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第一章:デスコマンダー・神保めぐみ

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 強い「想い」を持つ者が死ぬと、「怨霊」が生まれる。そして、もし「怨霊」が人を殺すと、その中から、また「怨霊」が生まれる。
 そんな現象が、いつの頃からか多発するようになっていた。
 そして、人間の死が、あまりに身近なであると同時に、あまりに忌しいものである時代が到来した。
 たった1人の人間が自然死する事さえも、数十・数百の更なる死を呼びかねない時代。
 昨日まで、あるいは一瞬前まで、家族や友人や恋人だった者が「死」によって、自分を命を奪う怪物に変りかねない時代。
 そして、自分も「死」によって、大事な誰かを惨たらしく殺す化物に変貌する可能性に怯えねばならぬ時代。
 もちろん、大規模自然災害発生時には、人口数十万の都市が丸々1つ「死者の町ネクロポリス」と化す事さえ珍しくない。
 その現象への対策として生まれたのが「霊的公安機構」および、その実働部隊である「レンジャー隊」だ。
『第3レンジャー隊、現場であるK市S地区のH電機K市工場に到着しました』
 死亡事故により「怨霊」が発生したと見られる工場に派遣された千葉県K市支部のレンジャー隊の隊長レッドは、支部にそう連絡した。
 霊的公安機構の支部は、各都道府県庁所在地と、一定以上の人口の都市に設置されている。政令指定都市には複数の支部が有る事も多い。
『了解した。ただし、怨霊の撃破よりも従業員の避難を優先させろ。また、工場の機器の破損は可能な限り避けろ』
『待って下さい。貴官はどなたですか?』
 応答の声は隊長レッドが聞き慣れぬものだった。
『霊的公安機構総本部・作戦統括部第3課の古賀孝明課長だ。今回の件については我々が指揮を取る』
『何故、「九段」の方が?』
 霊的公安機構の全国本部は、東京都千代田区の靖国神社の近くに有り、所在地から「九段」とも呼ばれていた。
『今回の事象が発生した工場は、レンジャー隊の装備の開発および製造を行なっている。一歩間違えば、全国のレンジャー隊の戦力低下を招く。事の重大性を鑑み、総本部が直接、指揮を取る事になった』
『了解しました。しかし、避難誘導が優先であれば、一般警察などの協力を仰ぐべきと愚考します』
『残念ながら、一般警察や自衛隊では怨霊に対抗出来ない。消防などの救急隊では猶の事だ。レンジャー隊で対処するしか無い』
『しかし、レンジャー隊の任務は、あくまで怨霊撃破です。避難誘導などの訓練は受けていません』
『君達の支部と隣のM市に配備されている全レンジャー隊を出動させた。それで対応してくれたまえ』
 冗談では無い。それが隊長レッドの感想だった。
 レンジャー隊の「人間」は隊長レッドと後方支援要員のみ。戦闘要員の大半は……。
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