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#(ハッシュタグ)前政権は良い事もした
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我が党が政権を取り戻して半年。
だが、何かがおかしかった。
マスコミの調査では支持率はそこそこ……とは言え、「御祝儀相場」の可能性は有るが……。
一方で……SNSでは……。
「おい、何だ、この『#前政権は良い事もした』って?」
私はウチの党の幹部の息子でもある某世界的SNS運営会社の日本法人の社長に電話をかけた。
『あ……あの……総理、それは……その……』
ああ、くそ……。
電話の向こうで、奴が、どうなってるか目に浮ぶ。
ウチの息子と同じだ。
世襲政治家のボンボンなんで「自分より立場が上の相手に怒鳴られる」という状況に慣れていない。
電話越しにもパニクってるのが丸判りだ。
「とっとと、このハッシュタグを使って、前政権を擁護してる奴のアカウントを凍結しろ。理由はデマを撒き散らしてるとか何とでも付けられるだろう」
『え……えっと……その……たしかに、デマはデマなんですが……』
「じゃあ、とっととやれ」
悔しいが、本当に前政権は良い事もしていた。
だが……「#前政権は良い事もした」で拡散されてる前政権の功績は、マトモな人間なら検索サイトで1分調べりゃ、すぐに嘘だと判る粗雑なデマだ。
俺が、前政権の支持者だったら、もっとマシな事を書くぞ。
更に半年が過ぎた。
我が政権の支持率は……高値安定ではあるが……「すごく高い」とは言えない程度だった。
まぁ、「上の下」で横這いと言った所だ。
そして、そろそろ通常国会の開催時期だ……。
国会答弁で何かミスれば、支持率が落ちる可能性は有る。
「おい、まだ『#前政権は良い事もした』とか投稿してる奴が居るぞ」
『は……はぁ……善処しますが……その……』
「『その』? 何だ?」
『えっと……総理、本当に何も聞いてないんですか?』
「だから、何をだ?」
『ですので、その……』
「判ったから、とっとと、このハッシュタグを使ってる奴のアカウントを停止しろ」
「総理ッ‼ まさか、我が党の広報用裏アカウントの凍結は総理が指示されたんですかッ‼」
国会論戦で野党にボコボコにされて、支持率が下がった頃、党の広報部長が真っ青な顔になって俺の執務室に駆け込んで来た。
「何を言ってる? 何で、俺がそんな指示を出す必要が有る?」
「ですから……『#前政権は良い事もした』のアカウントですよッ‼」
「はぁ? 何で、ウチの党の広報用アカウントで、そんなモノを拡散してた?」
「だから、前政権の本当の功績を隠す為に、偽の功績を拡散したんですよ」
「ちょ……ちょっと待て、何を言ってるんだ? 何で、我が党の広報の為に、前政権をヨイショする必要が有る?」
「ですので……喩えるなら、国民に見付けられては困る本物の花の周囲に大量の造花を植えたんですよ。そうすれば、国民は本物の花も造花だと思い込んでくれます」
へっ……?
ちょっと待て……なら……「#前政権は良い事もした」で拡散されてた「前政権の功績」が……本当の「前政権の功績」ではなく、雑なデマだったのは……まさか……?
「ウチの党の広報用裏アカが悉く凍結されたせいで、今やSNS上に残ってるのは前政権の本当の功績だけです」
だが、何かがおかしかった。
マスコミの調査では支持率はそこそこ……とは言え、「御祝儀相場」の可能性は有るが……。
一方で……SNSでは……。
「おい、何だ、この『#前政権は良い事もした』って?」
私はウチの党の幹部の息子でもある某世界的SNS運営会社の日本法人の社長に電話をかけた。
『あ……あの……総理、それは……その……』
ああ、くそ……。
電話の向こうで、奴が、どうなってるか目に浮ぶ。
ウチの息子と同じだ。
世襲政治家のボンボンなんで「自分より立場が上の相手に怒鳴られる」という状況に慣れていない。
電話越しにもパニクってるのが丸判りだ。
「とっとと、このハッシュタグを使って、前政権を擁護してる奴のアカウントを凍結しろ。理由はデマを撒き散らしてるとか何とでも付けられるだろう」
『え……えっと……その……たしかに、デマはデマなんですが……』
「じゃあ、とっととやれ」
悔しいが、本当に前政権は良い事もしていた。
だが……「#前政権は良い事もした」で拡散されてる前政権の功績は、マトモな人間なら検索サイトで1分調べりゃ、すぐに嘘だと判る粗雑なデマだ。
俺が、前政権の支持者だったら、もっとマシな事を書くぞ。
更に半年が過ぎた。
我が政権の支持率は……高値安定ではあるが……「すごく高い」とは言えない程度だった。
まぁ、「上の下」で横這いと言った所だ。
そして、そろそろ通常国会の開催時期だ……。
国会答弁で何かミスれば、支持率が落ちる可能性は有る。
「おい、まだ『#前政権は良い事もした』とか投稿してる奴が居るぞ」
『は……はぁ……善処しますが……その……』
「『その』? 何だ?」
『えっと……総理、本当に何も聞いてないんですか?』
「だから、何をだ?」
『ですので、その……』
「判ったから、とっとと、このハッシュタグを使ってる奴のアカウントを停止しろ」
「総理ッ‼ まさか、我が党の広報用裏アカウントの凍結は総理が指示されたんですかッ‼」
国会論戦で野党にボコボコにされて、支持率が下がった頃、党の広報部長が真っ青な顔になって俺の執務室に駆け込んで来た。
「何を言ってる? 何で、俺がそんな指示を出す必要が有る?」
「ですから……『#前政権は良い事もした』のアカウントですよッ‼」
「はぁ? 何で、ウチの党の広報用アカウントで、そんなモノを拡散してた?」
「だから、前政権の本当の功績を隠す為に、偽の功績を拡散したんですよ」
「ちょ……ちょっと待て、何を言ってるんだ? 何で、我が党の広報の為に、前政権をヨイショする必要が有る?」
「ですので……喩えるなら、国民に見付けられては困る本物の花の周囲に大量の造花を植えたんですよ。そうすれば、国民は本物の花も造花だと思い込んでくれます」
へっ……?
ちょっと待て……なら……「#前政権は良い事もした」で拡散されてた「前政権の功績」が……本当の「前政権の功績」ではなく、雑なデマだったのは……まさか……?
「ウチの党の広報用裏アカが悉く凍結されたせいで、今やSNS上に残ってるのは前政権の本当の功績だけです」
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