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第一章:凡夫賊子/Ordinary People
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「あの……何の用かは知りませんが……冗談抜きで、これマズいでしょ……」
マンションに来た猿渡のおっちゃんは、部屋の片隅に転がってるクソ妹とクソ義弟を見て、そう言った。
「ところで、これ、誰だと思う?」
そう言って、俺は携帯電話の画面を見せた。
「え……えッ?」
一瞬、猿渡のおっちゃんは、その写真に写ってるのが誰か判らなかったようだ……。
おいおい、冷たい父親も居たもんだな。
「……あ……あの……ま……まさか……」
「別れた奥さんに引き取られたとは言え、可愛い子供さんの写真だ。猿渡さんのとこに送って……」
「やめて下さい、接近禁止命令が出てんです。万が一の場合、こんな写真が送られた履歴が見付かっただけで……」
猿渡のおっさんは、広域組対を馘(表向きは「自己都合退職」)になった時の事件に、元カミさんと子供を巻き込んで危険に晒してしまったらしく、元カミさんが県警に接近禁止命令願いを提出、その結果、元カミさんや子供に意図的に近付いたのが見付かれば、手錠に腰縄を付けられて県警の取調べ室に御案内だ。
「いや、偶然、俺の友達が見付けちゃってさ……」
「絶対に偶然じゃないだろ……」
「偶然だよ、偶然」
以前、このおっちゃんと飲んだ時に聞き出した元カミさんと子供達の特徴を仲間達に送ったら……偶然にも、仲間の1人が、おっちゃんの娘の名前が書かれた体操着を着た小学生を見付け出したのだ。その「友達」は、ある理由で撮り貯めた大量の写真を、これまた、ある理由で文字認識アプリに食わせとか言ってたが……偶然は偶然だ。
「と云う訳でさ、このメアドで名前が『府川拓海』ってのが、何者か、警察の知り合いに頼んで調べてもらえない?」
「いや……待って下さい……その……」
「あのねぇ、おっちゃん。警察を馘になった人を、ウチの親父が何で飼ってると思ってんの? こんな時の為でしょ。給料分の仕事してよ」
「給料出してんの、あんたじゃね~だろ……」
「あ……なら、この写真を撮影したヤツが、おっちゃんの娘さんに、ちょっと、ご挨拶するよ」
「何者だ、そいつは……?」
「普通の温厚な友達だよ……。ただ、小学生の女の子を望遠レンズで撮影するって、変な趣味が有る以外は……」
「ふ……ふざけ……」
「あ……その友達には、日に一回、連絡する事になってて、連絡が途絶えた日の翌朝には、娘さんにご挨拶に行く手筈になってるから……」
「あ……あんた……何で、こんな事にだけは頭が回るんだ?」
「あのさ……マジで気付いてないの?」
「何が?」
「おっちゃんと飲んだ時に聞いた、おっちゃんが広域組対に居た時に使ってた手口だよ、何から何まで」
マンションに来た猿渡のおっちゃんは、部屋の片隅に転がってるクソ妹とクソ義弟を見て、そう言った。
「ところで、これ、誰だと思う?」
そう言って、俺は携帯電話の画面を見せた。
「え……えッ?」
一瞬、猿渡のおっちゃんは、その写真に写ってるのが誰か判らなかったようだ……。
おいおい、冷たい父親も居たもんだな。
「……あ……あの……ま……まさか……」
「別れた奥さんに引き取られたとは言え、可愛い子供さんの写真だ。猿渡さんのとこに送って……」
「やめて下さい、接近禁止命令が出てんです。万が一の場合、こんな写真が送られた履歴が見付かっただけで……」
猿渡のおっさんは、広域組対を馘(表向きは「自己都合退職」)になった時の事件に、元カミさんと子供を巻き込んで危険に晒してしまったらしく、元カミさんが県警に接近禁止命令願いを提出、その結果、元カミさんや子供に意図的に近付いたのが見付かれば、手錠に腰縄を付けられて県警の取調べ室に御案内だ。
「いや、偶然、俺の友達が見付けちゃってさ……」
「絶対に偶然じゃないだろ……」
「偶然だよ、偶然」
以前、このおっちゃんと飲んだ時に聞き出した元カミさんと子供達の特徴を仲間達に送ったら……偶然にも、仲間の1人が、おっちゃんの娘の名前が書かれた体操着を着た小学生を見付け出したのだ。その「友達」は、ある理由で撮り貯めた大量の写真を、これまた、ある理由で文字認識アプリに食わせとか言ってたが……偶然は偶然だ。
「と云う訳でさ、このメアドで名前が『府川拓海』ってのが、何者か、警察の知り合いに頼んで調べてもらえない?」
「いや……待って下さい……その……」
「あのねぇ、おっちゃん。警察を馘になった人を、ウチの親父が何で飼ってると思ってんの? こんな時の為でしょ。給料分の仕事してよ」
「給料出してんの、あんたじゃね~だろ……」
「あ……なら、この写真を撮影したヤツが、おっちゃんの娘さんに、ちょっと、ご挨拶するよ」
「何者だ、そいつは……?」
「普通の温厚な友達だよ……。ただ、小学生の女の子を望遠レンズで撮影するって、変な趣味が有る以外は……」
「ふ……ふざけ……」
「あ……その友達には、日に一回、連絡する事になってて、連絡が途絶えた日の翌朝には、娘さんにご挨拶に行く手筈になってるから……」
「あ……あんた……何で、こんな事にだけは頭が回るんだ?」
「あのさ……マジで気付いてないの?」
「何が?」
「おっちゃんと飲んだ時に聞いた、おっちゃんが広域組対に居た時に使ってた手口だよ、何から何まで」
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