども何やって……あれ? 何か、その話、少し前に聞いた気がするが……まあ、いいや……。
「あの……容疑者の方」
「俺ですか……?」
「そうです」
「何ですか?」
「待合室に置いてある新聞と雑誌を持って帰ろうとしてるでしょ」
「い……いや……でも檻の中には娯楽が無くて……」
「ウチの病院の備品です。返して下さい」
市長選挙は始まり……どうやら、聞いた事も無い名前の関東難民受け入れ派のヤツが優勢らしい。
もう……俺は……全てを失な……ん? 待てよ……なんか、そう思う度に、更に酷い目に遭ってきたような気がするけど……。
でも……俺には、もう失なうモノなんて残ってない筈だ……。
いっそ、せいせいした。
そんな事を考えながら、病院の駐車場まで辿り着くと……ん?
「お……おい……どこから……情報が漏れたんだ?」
「わ……わかりません……」
駐車場に停まっていた車。
その周囲の物陰……。
様々な場所から……次々と……。
ああ、そうか……。
まだ、「正義の味方」どもに洗脳されていない人達が……こんなにも居たんだ……。
デブも居た。痩せてるのも居た。
背が高いのも……。チビも……。
男も……。
女も……。
車椅子の奴まで居る。
そして……何十人ものクリムゾン・サンシャインの代表らしき奴が……強い口調で、こう宣告した。
「緒方一郎を渡してもらおう……。クリムゾン・サンシャインの名を貶めた奴を我々の手で粛清する」
え? 俺、もしかして助かるの……あれ? 待てよ……。
今「粛清」って言った気がするけど……どう云う意味?
どうやら、俺がホニャララかどうかを検査する事になったらしい。
「じゃあ、詳細な結果は、後日、検察と弁護士さんの事務所に送りますので」
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「いや……でも……弁護士会の当番で、たまたま、この人の弁護をやる事になっただけで……本当は、この手の事件の弁護って、あんまりやった事ないですよ。医師の個人的な見解でいいんで……」
「じゃ、はっきり言いますよ。もっと酷い状態の人でも、裁判で責任能力有りで有罪になった事例を何件も知ってます」
「は……はぁ……」
クソ……なんで、こんな弁護士に当たったんだ?
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「そうです」
「何ですか?」
「待合室に置いてある新聞と雑誌を持って帰ろうとしてるでしょ」
「い……いや……でも檻の中には娯楽が無くて……」
「ウチの病院の備品です。返して下さい」
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もう……俺は……全てを失な……ん? 待てよ……なんか、そう思う度に、更に酷い目に遭ってきたような気がするけど……。
でも……俺には、もう失なうモノなんて残ってない筈だ……。
いっそ、せいせいした。
そんな事を考えながら、病院の駐車場まで辿り着くと……ん?
「お……おい……どこから……情報が漏れたんだ?」
「わ……わかりません……」
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その周囲の物陰……。
様々な場所から……次々と……。
ああ、そうか……。
まだ、「正義の味方」どもに洗脳されていない人達が……こんなにも居たんだ……。
デブも居た。痩せてるのも居た。
背が高いのも……。チビも……。
男も……。
女も……。
車椅子の奴まで居る。
そして……何十人ものクリムゾン・サンシャインの代表らしき奴が……強い口調で、こう宣告した。
「緒方一郎を渡してもらおう……。クリムゾン・サンシャインの名を貶めた奴を我々の手で粛清する」
え? 俺、もしかして助かるの……あれ? 待てよ……。
今「粛清」って言った気がするけど……どう云う意味?
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