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何かがおかしい神魔最終戦争(ハルマゲドン)
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「父と子と聖霊の御名において命ずるッ‼ 立ち去れ、悪魔よッ‼」
神父は、そう絶叫すると銃をブッ放っ……いや、待てよ、この宗派では牧師と神父と司祭のどの呼び方を使ってんだっけ?
……まぁ、いいや。それは本題じゃない。
しかし、長生きはするものだ。十代半ばぐらいのオタクが考えたような「悪魔祓い」を現実で目にする羽目になるとは……。
おっと、これも本題じゃなかった。
「おい、ここも、もうすぐ戦場になる。俺たちと神の軍勢の戦いに巻き込まれて死にたくなけりゃ、とっとと逃げろ。この辺りだと、海の近くほど、戦いが激しくなってる」
俺は、その教会に逃げ込んでいる人間たちに、そう言った。
「ふ…ふざけるなッ‼ 誰が悪魔の言う事など……それに、今起きてる戦いは……悪魔同士の戦いではないかッ‼」
えっ?……ああ、そうか……人間からすれば……俺たちも神の軍勢も……「異形のモノ」である事に代りは無いのか……。
「おい、どこ行ってたんだ?」
遠い大昔からの友であるムルムルがそう言った。
「やっと人間の生き残りを見付けたんで、ちょっと助けにな……」
「そんな事やってる場合かよ?」
「いや、キリスト教徒だったんで、この戦いのせいで死に絶えられたら後で俺たちが困る」
「そうだけどさ……優先順位ってモンが……あれ?」
俺とムルムルは、ほぼ同時に、少し離れた場所に「ちょっと上の先輩」程度の奴の姿を発見し……。
「お~い、ビフロンスの兄貴‼ 無事だったんすか~ッ?」
「い……いや待て、何か変だぞ……。何で……あいつ、この状況で手下どもがまだ生きてんだ?」
次の瞬間、先輩であるビフロンスの軍勢が俺たちに襲いかかってきた……。
おい、冗談じゃねぇ。人間どもの勘違いである「この戦いは『神と悪魔の戦い』ではなく『悪魔同士の内輪揉め』」が現実になったのかよ?
でも、何故だ?
「ふ……ふざけやがって……この後に及んで……神に寝返りやがったのか?」
一週間に及ぶ戦いの後、ムルムルは戦死し、俺も重症……だが、ビフロンスの手下はほぼ全滅し、ビフロンスも虫の息だった。
「それが……どうした? 昔の生き方に戻るだけだ……人間が文明を得る前の時代のな……」
「いいかげんに……」
「おい、人間に『悪魔』扱いされてたのに、人間に情が湧いたか? 人間だって、牛が食えない時は豚や鶏を食うだろ。それと同じだ。人間って食い物が無くなりゃ……待て……少しは冷静に……ぐえええええッ‼」
海から、「人類抹殺」を企てている神々の中でも、最過激派の「神」に仕える「天使」どもが次々と上陸してきた。
……人間の中にも、こいつらの存在を知っているヤツが居た……。
その1人である百年ほど前の三文作家は……今、海から上がってきてるヤツの事を「深き者ども」と呼んだ……。
俺たちと対になる存在である「人間に友好的な神々」は、この戦いの初期段階で全て殺された。エホバも仏陀もシヴァもビシュヌも天照大神も残らずだ。
大昔……俺たち「神々」とその「天使」は「信仰心」を持つ生物を生み出し……その「信仰心」を「食料」もしくは「エネルギー源」にする事を企てた。
そして作り出したのが人間だ……。
しかし……人間たちは……自分たちの社会を維持する為に、「本当の神々」とは関係ない「正義」や「悪」を考え出し……そして、神は正義を司り、その敵対者は悪を司ると考えるようになった。
だが、「本当の神々」には、正義も悪も無かった。いや……「本当の神々」にとっての「正義」や「悪」は人間には理解不能な代物だった、と言い換えても良いが……。
「本当の神々」の内、力が強いヤツらは人間を失敗作と見做し、力が弱いヤツらは、人間が生み出した信仰に合わせて自分たちの在り方を変え……そして、その副産物として悪魔が生まれた。
だが……人間はいつしか、科学技術とか云う魔法の一種を発達させ、自分たちに都合のいい神への信仰を忘れ去っていった……。人間が「科学技術」と呼ぶ「魔法」を、人間たちに授けたのが人間を失敗作と見做している神々だと気付かぬまま。
「く……くそ……」
人間が「自分に都合のいい神」への信仰を忘れた結果……いわば「人間の負の信仰心」をエネルギー源にする方向に「進化」した俺たち悪魔の力も衰えていった……。
かつてなら、何百匹居ようが敵ではなかった「深き者ども」は……俺をあっさり叩きのめした。
そうだ……人間が、こいつらの存在を認識し始めたのは……「科学技術」と呼ばれる「魔法」なしには人間の生活が成り立たなくなって以降だ。……つまり、それは同時に、人間が「自分に都合のいい神」への信仰を失なっていき……そして「自分に都合のいい神」とその「敵対者」である俺たちの両方の力が弱まっていった時期だ。
「ち……ちくしょう……」
最後の力を振り絞って顔を上げると……そこには……ヤツが居た。
人類殲滅を企てた神々の参謀格。
人間たちに「科学技術」と呼ばれる「魔法」を授けて、人類に自分の墓穴を掘らせた野郎……。
真っ黒い人間のようなシルエット……。
無数に有るヤツの名の中で、最も良く知られたモノは……ナイアルラ……
神父は、そう絶叫すると銃をブッ放っ……いや、待てよ、この宗派では牧師と神父と司祭のどの呼び方を使ってんだっけ?
……まぁ、いいや。それは本題じゃない。
しかし、長生きはするものだ。十代半ばぐらいのオタクが考えたような「悪魔祓い」を現実で目にする羽目になるとは……。
おっと、これも本題じゃなかった。
「おい、ここも、もうすぐ戦場になる。俺たちと神の軍勢の戦いに巻き込まれて死にたくなけりゃ、とっとと逃げろ。この辺りだと、海の近くほど、戦いが激しくなってる」
俺は、その教会に逃げ込んでいる人間たちに、そう言った。
「ふ…ふざけるなッ‼ 誰が悪魔の言う事など……それに、今起きてる戦いは……悪魔同士の戦いではないかッ‼」
えっ?……ああ、そうか……人間からすれば……俺たちも神の軍勢も……「異形のモノ」である事に代りは無いのか……。
「おい、どこ行ってたんだ?」
遠い大昔からの友であるムルムルがそう言った。
「やっと人間の生き残りを見付けたんで、ちょっと助けにな……」
「そんな事やってる場合かよ?」
「いや、キリスト教徒だったんで、この戦いのせいで死に絶えられたら後で俺たちが困る」
「そうだけどさ……優先順位ってモンが……あれ?」
俺とムルムルは、ほぼ同時に、少し離れた場所に「ちょっと上の先輩」程度の奴の姿を発見し……。
「お~い、ビフロンスの兄貴‼ 無事だったんすか~ッ?」
「い……いや待て、何か変だぞ……。何で……あいつ、この状況で手下どもがまだ生きてんだ?」
次の瞬間、先輩であるビフロンスの軍勢が俺たちに襲いかかってきた……。
おい、冗談じゃねぇ。人間どもの勘違いである「この戦いは『神と悪魔の戦い』ではなく『悪魔同士の内輪揉め』」が現実になったのかよ?
でも、何故だ?
「ふ……ふざけやがって……この後に及んで……神に寝返りやがったのか?」
一週間に及ぶ戦いの後、ムルムルは戦死し、俺も重症……だが、ビフロンスの手下はほぼ全滅し、ビフロンスも虫の息だった。
「それが……どうした? 昔の生き方に戻るだけだ……人間が文明を得る前の時代のな……」
「いいかげんに……」
「おい、人間に『悪魔』扱いされてたのに、人間に情が湧いたか? 人間だって、牛が食えない時は豚や鶏を食うだろ。それと同じだ。人間って食い物が無くなりゃ……待て……少しは冷静に……ぐえええええッ‼」
海から、「人類抹殺」を企てている神々の中でも、最過激派の「神」に仕える「天使」どもが次々と上陸してきた。
……人間の中にも、こいつらの存在を知っているヤツが居た……。
その1人である百年ほど前の三文作家は……今、海から上がってきてるヤツの事を「深き者ども」と呼んだ……。
俺たちと対になる存在である「人間に友好的な神々」は、この戦いの初期段階で全て殺された。エホバも仏陀もシヴァもビシュヌも天照大神も残らずだ。
大昔……俺たち「神々」とその「天使」は「信仰心」を持つ生物を生み出し……その「信仰心」を「食料」もしくは「エネルギー源」にする事を企てた。
そして作り出したのが人間だ……。
しかし……人間たちは……自分たちの社会を維持する為に、「本当の神々」とは関係ない「正義」や「悪」を考え出し……そして、神は正義を司り、その敵対者は悪を司ると考えるようになった。
だが、「本当の神々」には、正義も悪も無かった。いや……「本当の神々」にとっての「正義」や「悪」は人間には理解不能な代物だった、と言い換えても良いが……。
「本当の神々」の内、力が強いヤツらは人間を失敗作と見做し、力が弱いヤツらは、人間が生み出した信仰に合わせて自分たちの在り方を変え……そして、その副産物として悪魔が生まれた。
だが……人間はいつしか、科学技術とか云う魔法の一種を発達させ、自分たちに都合のいい神への信仰を忘れ去っていった……。人間が「科学技術」と呼ぶ「魔法」を、人間たちに授けたのが人間を失敗作と見做している神々だと気付かぬまま。
「く……くそ……」
人間が「自分に都合のいい神」への信仰を忘れた結果……いわば「人間の負の信仰心」をエネルギー源にする方向に「進化」した俺たち悪魔の力も衰えていった……。
かつてなら、何百匹居ようが敵ではなかった「深き者ども」は……俺をあっさり叩きのめした。
そうだ……人間が、こいつらの存在を認識し始めたのは……「科学技術」と呼ばれる「魔法」なしには人間の生活が成り立たなくなって以降だ。……つまり、それは同時に、人間が「自分に都合のいい神」への信仰を失なっていき……そして「自分に都合のいい神」とその「敵対者」である俺たちの両方の力が弱まっていった時期だ。
「ち……ちくしょう……」
最後の力を振り絞って顔を上げると……そこには……ヤツが居た。
人類殲滅を企てた神々の参謀格。
人間たちに「科学技術」と呼ばれる「魔法」を授けて、人類に自分の墓穴を掘らせた野郎……。
真っ黒い人間のようなシルエット……。
無数に有るヤツの名の中で、最も良く知られたモノは……ナイアルラ……
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