14 / 78
第一章:The Intern
スカーレット・モンク(7)
しおりを挟む
「だから……今、日本は1つじゃないんだよ……。一番広いのが、あたし達が住んでる狭い意味での『日本』。一番狭いのが主に富士山の噴火で発生した『関東難民』が暮す人工の島の『Neo Tokyo』。そして……残りがTCAだ。あたし達が居る狭い意味の『日本』が『今の日本』なら……TCAは『昔の日本』の方が性に合ってる連中が暮してる地域だ。ここに一番近い場所だと……筑豊かな?」
あたしは……そう説明した。
「では……そのTCAに住んでる子供が大人と一緒でないとここに来れない理由は……まさか、そのTCAの人間が、そのTCAの外の『日本』は危険思想が当り前の危険地帯と見做しているせいか?」
「そう云う事」
「そう云う事」
輝の問いに対して、あたしとスカート姿のガキの答が一致した。その答の背後に有る見解は正反対だろうが……。
「じゃあ……」
「すいません、あご出汁ラーメン2人前です」
その時、店員がラーメンを持って来た。
「お前らも何か頼めよ」
あたしはスカート姿のガキと、その連れの男の子に言った。
「だから、何で、久留米のラーメン屋なのに、豚骨ラーメンが無いの? 楽しみにしてのに」
「いいから何か注文しろ」
「じゃ、同じモノを2つ」
「富士の噴火で出た難民が暮してる地域は判るが……何で、TCAとか云う地域が出来た?」
輝はラーメンを食いながら質問。
「富士の噴火で旧政府が壊滅した後、旧政府の後継機関を名乗るテロ組織が2つ出来た」
「テロ組織じゃない」
「ああ、じゃあ正確に言うなら、狭い意味での『日本』の人間の内の無視出来ない数が『テロ組織』と見做しているモノだ。1つは……『本当の関東』を支配していた『正統日本政府』で、もう1つは大阪を支配していた『シン日本首都』だ。だが……2つとも十年ぐらい前に潰れた……。ただし、そのどっちかを支持してた連中だけは残った」
「つまり……日本人の中にイデオロギー的な断絶が有って……日本そのものをイデオロギーが違う2つの地域に分けるしか無かった訳か」
「そう云う事」
「じゃあ、この2人は……何をしに、ここに来た? 観光か?」
「よくぞ聞いてくれましたッ‼」
突然、スカート姿のガキのテンションが上がる。
「どうせ、ロクな目的じゃなかそうだな」
嫌な予感しかしねぇな……。
「ところで、知ってたら教えて欲しんだけど……この辺りの自称ヒーローチームの『Storm Breakers』の本部ってどこ?」
おい、あたしらに何の用だ?
「メンバーの身元も極秘だぞ。本部も極秘に決ってるだろ」
あやうく「本部が有っても」と言いそうになった。安全の為、拠点は定期的に変えている。
「そうなの?」
「警察か何かみたいに、地図に載ってるとでも思ってたのか?」
「じゃあ、どうやって倒せばいいの?」
「倒す?」
「そう、『正義の味方』を自称するテロリスト達の中でも、九州最強、日本有数と言われた奴らを……私とこのま~くんが倒すのよッ‼」
ああ、そうか。やれやれ……。残念ながら、お前らの能力が……あたしの予想通りなら……早く家に帰った方がいいぞ。
と思って……やっぱり、このガキも何か感付いたか……。
「あのさ……お前らの能力が『精神操作』なら……『こっち』では十年前から義務教育で『精神操作』への抵抗訓練やってるぞ」
一瞬……スカート姿のガキは……あたしが何を言ったか理解出来なかったようだ。
そして……。
「何で……そんな馬鹿な……嘘でしょ」
「嘘じゃない」
「でも、それは普通の『精神操作能力』に対抗するモノでしょ。『シン日本首都』のシン天皇なら……」
「それでも難しいと思うぞ」
「嘘よ……嘘に決ってる。『シン日本首都』が生み出した最高傑作であるま~くんなら……ほら、ま~くん、この辺りの人達を跪かせてみて」
「あの……あご出汁ラーメン2つ……」
店員のその声に続いて、ガチャンと云う音。
店員は2人のガキに向って跪き……ああ……ラーメンが床にブチ撒けられてる……もったいねえ……。
「見なさい、ここにおわす御方こそ……日本の真の支配者であるシン天皇……ちょっとま~くん……何やって……あれ?」
店員や客は……跪いてるのと、あっけに取られてるのが半々ぐらいで……いや、待て、何で、精神操作能力を使った男の子まで……。
「何が起きた?」
やっぱり精神操作が効いてないらしい輝が……あたしに聞く。
「呪詛返しだな……。どう見ても……でも……」
ない。居ない。
この子の「精神操作能力」は……どうやら「先天的に使える魔法」の一種らしい。なので「精神操作」が専門じゃないが「魔法使い」であるあたしからすれば、能力の正体はバレバレだった。
問題は……この男の子に起きてる事は、どう見ても剣呑いヤツに「精神操作」をやろうとして「呪詛返し」を食らった状態なのに……付近に、それが出来るほどの「魔法使い」の気配が……。
「すまん……『日本の真の支配者』なんて私の性に合わんので……他を当たってくれ」
「あたしも……」
その時、聞き覚えのある女の声が2つ。
そうだ……「跪け」と云う「精神操作」をやりながら、自分が跪く羽目になった男の子の頭が向いてる方向に有るのは……、店の入口。
「あの……何やってんすか?」
「いや……カミさんへのお土産を買いに……」
「私は……それに付き合って……」
台南工房の「ミカエル」と瀾師匠はそう答えた……。
そして……瀾師匠の車椅子の荷物入れと、「ミカエル」が持っている買い物袋には……あたしが生まれる前の子供向けアニメに出て来た恐竜のヌイグルミがいくつも入っていた。
あたしは……そう説明した。
「では……そのTCAに住んでる子供が大人と一緒でないとここに来れない理由は……まさか、そのTCAの人間が、そのTCAの外の『日本』は危険思想が当り前の危険地帯と見做しているせいか?」
「そう云う事」
「そう云う事」
輝の問いに対して、あたしとスカート姿のガキの答が一致した。その答の背後に有る見解は正反対だろうが……。
「じゃあ……」
「すいません、あご出汁ラーメン2人前です」
その時、店員がラーメンを持って来た。
「お前らも何か頼めよ」
あたしはスカート姿のガキと、その連れの男の子に言った。
「だから、何で、久留米のラーメン屋なのに、豚骨ラーメンが無いの? 楽しみにしてのに」
「いいから何か注文しろ」
「じゃ、同じモノを2つ」
「富士の噴火で出た難民が暮してる地域は判るが……何で、TCAとか云う地域が出来た?」
輝はラーメンを食いながら質問。
「富士の噴火で旧政府が壊滅した後、旧政府の後継機関を名乗るテロ組織が2つ出来た」
「テロ組織じゃない」
「ああ、じゃあ正確に言うなら、狭い意味での『日本』の人間の内の無視出来ない数が『テロ組織』と見做しているモノだ。1つは……『本当の関東』を支配していた『正統日本政府』で、もう1つは大阪を支配していた『シン日本首都』だ。だが……2つとも十年ぐらい前に潰れた……。ただし、そのどっちかを支持してた連中だけは残った」
「つまり……日本人の中にイデオロギー的な断絶が有って……日本そのものをイデオロギーが違う2つの地域に分けるしか無かった訳か」
「そう云う事」
「じゃあ、この2人は……何をしに、ここに来た? 観光か?」
「よくぞ聞いてくれましたッ‼」
突然、スカート姿のガキのテンションが上がる。
「どうせ、ロクな目的じゃなかそうだな」
嫌な予感しかしねぇな……。
「ところで、知ってたら教えて欲しんだけど……この辺りの自称ヒーローチームの『Storm Breakers』の本部ってどこ?」
おい、あたしらに何の用だ?
「メンバーの身元も極秘だぞ。本部も極秘に決ってるだろ」
あやうく「本部が有っても」と言いそうになった。安全の為、拠点は定期的に変えている。
「そうなの?」
「警察か何かみたいに、地図に載ってるとでも思ってたのか?」
「じゃあ、どうやって倒せばいいの?」
「倒す?」
「そう、『正義の味方』を自称するテロリスト達の中でも、九州最強、日本有数と言われた奴らを……私とこのま~くんが倒すのよッ‼」
ああ、そうか。やれやれ……。残念ながら、お前らの能力が……あたしの予想通りなら……早く家に帰った方がいいぞ。
と思って……やっぱり、このガキも何か感付いたか……。
「あのさ……お前らの能力が『精神操作』なら……『こっち』では十年前から義務教育で『精神操作』への抵抗訓練やってるぞ」
一瞬……スカート姿のガキは……あたしが何を言ったか理解出来なかったようだ。
そして……。
「何で……そんな馬鹿な……嘘でしょ」
「嘘じゃない」
「でも、それは普通の『精神操作能力』に対抗するモノでしょ。『シン日本首都』のシン天皇なら……」
「それでも難しいと思うぞ」
「嘘よ……嘘に決ってる。『シン日本首都』が生み出した最高傑作であるま~くんなら……ほら、ま~くん、この辺りの人達を跪かせてみて」
「あの……あご出汁ラーメン2つ……」
店員のその声に続いて、ガチャンと云う音。
店員は2人のガキに向って跪き……ああ……ラーメンが床にブチ撒けられてる……もったいねえ……。
「見なさい、ここにおわす御方こそ……日本の真の支配者であるシン天皇……ちょっとま~くん……何やって……あれ?」
店員や客は……跪いてるのと、あっけに取られてるのが半々ぐらいで……いや、待て、何で、精神操作能力を使った男の子まで……。
「何が起きた?」
やっぱり精神操作が効いてないらしい輝が……あたしに聞く。
「呪詛返しだな……。どう見ても……でも……」
ない。居ない。
この子の「精神操作能力」は……どうやら「先天的に使える魔法」の一種らしい。なので「精神操作」が専門じゃないが「魔法使い」であるあたしからすれば、能力の正体はバレバレだった。
問題は……この男の子に起きてる事は、どう見ても剣呑いヤツに「精神操作」をやろうとして「呪詛返し」を食らった状態なのに……付近に、それが出来るほどの「魔法使い」の気配が……。
「すまん……『日本の真の支配者』なんて私の性に合わんので……他を当たってくれ」
「あたしも……」
その時、聞き覚えのある女の声が2つ。
そうだ……「跪け」と云う「精神操作」をやりながら、自分が跪く羽目になった男の子の頭が向いてる方向に有るのは……、店の入口。
「あの……何やってんすか?」
「いや……カミさんへのお土産を買いに……」
「私は……それに付き合って……」
台南工房の「ミカエル」と瀾師匠はそう答えた……。
そして……瀾師匠の車椅子の荷物入れと、「ミカエル」が持っている買い物袋には……あたしが生まれる前の子供向けアニメに出て来た恐竜のヌイグルミがいくつも入っていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。
【総集編】未来予測短編集
Grisly
SF
⭐︎登録お願いします。未来はこうなる!
当たったら恐ろしい、未来予測達。
SF短編小説。ショートショート集。
これだけ出せば
1つは当たるかも知れません笑
非武装連帯!ストロベリー・アーマメンツ!!
林檎黙示録
SF
――いつか誰かが罵って言った。連合の防衛白書を丸かじりする非武装保守派の甘い考えを『ストロベリー・アーマメント』と――
星の名とも地域の名とも判然としないスカラボウルと呼ばれる土地では、クラック虫という破裂する虫が辺りをおおって煙を吐き出す虫霧現象により、視界もままならなかった。しかしこのクラック虫と呼ばれる虫がエネルギーとして有効であることがわかると、それを利用した<バグモーティヴ>と名付けられる発動機が開発され、人々の生活全般を支える原動力となっていく。そして主にそれは乗用人型二足歩行メカ<クラックウォーカー>として多く生産されて、この土地のテラフォーミング事業のための開拓推進のシンボルとなっていった。
主人公ウメコはクラックウォーカーを繰って、この土地のエネルギー補給のための虫捕りを労務とする<捕虫労>という身分だ。捕虫労組合に所属する捕虫班<レモンドロップスiii>の班員として、ノルマに明け暮れる毎日だった。
Night Sky
九十九光
SF
20XX年、世界人口の96%が超能力ユニゾンを持っている世界。この物語は、一人の少年が、笑顔、幸せを追求する物語。すべてのボカロPに感謝。モバスペBOOKとの二重投稿。
カ・ル・マ! ~天王寺の変~
后 陸
SF
新たに見つかった電波帯を使い、これまで不確かな存在だった霊体を視覚化しコンタクトに成功。
この電波帯をEG帯と呼び、霊体を自在に操る者たちをEG使いと呼んだ。
四ヵ月前に大阪で起こった巨大結界事件後、環境が激変した結界内で争うEG使いたち。
その争いに巻き込まれる主人公、安倍まゆらの話し。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる