49 / 69
第三章 糞蠅/Breathless
(14)
しおりを挟む
「じゃあ、古賀さん。あそこのカンペに書いてある事を読み上げて下さいね。そうすれば……娘さんだけは助けてあげますよ」
「見習い」は古賀にそう囁いた。
「は……はい……」
古賀は……右手に出刃包丁を握らされ……更にその手をガムテープでグルグル巻きにされている。
「じゃあ、山下さん。僕の姿は……UPする前に画像処理で消して下さいね」
「い……いや、こんなモノ流石に……」
「やれ」
「でも……」
「やれと言ったら、やれ。責任は全部、俺が取る」
「は……はぁ……」
「じゃあ古賀さん、『撮影スタート』でカンペを読み上げて下さい。はい、撮影スタート」
「くるめし……ふくしちょうの……こがでございます……。わ……わたしは……くるめしみんのみなさまに……おわびもうしあげます……。わたしは……せいぎのみか……たをな……のる……てろりす……とのてさ……きでした。わた……しは……しせ……いをの……っとり……せい……ぎのみか……たをなの……るてろり……すとの……めいれいで……おそろしい……けいかくをじっこうする……てはず……でした」
そうだ……それこそが……俺達が苦労して掴んだ「真実」だ。
それを今、奴らの一味である古賀が自白している。
「どんな……けいかくかは……もうしあげられませんが……とにかく、おそろ……しいけいかくです」
ああ、そうだ。この動画を観た者は……「正義の味方」どもが裏でどんな恐しい犯罪を行なっていたかを知り……そして、「正義の味方」どもを、この社会から排除する事を決意するだろう。
「しみんのみなさま……つぎのしちょう……せんきょ……では、げんしちょうのごしそくである……おがたいちろうさまに……きよき……いっぴょうをおねがい……します」
やったぞ、これで、俺は久留米市長だ。
「あと……やくざさんの……あんとく……ぐるーぷが……ぬれぎぬをきせられた…みっつのじけんですが……すべてわたしのしわざです……わたしが、みにこみしのきしゃをころし……しちょうのむすめさんごふうふをらちかんきんし……じぶんのむすめをじぶんでゆうかいしたのです」
何て奴だ……俺とクリムゾン・サンシャインを陥れる為だけに、こんな恐しい真似をやった奴が……俺達が生まれ育ち住んでいる町の副市長……そして、市長である俺の親父の腹心だったなんて……。
「どうか……ふくおかけんけいほんぶちょうのおかあさんがはいっている……ろうじんほーむをせんきょしているやくざのみなさん……。あなたがたが……ぬれぎぬをきせられたじけんのしんはんにんは……ここにいます。どうか……ろうじんほーむのにゅうきょしゃのみなさんを……かいほうしてさしあげてください……」
だが……「正義の味方」どもの恐しい悪事は……全て裏目に出た。
これで、俺は、親父の跡を継いで、次の久留米市長だ。
しかも、今、起きている事件を解決して……県警のエラいさんに恩を売る事さえ出来た。
俺の未来は……光に満ちている。
俺の完全勝利だ。
「あの……カンペに書いてある『おわびにせっぷくします』ってどう云う事ですか?……ぎゃああああッ‼」
古賀の断末魔が轟き渡った。「見習い」が古賀を介錯……いや、介錯とは何か違う気がするが……ともかく、古賀の手にガムテープで固定した包丁を、古賀の腹に突き刺した。
古賀は「正義の味方」の組織の末端に過ぎないだろう。
それでも「正義」は死んだ。
俺は久留米市長を最初の足掛かりにして……いつか再建される日本政府の首相にまで上り詰めてみせる。
そして、俺の手で……「正義の暴走」が一掃された日本を現実のものにしてみせる……。
「あ……あの……」
「どうした山下?」
阿呆が、人が感傷に浸ってるのを邪魔しやがって……。
「この死体、どうすんですか?」
「娘の死体と一緒に近くのダムに捨ててこい」
「……あ……あ……あ……あ……」
「おい、落ち着け、はい、深呼吸」
「あのですね……流石に……」
「ああ、俺も流石にうっかりしてた……」
「へっ?」
「娘の方は、まだ死体じゃなかった。生きたままダムに捨てるか、死体にしてからダムに捨てるかは、お前たちに任せる」
「見習い」は古賀にそう囁いた。
「は……はい……」
古賀は……右手に出刃包丁を握らされ……更にその手をガムテープでグルグル巻きにされている。
「じゃあ、山下さん。僕の姿は……UPする前に画像処理で消して下さいね」
「い……いや、こんなモノ流石に……」
「やれ」
「でも……」
「やれと言ったら、やれ。責任は全部、俺が取る」
「は……はぁ……」
「じゃあ古賀さん、『撮影スタート』でカンペを読み上げて下さい。はい、撮影スタート」
「くるめし……ふくしちょうの……こがでございます……。わ……わたしは……くるめしみんのみなさまに……おわびもうしあげます……。わたしは……せいぎのみか……たをな……のる……てろりす……とのてさ……きでした。わた……しは……しせ……いをの……っとり……せい……ぎのみか……たをなの……るてろり……すとの……めいれいで……おそろしい……けいかくをじっこうする……てはず……でした」
そうだ……それこそが……俺達が苦労して掴んだ「真実」だ。
それを今、奴らの一味である古賀が自白している。
「どんな……けいかくかは……もうしあげられませんが……とにかく、おそろ……しいけいかくです」
ああ、そうだ。この動画を観た者は……「正義の味方」どもが裏でどんな恐しい犯罪を行なっていたかを知り……そして、「正義の味方」どもを、この社会から排除する事を決意するだろう。
「しみんのみなさま……つぎのしちょう……せんきょ……では、げんしちょうのごしそくである……おがたいちろうさまに……きよき……いっぴょうをおねがい……します」
やったぞ、これで、俺は久留米市長だ。
「あと……やくざさんの……あんとく……ぐるーぷが……ぬれぎぬをきせられた…みっつのじけんですが……すべてわたしのしわざです……わたしが、みにこみしのきしゃをころし……しちょうのむすめさんごふうふをらちかんきんし……じぶんのむすめをじぶんでゆうかいしたのです」
何て奴だ……俺とクリムゾン・サンシャインを陥れる為だけに、こんな恐しい真似をやった奴が……俺達が生まれ育ち住んでいる町の副市長……そして、市長である俺の親父の腹心だったなんて……。
「どうか……ふくおかけんけいほんぶちょうのおかあさんがはいっている……ろうじんほーむをせんきょしているやくざのみなさん……。あなたがたが……ぬれぎぬをきせられたじけんのしんはんにんは……ここにいます。どうか……ろうじんほーむのにゅうきょしゃのみなさんを……かいほうしてさしあげてください……」
だが……「正義の味方」どもの恐しい悪事は……全て裏目に出た。
これで、俺は、親父の跡を継いで、次の久留米市長だ。
しかも、今、起きている事件を解決して……県警のエラいさんに恩を売る事さえ出来た。
俺の未来は……光に満ちている。
俺の完全勝利だ。
「あの……カンペに書いてある『おわびにせっぷくします』ってどう云う事ですか?……ぎゃああああッ‼」
古賀の断末魔が轟き渡った。「見習い」が古賀を介錯……いや、介錯とは何か違う気がするが……ともかく、古賀の手にガムテープで固定した包丁を、古賀の腹に突き刺した。
古賀は「正義の味方」の組織の末端に過ぎないだろう。
それでも「正義」は死んだ。
俺は久留米市長を最初の足掛かりにして……いつか再建される日本政府の首相にまで上り詰めてみせる。
そして、俺の手で……「正義の暴走」が一掃された日本を現実のものにしてみせる……。
「あ……あの……」
「どうした山下?」
阿呆が、人が感傷に浸ってるのを邪魔しやがって……。
「この死体、どうすんですか?」
「娘の死体と一緒に近くのダムに捨ててこい」
「……あ……あ……あ……あ……」
「おい、落ち着け、はい、深呼吸」
「あのですね……流石に……」
「ああ、俺も流石にうっかりしてた……」
「へっ?」
「娘の方は、まだ死体じゃなかった。生きたままダムに捨てるか、死体にしてからダムに捨てるかは、お前たちに任せる」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
異世界に転生した俺が、姫勇者様の料理番から最強の英雄になるまで
水辺野かわせみ
ファンタジー
【タイトル変更しました】
役者を目指すフリーターの雨宮漣は、アルバイトの特撮ヒーローショー『時空騎行グランゼイト』に出演中、乱入してきた暴漢から子どもを庇って刺され命を落としてしまうが、メビウスと名乗る謎の少年の力で異世界に転生させられる。
「危機に瀕した世界があってね。君に『時空騎行グランゼイト』と同じ力をあげるよ。」
「え? いや、俺がなりたいのはヒーローじゃなくて俳優なんだけど!?」
「その世界で君が何をするかは、君の自由。主役になるのか脇役で終わるのかも、ね」
「ちょっと待って、話し聞いてっ」
漣に与えられたのはヒーローに変身する能力と、
「馴染めない文化もあるだろうからね、これは僕からの特典だよ」
現代日本で手に入る全ての調味料だった。
転生させられた異世界で最初に出会ったのは、超絶美人で食いしん坊?な女勇者様。
そこで振舞った料理が彼女の胃袋を掴み、専属料理番として雇われる事に。
役者、英雄、料理番、etc。
「俺っていったい、何者?」
戸惑いながらも、貰ったスキルを使って姫勇者をサポートする漣は、異世界で【誰か】になれる事を目指す。
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
【完結】Atlantis World Online-定年から始めるVRMMO-
双葉 鳴|◉〻◉)
SF
Atlantis World Online。
そこは古代文明の後にできたファンタジー世界。
プレイヤーは古代文明の末裔を名乗るNPCと交友を測り、歴史に隠された謎を解き明かす使命を持っていた。
しかし多くのプレイヤーは目先のモンスター討伐に明け暮れ、謎は置き去りにされていた。
主人公、笹井裕次郎は定年を迎えたばかりのお爺ちゃん。
孫に誘われて参加したそのゲームで幼少時に嗜んだコミックの主人公を投影し、アキカゼ・ハヤテとして活動する。
その常識にとらわれない発想力、謎の行動力を遺憾なく発揮し、多くの先行プレイヤーが見落とした謎をバンバンと発掘していった。
多くのプレイヤー達に賞賛され、やがて有名プレイヤーとしてその知名度を上げていくことになる。
「|◉〻◉)有名は有名でも地雷という意味では?」
「君にだけは言われたくなかった」
ヘンテコで奇抜なプレイヤー、NPC多数!
圧倒的〝ほのぼの〟で送るMMO活劇、ここに開幕。
===========目録======================
1章:お爺ちゃんとVR 【1〜57話】
2章:お爺ちゃんとクラン 【58〜108話】
3章:お爺ちゃんと古代の導き【109〜238話】
4章:お爺ちゃんと生配信 【239話〜355話】
5章:お爺ちゃんと聖魔大戦 【356話〜497話】
====================================
2020.03.21_掲載
2020.05.24_100話達成
2020.09.29_200話達成
2021.02.19_300話達成
2021.11.05_400話達成
2022.06.25_完結!
裏信長記 (少しぐらい歴史に強くたって現実は厳しいんです)
ろくさん
SF
時は戦国の世、各地にいくさ、争い、 絶えざる世界
そんな荒廃しきった歴史の大きな流れの中に、1人の少年の姿があった。
平成の年号になって、平和にどっぷりと浸かりきった現在、まず見られることはないであろう少しユニークとすら言える格式?高い家に生まれた少年が、元服の儀で家宝の小刀を受け継ぐ。
そんな家宝である小刀が輝くとき、少年は不思議な世界に迷い込む!
誤字脱字等、多々あろうことかとおもいますが、暖かい目で見ていただけると幸いです。
VRMMOで神様の使徒、始めました。
一 八重
SF
真崎宵が高校に進学して3ヶ月が経過した頃、彼は自分がクラスメイトから避けられている事に気がついた。その原因に全く心当たりのなかった彼は幼馴染である夏間藍香に恥を忍んで相談する。
「週末に発売される"Continued in Legend"を買うのはどうかしら」
これは幼馴染からクラスメイトとの共通の話題を作るために新作ゲームを勧められたことで、再びゲームの世界へと戻ることになった元動画配信者の青年のお話。
「人間にはクリア不可能になってるって話じゃなかった?」
「彼、クリアしちゃったんですよね……」
あるいは彼に振り回される運営やプレイヤーのお話。
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
人間の恋人なんていらない。
みらいつりびと
SF
お仕事恋愛長編小説です。全43話。
地方公務員の波野数多は内気で異性と話すのが苦手。
貯金して高性能AIを搭載した美少女アンドロイドを購入し、恋人にしようと思っている。
2千万円貯めて買った不良少女型アンドロイドは自由意志を持っていた。
彼女と付き合っているうちに、職場の後輩からも言い寄られて……。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる