鬼類災害特務隊──って、所でそもそも「鬼」って何だよ?──

蓮實長治

文字の大きさ
上 下
8 / 10
第一章:おい、「ここ」に元々居た筈の「地元」の「鬼」どもはどこへ消えた?

(7)

しおりを挟む
「上から、何か言われますよ……絶対……」
 鬼類災害特務隊の顧問と地元隊員達は、立入禁止区域に入った。
「でも……たった1つだけ、全てを説明出来る仮説を思い付いた……。あまりに馬鹿馬鹿しい仮説だけど……」
 矢野は地元部隊の隊長にそう言った。
「じゃあ、あのコンビニに入って、置いてある新聞や雑誌を確保。もし、私の予想通りなら……あそこに有る新聞や雑誌には、我々から見て、何か変な点が有る筈よ」
 そのコンビニはドローンが撮影した場所の1つだった。この地域が「立入禁止区域」になった時には、無くなっていた筈のチェーンの店。
「助かった……。何とか残ってたか……」
 矢野は店内に残っていた。新聞や雑誌を確保する。
「見て……」
「何なんですか? この新聞の一面の『日本肺炎』って……?」
「あと……元号が変ですよ。『麗和』?」
 その新聞の一面では、数年前に流行した感染症が「日本で発生したものだった」と云う見解が世界的に広まりつつある事が報じられていた。
 しかも、その感染症は、中国の発だと云うのが定説の筈なのに、その新聞記事では「従来は中国ので発生したとされていた」と書かれていた。
「あと、このニュース、神戸にスパコンの施設が有るみたいな事が書いてあるけど……そんな施設有ったっけ?」
「日本のスパコンって言ったら……京大の『清水きよみず』と海洋研の『地球シミュレータv4』が3位以下に大差を付けたブッチギリの1位と2位じゃなかったですか? 神戸に有るとしても『そこそこのスパコン』でしか……」
「それ以前に……『麗和』って、今の元号の候補の1つじゃなかったですか?……いや、読み方は同じだけど字が違ったかな?」
「やれやれ……予想は当ってたけど……対策は思い付かない……」
「予想? どんな予想なんですか?」
「鬼の出現は……日本で……ひょっとしたら世界中で起きつつ有る現象のほんの一部……。私達が今までやってきた事は、喩えるなら、『風邪に罹ってたのに、熱が出ると云う症状……それも数有る症状のたった1つにしか目を向けてなかった』みたいなモノかもね」
「えっ?」
「この世界の一部が、別の世界に置き換わりつつ有る。鬼は……単に、そのせいで、元々居た世界から、この世界に連れて来られただけかも知れない」
「ええええ?」
「え……っと……つまり……」
「井上さんの故郷は……もう、この世界には無い。ここに有り……そして私達が居るのは……『井上さんの故郷の平行世界バージョン』よ。そして……井上さんと同じDNAを持つ死体も……『平行世界における井上さん』よ……」
「い……いや……確かに他に説明可能な仮説は思い付きませんが……説明出来りゃ良いってもんじゃ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『霧原村』~少女達の遊戯が幽から土地に纏わる怪異を起こす~転校生渉の怪異事変~

潮ノ海月
ホラー
とある年の五月の中旬、都会から来た転校生、神代渉が霧野川高校の教室に現れる。彼の洗練された姿に女子たちは興味を示し、一部の男子は不満を抱く。その中、主人公の森月和也は、渉の涼やかな笑顔の裏に冷たさを感じ、彼に違和感を感じた。 渉の編入から一週間が過ぎ、男子達も次第に渉を受け入れ、和也の友人の野風雄二も渉の魅力に引き込まれ、彼の友人となった。転校生騒ぎが終息しかけたある日の学校の昼休み、女子二人が『こっくりさん』で遊び始め、突然の悲鳴が教室に響く。そしてその翌日、同じクラスの女子、清水莉子が体調不良で休み、『こっくりさん』の祟りという噂が学校中に広まっていく。その次の日の放課後、莉子を心配したと斉藤凪紗は、彼女の友人である和也、雄二、凪沙、葵、渉の五人と共に莉子の家を訪れる。すると莉子の家は重苦しい雰囲気に包まれ、莉子の母親は憔悴した姿に変わっていた。その異変に気づいた渉と和也が莉子の部屋へ入ると、彼女は霊障によって変わり果てた姿に。しかし、彼女の霊障は始まりでしかなく、その後に起こる霊障、怪異。そして元霧原村に古くから伝わる因習、忌み地にまつわる闇、恐怖の怪異へと続く序章に過ぎなかった。 《主人公は和也(語り部)となります。ライトノベルズ風のホラー物語です》

奇怪未解世界

五月 病
ホラー
突如大勢の人間が消えるという事件が起きた。 学内にいた人間の中で唯一生存した女子高生そよぎは自身に降りかかる怪異を退け、消えた友人たちを取り戻すために「怪人アンサー」に助けを求める。 奇妙な契約関係になった怪人アンサーとそよぎは学校の人間が消えた理由を見つけ出すため夕刻から深夜にかけて調査を進めていく。 その過程で様々な怪異に遭遇していくことになっていくが……。

二人称・ホラー小説 『あなた』 短編集

シルヴァ・レイシオン
ホラー
※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな視点のホラーを書きます。  様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。  小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意下さい。

ペルシャ絨毯の模様

宮田歩
ホラー
横沢真希は、宝石商としての成功を収め、森に囲まれた美しい洋館に住んでいた。しかし、その森からやってくる蟲達を酷く嫌っていた。そんな横沢がアンティークショップで美しい模様のペルシャ絨毯を購入するが——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

禊(みそぎ)

宮田歩
ホラー
車にはねられて自分の葬式を見てしまった、浮遊霊となった私。神社に願掛けに行くが——。

団欒の家

牧神堂
ホラー
自分の家を持つことが長年の夢だった『私』は格安の瑕疵物件を購入した。 当然のようにそこは出る家だった……。 長めのショートショート、もしくは短い短編くらいの長さです。

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

処理中です...