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第二章:The Wailing
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「課長ッ‼ 警察官が警察官を拉致るって、気は確かっすかッ⁉」
俺が目を覚ましたのは……ワンボックスカーの中。
多分、ネット上で「誘拐犯御用達」扱いされてる車種だろう。
車の中には、さっきの同業者と……「本当の職場」の上司である斎藤課長。
「悪い。もう、誰が信用出来るか判んね~状況なんだよ」
「だから……どうなってんすか?」
「何から……話したらいいか……ええっとなぁ……まず、お前が連絡用に使ってるWEBサイトだけど、あれ、複数の警察機構が共同で運営してて、表沙汰に出来ない色んな『業務』の連絡用に使われてた、って知ってたか?」
「へっ?」
「で、お前との連絡手段は……あのWEBサイトしか無かったんだが……2ヶ月半ほど前に、とんでもない事が判った。それから、お前を探し出すまで、結構な手間だったぞ。何せ、『神政会』にバレるかも知れねえ捜査手段や情報経路は一切使えなかったんでな」
「何がですか? 一体全体、何がどうなってんですか?」
「ええっとだなあ……何つ~か……まぁ、俺達にも事の全体像が全く見えてねえんで、起きた事を順番に話すぞ……。そうだな……まず、ある警察機構のエラいさんの業務用のPCがブッ壊れて新調した。そして、何故か不思議な事に、新しいPCから、あのWEBサイトにログイン出来たんだ」
「いや、何が不思議なんっすか? IDとパスワードを間違えなけりゃ……」
「前のPCでは、IDやパスワードをWEBブラウザに覚えさせる、ってマズい真似をやってたらしい。後で考えてみりゃ、そんな真似が出来る時点で何かおかしかったが……新しいPCでIDとパスワードを入力し忘れてログインボタンを押したらログイン出来たらしい」
「はぁッ⁉」
「しかも、そのエラいさんでも見れない筈の……全く違う警察機構がやってる極秘捜査の情報まで見る事が出来た」
「ど……どうなってんすか?」
「そして……慌ててIT部門が調べてみるとだな……。ええっと……あのWEBサーバのデータ、定期的にバックアップを取ってたが……ある時期以降、バックアップしたデータの内容が全く変化してなかった」
「何すか、それ? いくら『魔法』や『超能力』が当然の御時世とは言え、IT関係の心霊現象なんて聞いた事も無いっすよ」
「いや……もっと単純な手だ。DNSハイジャッキングって聞いた事有るか?」
続けて、そう言ったのは、課長が連れて来たらしい同業者。
「ああ……聞いた事は有る。仕組みは良く判んね~けど……例えば銀行とか役所のサイトにアクセスしてたつもりが、全然、別のサイトに誘導させられてた、ってアレだろ」
「それをやられた。あんたがアクセスしてたWEBサイトは……何者かが本物そっくりの外見に作った偽物だ。あんただけじゃない、あのWEBサイトを連絡に使ってた他の奴も、実は、偽のサイトにアクセスしてた。ログイン画面は……完全なダミーでIDやパスワードを入力しなくても『ログイン』ボタンさえ押せば、次の画面に移動する。むしろ、IDとパスワードを入力せずにログインした場合が特権ユーザー扱いになるらしい」
「そ……そんな……馬鹿な……」
「マヌケな話だが……あのサイトでの連絡内容は……全く信用出来ねえ。誰に改竄されたか知れたモノじゃないしな……」
「何で今まで気付かなかったんですか?」
「お前みたいなのが警察官になれる御時世だぞ。どこの警察機構も質が落ちまくってるからに決ってるだろ。でだ……肝心の質問だ。他の潜入捜査官はどうなった?」
「えっと……『本命』の『別働隊』の事っすか? 全滅した、って聞きましたけど……」
「おい、何で『別働隊』の事を知ってる? あと、全滅したって誰から聞いた?」
「連絡係から……」
「だから、連絡係の広域組対の阿呆は、行方不明な上に……奴も『別働隊』の情報を知らなかった筈だ」
「いや、『別働隊』の連絡係から……」
「そいつも行方不明なんだよ。大体、その自称『別働隊の連絡係』さんと、どうやってアポを取った?」
「じゃあ……あの……金髪でツインテールのポッチャリ系のアラサー女は誰なんですか?」
「誰だ、それは? そのアラサー女とやらが、どこのどなた様か……こっちが聞きてえよッ‼」
俺が目を覚ましたのは……ワンボックスカーの中。
多分、ネット上で「誘拐犯御用達」扱いされてる車種だろう。
車の中には、さっきの同業者と……「本当の職場」の上司である斎藤課長。
「悪い。もう、誰が信用出来るか判んね~状況なんだよ」
「だから……どうなってんすか?」
「何から……話したらいいか……ええっとなぁ……まず、お前が連絡用に使ってるWEBサイトだけど、あれ、複数の警察機構が共同で運営してて、表沙汰に出来ない色んな『業務』の連絡用に使われてた、って知ってたか?」
「へっ?」
「で、お前との連絡手段は……あのWEBサイトしか無かったんだが……2ヶ月半ほど前に、とんでもない事が判った。それから、お前を探し出すまで、結構な手間だったぞ。何せ、『神政会』にバレるかも知れねえ捜査手段や情報経路は一切使えなかったんでな」
「何がですか? 一体全体、何がどうなってんですか?」
「ええっとだなあ……何つ~か……まぁ、俺達にも事の全体像が全く見えてねえんで、起きた事を順番に話すぞ……。そうだな……まず、ある警察機構のエラいさんの業務用のPCがブッ壊れて新調した。そして、何故か不思議な事に、新しいPCから、あのWEBサイトにログイン出来たんだ」
「いや、何が不思議なんっすか? IDとパスワードを間違えなけりゃ……」
「前のPCでは、IDやパスワードをWEBブラウザに覚えさせる、ってマズい真似をやってたらしい。後で考えてみりゃ、そんな真似が出来る時点で何かおかしかったが……新しいPCでIDとパスワードを入力し忘れてログインボタンを押したらログイン出来たらしい」
「はぁッ⁉」
「しかも、そのエラいさんでも見れない筈の……全く違う警察機構がやってる極秘捜査の情報まで見る事が出来た」
「ど……どうなってんすか?」
「そして……慌ててIT部門が調べてみるとだな……。ええっと……あのWEBサーバのデータ、定期的にバックアップを取ってたが……ある時期以降、バックアップしたデータの内容が全く変化してなかった」
「何すか、それ? いくら『魔法』や『超能力』が当然の御時世とは言え、IT関係の心霊現象なんて聞いた事も無いっすよ」
「いや……もっと単純な手だ。DNSハイジャッキングって聞いた事有るか?」
続けて、そう言ったのは、課長が連れて来たらしい同業者。
「ああ……聞いた事は有る。仕組みは良く判んね~けど……例えば銀行とか役所のサイトにアクセスしてたつもりが、全然、別のサイトに誘導させられてた、ってアレだろ」
「それをやられた。あんたがアクセスしてたWEBサイトは……何者かが本物そっくりの外見に作った偽物だ。あんただけじゃない、あのWEBサイトを連絡に使ってた他の奴も、実は、偽のサイトにアクセスしてた。ログイン画面は……完全なダミーでIDやパスワードを入力しなくても『ログイン』ボタンさえ押せば、次の画面に移動する。むしろ、IDとパスワードを入力せずにログインした場合が特権ユーザー扱いになるらしい」
「そ……そんな……馬鹿な……」
「マヌケな話だが……あのサイトでの連絡内容は……全く信用出来ねえ。誰に改竄されたか知れたモノじゃないしな……」
「何で今まで気付かなかったんですか?」
「お前みたいなのが警察官になれる御時世だぞ。どこの警察機構も質が落ちまくってるからに決ってるだろ。でだ……肝心の質問だ。他の潜入捜査官はどうなった?」
「えっと……『本命』の『別働隊』の事っすか? 全滅した、って聞きましたけど……」
「おい、何で『別働隊』の事を知ってる? あと、全滅したって誰から聞いた?」
「連絡係から……」
「だから、連絡係の広域組対の阿呆は、行方不明な上に……奴も『別働隊』の情報を知らなかった筈だ」
「いや、『別働隊』の連絡係から……」
「そいつも行方不明なんだよ。大体、その自称『別働隊の連絡係』さんと、どうやってアポを取った?」
「じゃあ……あの……金髪でツインテールのポッチャリ系のアラサー女は誰なんですか?」
「誰だ、それは? そのアラサー女とやらが、どこのどなた様か……こっちが聞きてえよッ‼」
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