世界を護る者達/第二部:ゴロツキどもをウチの妹たちから守れ Twisted Justice −極悪刑事−

蓮實長治

文字の大きさ
上 下
7 / 31
第1章:インサイダーズ

高木瀾(たかぎ らん) (1)

しおりを挟む
 私達が赤ん坊の頃に両親が離婚したせいで、別々に育てられる事になった双子の妹(なお、二卵性双生児らしいんで「言われてみれば姉妹っぽい」程度しか似てない)の治水おさみと暮すようになってから判った事が有る。
 男尊女卑が当然だった二〇世紀の日本における自称「料理好きの男」ってのが、どんな感じだったのかを。
 と言っても……治水は少なくとも生物学上は女性だが。本人の性自認に関しては……判断保留中。
 治水は自称「料理好き」だ。そして、昔のワンパターンな漫画みたいに「自称『料理好き』だけど作った料理の味は食えたもんじゃない」なんて事は無い。
 私だって味覚に自信が有る訳じゃないが……平均すると中の下ぐらいだろう。美味いとは言えないが、昔のワンパターンな漫画みたいな事態は、まず起きない。
 問題は……「平均すると」と言わざるを得ない事だ。
 味の平均は中の下ぐらい。分散ばらつきは……そこそこ以上に大きい。
 やる気の分散ばらつきは……それ以上に大きい。
「これ……何?」
「池波正太郎って昔の小説家知ってる?$その人のエッセイに載ってた」
 フライパンで焼き目を付けた厚揚げに大根おろしと麺つゆをかけたモノと、ネギ入りの炒り卵。
 それが今日の晩飯のおかずだった。ご飯のおかずって言うより、大人の人達向けの酒のツマミのような気もするが。
 昨日は、逆に手間かけた料理……数時間かけて鶏ガラスープを取った鶏の水炊きだった。
 一昨日は鶏の唐揚げとインスタントの味噌汁。
 その前の日は、治水のやる気が完全にゼロで、近所のリンガーハットに行く事になった。
「たまには……私が作ろうか?」
「いいよ。あたし、料理するの好きだし」
 異論は有るが……それを口にするのは、もう少し信頼関係を築いてからにしよう。
「ところでさ……この炒り卵も……その池波正太郎の本に載ってたの?」
「うん……」
「池波正太郎って……東京の人だったよな?」
「それが……?」
「何で、炒り卵に入ってるネギが青ネギなんだ?」
「えっ?」
「関東の人が書いた本に出てる……『ネギ入りの炒り卵』の『ネギ』って……白ネギである確率が高い気がするんだけど……」
「あ……えっと……いいじゃない。美味しければ、どっちでも」
 今日の出来は……炒り卵の塩味が少しキツ過ぎる気がする。
「ところでさ……ゆかりちゃんと……どう云う関係だったの?」
 はぁ?
 いや……そりゃ……。
「いや……何って言うか……判るだろ?」
 あの時は……自分でも判る位、平常心を失なってた。あの状態では、嫌でも気付いてる筈だ。
「へっ?」
「『へっ?』って何が『へっ?』」
「全く判んない」
「いや……その……私をからかってるんなら……」
「何言ってんの?」
 それは、こっちのセリフだ。本気で気付いてないのか?
「ただいま~」
 その時、玄関の方で、桜さんの声がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「悪の組織」からの足抜けを手伝いますッ♥/第一部「安易なる選択−The Villain's Journey−」

蓮實長治
SF
現実と似ているが「御当地ヒーロー」「正義の味方」によって治安が維持されている世界。 その「正義の味方」が始めた新しい「商売」である「悪の組織からの足抜けと社会復帰の支援」を利用して、落ち目になった自分の組織の「お宝」を他の組織に売り渡し、輝かしい第二の人生を始めようとしたある悪の組織の幹部(ただし、幹部の中でも下の方)。 しかし、のっけから事態は予想外の方向に……。 同じ作者の別の作品と世界設定を共有しています。 「なろう」「カクヨム」「アルファポリス」「pixiv」「Novel Days」「GALLERIA」「ノベルアップ+」に同じモノを投稿しています。 (pixiv,GALLERIAは完結後の掲載になります) こちらに本作を漫画台本に書き直したものを応募しています。 https://note.com/info/n/n2e4aab325cb5 https://note.com/gazi_kun/n/nde64695e2171

【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~

こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。 人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。 それに対抗する術は、今は無い。 平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。 しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。 さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。 普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。 そして、やがて一つの真実に辿り着く。 それは大きな選択を迫られるものだった。 bio defence ※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ゾンビのプロ セイヴィングロード

石井アドリー
SF
『丘口知夏』は地獄の三日間を独りで逃げ延びていた。 その道中で百貨店の屋上に住む集団に救われたものの、安息の日々は長く続かなかった。 梯子を昇れる個体が現れたことで、ついに屋上の中へ地獄が流れ込んでいく。 信頼していた人までもがゾンビとなった。大切な屋上が崩壊していく。彼女は何もかも諦めかけていた。 「俺はゾンビのプロだ」 自らをそう名乗った謎の筋肉男『谷口貴樹』はアクション映画の如く盛大にゾンビを殲滅した。 知夏はその姿に惹かれ奮い立った。この手で人を救うたいという願いを胸に、百貨店の屋上から小さな一歩を踏み出す。 その一歩が百貨店を盛大に救い出すことになるとは、彼女はまだ考えてもいなかった。 数を増やし成長までするゾンビの群れに挑み、大都会に取り残された人々を救っていく。 ゾンビのプロとその見習いの二人を軸にしたゾンビパンデミック長編。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

処理中です...