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第一〇章:Where have all the good men gone? And where are all the gods?

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 翌朝、トラックで移動中に、クソ女の親類に、昨日の晩に沙也加ちゃんとやった話をする。
『そう言や、昔、ある学者がカルト宗教に関するシミュレーションをやった論文を見た事が有る』
「へっ?」
『今の「大阪」はカルト宗教に支配されてるようなモノだ。精神操作能力者を量産してるけど……原理はともかく、出来る事は、古典的な洗脳の強化版に過ぎない』
「ま……まぁ、言われてみれば……」
『精神操作能力について良く知らない奴らは、精神操作能力を万能の力だと思い込む事が多い。どんなトンデモない特異能力の持ち主だって、精神操作してしまえば関係ないだろ、とかな。でも、精神操作能力には、結構、制約が多い。魔法使い系は……我流とか、修行を途中でドロップアウトしたとか、マトモな流派じゃなかった場合は別として、修行の過程で副次的に精神操作能力が効きにくくなる。他の特異能力でも、メインの能力のオマケに精神操作能力への耐性が付いてくる場合が多い。精神操作で何かを自白させようとすれば……下手にその精神操作が効いたが最後、自白するのは。精神操作をされる相手の思い込みや望みに沿った精神操作は成功率が高いが、そうじゃない精神操作は成功率がガタ落ちになる。つまり、どんな奴か良く判ってない相手に精神操作をやったら、ヘボがやったのに大成功する場合も有れば、達人がやっても巧くいかない場合も有る。精神操作能力は、少しも便利な能力じゃない……むしろ、実運用上の制約が無茶苦茶多い能力だ』
「実際、俺、見た事んだよ……」
 沙也加ちゃんのお兄ちゃんが、そう言い出した。
「へっ?」
霊力量ちからも腕の段違いの2人の魔法使い系が、ほぼ同時に同じ相手達に『精神操作』をやった……。けど、格下の方がやった精神操作が、対象ターゲットの思い込みに沿ったモノだったんで、効き目は、ほぼ互角。同時にかけられた2つの精神操作が互いの効き目を相殺しちまった」
「な……なるほど……」
『で、さっきの論文だが、カルト宗教は……特に、ピラミッド型の上意下達式の組織のカルト宗教は……どこかで拡大が止まる。どの程度で止まるかは、条件によって大きく違うが、上限だけは確実に存在する。そして、拡大が止まって以降は、洗脳なんかの組織拡大の時に使われてた技術やノウハウは、組織の内部統制の為に使われるようになる』
「じゃ……えっと……?」
『多分だが、もう既に「大阪」の勢力拡大は終っている。「大阪」が抱えてる精神操作能力者達は勢力拡大よりも「大阪」内部の締め付けの方に使うのが「正解」の段階に来てる。実際、大阪の軍や警察には政治将校を兼ねた精神操作能力者が配属されてるようだ。でも、十年前の富士の噴火を機に、今の「大阪」を作った連中からすりゃ、万能だと思ってた精神操作能力者が、ここんとこ何故か急に役に立たなくなったように見えるだろう』
「つまり、アレは……『大阪』内で立場が悪くなりつつ有る精神操作能力者達が……自分達は、まだ、役に立つぞ、って証明する為に作ったモノなんですか?」
 そう訊いたのは、沙也加ちゃんの彼氏。
『まぁ……その可能性は高いな』
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