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第一章:The Intern

スカーレット・モンク(7)

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「だから……今、日本は1つじゃないんだよ……。一番広いのが、あたし達が住んでる狭い意味での『日本』。一番狭いのが主に富士山の噴火で発生した『関東難民』が暮す人工の島の『Neo Tokyo』。そして……残りがTCAだ。あたし達が居る狭い意味の『日本』が『今の日本』なら……TCAは『昔の日本』の方がしょうに合ってる連中が暮してる地域だ。ここに一番近い場所だと……筑豊かな?」
 あたしは……そう説明した。
「では……そのTCAに住んでる子供が大人と一緒でないとここに来れない理由は……まさか、そのTCAの人間が、そのTCAの外の『日本』は危険思想が当り前の危険地帯と見做しているせいか?」
「そう云う事」
「そう云う事」
 てるの問いに対して、あたしとスカート姿のガキの答が一致した。その答の背後に有る見解は正反対だろうが……。
「じゃあ……」
「すいません、あご出汁ラーメン2人前です」
 その時、店員がラーメンを持って来た。
「お前らも何か頼めよ」
 あたしはスカート姿のガキと、その連れの男の子に言った。
「だから、何で、久留米のラーメン屋なのに、豚骨ラーメンが無いの? 楽しみにしてのに」
「いいから何か注文しろ」
「じゃ、同じモノを2つ」
「富士の噴火で出た難民が暮してる地域は判るが……何で、TCAとか云う地域が出来た?」
 てるはラーメンを食いながら質問。
「富士の噴火で旧政府が壊滅した後、旧政府の後継機関を名乗るテロ組織が2つ出来た」
「テロ組織じゃない」
「ああ、じゃあ正確に言うなら、狭い意味での『日本』の人間の内の無視出来ない数が『テロ組織』と見做しているモノだ。1つは……『本当の関東』を支配していた『正統日本政府』で、もう1つは大阪を支配していた『シン日本首都』だ。だが……2つとも十年ぐらい前に潰れた……。ただし、そのどっちかを支持してた連中だけは残った」
「つまり……日本人の中にイデオロギー的な断絶が有って……日本そのものをイデオロギーが違う2つの地域に分けるしか無かった訳か」
「そう云う事」
「じゃあ、この2人は……何をしに、ここに来た? 観光か?」
「よくぞ聞いてくれましたッ‼」
 突然、スカート姿のガキのテンションが上がる。
「どうせ、ロクな目的じゃなかそうだな」
 嫌な予感しかしねぇな……。
「ところで、知ってたら教えて欲しんだけど……この辺りの自称ヒーローチームの『Storm Breakers』の本部ってどこ?」
 おい、あたしらに何の用だ?
「メンバーの身元も極秘だぞ。本部も極秘に決ってるだろ」
 あやうく「本部が有っても」と言いそうになった。安全の為、拠点は定期的に変えている。
「そうなの?」
「警察か何かみたいに、地図に載ってるとでも思ってたのか?」
「じゃあ、どうやって倒せばいいの?」
「倒す?」
「そう、『正義の味方』を自称するテロリスト達の中でも、九州最強、日本有数と言われた奴らを……私とこのま~くんが倒すのよッ‼」
 ああ、そうか。やれやれ……。残念ながら、お前らの能力が……あたしの予想通りなら……早く家に帰った方がいいぞ。
 と思って……やっぱり、このガキも何か感付いたか……。
「あのさ……お前らの能力が『精神操作』なら……『こっち』では十年前から義務教育で『精神操作』への抵抗訓練やってるぞ」
 一瞬……スカート姿のガキは……あたしが何を言ったか理解出来なかったようだ。
 そして……。
「何で……そんな馬鹿な……嘘でしょ」
「嘘じゃない」
「でも、それは普通の『精神操作能力』に対抗するモノでしょ。『シン日本首都』のシン天皇なら……」
「それでも難しいと思うぞ」
「嘘よ……嘘に決ってる。『シン日本首都』が生み出した最高傑作であるま~くんなら……ほら、ま~くん、この辺りの人達をひざまづかせてみて」
「あの……あご出汁ラーメン2つ……」
 店員のその声に続いて、ガチャンと云う音。
 店員は2人のガキに向ってひざまづき……ああ……ラーメンが床にブチ撒けられてる……もったいねえ……。
「見なさい、ここにおわす御方こそ……日本の真の支配者であるシン天皇……ちょっとま~くん……何やって……あれ?」
 店員や客は……ひざまづいてるのと、あっけに取られてるのが半々ぐらいで……いや、待て、何で、精神操作能力を使った男の子まで……。
「何が起きた?」
 やっぱり精神操作が効いてないらしいてるが……あたしに聞く。
「呪詛返しだな……。どう見ても……でも……」
 ない。居ない。
 この子の「精神操作能力」は……どうやら「先天的に使える魔法」の一種らしい。なので「精神操作」が専門じゃないが「魔法使い」であるあたしからすれば、能力の正体はバレバレだった。
 問題は……この男の子に起きてる事は、どう見ても剣呑ヤバいヤツに「精神操作」をやろうとして「呪詛返し」を食らった状態なのに……付近に、それが出来るほどの「魔法使い」の気配が……。
「すまん……『日本の真の支配者』なんて私のしょうに合わんので……他を当たってくれ」
「あたしも……」
 その時、聞き覚えのある女の声が2つ。
 そうだ……「ひざまづけ」と云う「精神操作」をやりながら、自分がひざまづく羽目になった男の子の頭が向いてる方向に有るのは……、店の入口。
「あの……何やってんすか?」
「いや……カミさんへのお土産を買いに……」
「私は……それに付き合って……」
 台南工房の「ミカエル」と瀾師匠はそう答えた……。
 そして……瀾師匠の車椅子の荷物入れと、「ミカエル」が持っている買い物袋には……あたしが生まれる前の子供向けアニメに出て来た恐竜のヌイグルミがいくつも入っていた。
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