79 / 125
第九章:Burning Heart
(8)
しおりを挟む
今晩の宿は兵庫県内の地元の「正義の味方」チームの拠点。
とは言っても「正義の味方」は定期的に拠点を変えており、ここの拠点も近々引き払うようで、段ボール箱や丈夫そうな木箱に詰めてる途中の荷物が有る。
ボクは外で「工房」から頼まれたチェックを行なっていた。
目を暗視モードに切り替えても一応は弾倉の見分けは付く。
『次、通常スラッグ弾に切り替えて下さい』
無線通話での指示に従い今の弾倉を外して指定された弾倉に切り替え。
それを一〇秒に1回ぐらいのペースで何度も行ない、周囲のドローンから間違いなくやれてるかを確認。
中では、沙也加さんのお兄さんが、沙也加さんと、沙也加さんが連れて来た女の子の練習相手。……と言っても獣人化もしてないし「火事場の馬鹿力」も出してない。
『ところで、飯はどうするの?』
確認が一段落してから無線通話。
「ベジタリアン用の有ります?」
『ベジタリアンって言っても、完全にNGな食材はどれ?』
「健康上の問題で肉食ってないだけなんで、肉の量が少ないなら、単に野菜中心のでも何とか……でも、出汁なんかの味のベースが肉や魚なのは、ちょっと……」
『全く駄目なの?』
「半年以上、肉や魚をほとんど食べてないんで、体が受け付けなくなってて……」
何が「常人より優れた能力」で、何が「常人に比べてハンデになる」かは、その「能力」や「ハンデ」そのものじゃなくて、環境や状況により変る。
そして、今や、あんな事になってる日本の旧首都圏で生まれ育ったボクにとっては、世界そのものが、案外、あっさりと変ってしまうモノにしか思えない。
もし、全世界規模の核戦争なんて起きたら……「高速治癒能力と引き換えに、癌になり易く、癌になったら常人の何倍ものスピードで進行する」体質のボク達は真っ先に滅ぶ。
ボクと同じく古代天孫族を再現にした「人間兵器」でも、変身能力を持たない日の支族がベースの「強化兵士」の「第2世代」は、「多少、能力を制限してでも『放射能や発癌物質への耐性が常人以下』という欠点を無くした方が運用の幅が広がる」という理由で、高速治癒能力などの一部の能力については、先天的にリミッターがかけられている。
特定の系統の特異能力者を一掃する為なら、他の人類も滅んでかまわない、とか、たった1人の超チート級の特異能力者を殺す為なら、何百万の無関係な人間を巻き込んでも知った事か、なんて考える@#$%野郎が、どこかの国で権力を握る事が無い事を祈るばかりだ。
「ごめん、ベジタリアン向けの食事、これぐらいしか無かった」
屋内に戻ると、ここの地元の「正義の味方」のメンバーから出されたのは、ベジタリアン向けチリビーンズの缶詰と、湯葉か麩で作った台湾精進料理風の鶏肉もどき料理のレトルト・パック。あとは、豆乳ヨーグルト。
「えっと……」
まぁ、「ウォッチメン」のロールシャッハよりはマシな食事だ。
一応、お礼を言って食べる。
貸倉庫に偽装した拠点内には、ボクたち以外にも2~3チームが泊まっている。
ボクら「正義の味方」の組織(組織と呼べるなら)には中枢や司令塔が無いだけあって、日本で言う「同じ釜の飯を食う」みたいな感じじゃなくて、各自が、勝手に食事や休憩や明日以降の準備をやってる。
一方、ボク達が、これから乗り込む予定の「大阪」は……強力な精神操作能力者によるピラミッド型の統治を理想としているテロ組織により支配されていて……警察や軍関係では政治将校を兼ねた精神操作能力者が配属されてるらしい。
小中高校なんかでも、校長や学年主任は、教員免許持ちじゃなくて、精神操作能力者だそうだ。
ある意味で、ボクらと「大阪」の喧嘩は……違うシステム同士の戦いでも有る。
「にゃんこ、それ、美味しいの?」
練習を終えた沙也加さんが、ボクの向いに座って、そう言った。
「ま……まあ……」
チリビーンズ(ただしベジタリアン向け)のソースを指先に付けて舐めた沙也加さんの表情は……。
「ふ~ん……」
かなり、ビミョ~な感じみたいだった。
とは言っても「正義の味方」は定期的に拠点を変えており、ここの拠点も近々引き払うようで、段ボール箱や丈夫そうな木箱に詰めてる途中の荷物が有る。
ボクは外で「工房」から頼まれたチェックを行なっていた。
目を暗視モードに切り替えても一応は弾倉の見分けは付く。
『次、通常スラッグ弾に切り替えて下さい』
無線通話での指示に従い今の弾倉を外して指定された弾倉に切り替え。
それを一〇秒に1回ぐらいのペースで何度も行ない、周囲のドローンから間違いなくやれてるかを確認。
中では、沙也加さんのお兄さんが、沙也加さんと、沙也加さんが連れて来た女の子の練習相手。……と言っても獣人化もしてないし「火事場の馬鹿力」も出してない。
『ところで、飯はどうするの?』
確認が一段落してから無線通話。
「ベジタリアン用の有ります?」
『ベジタリアンって言っても、完全にNGな食材はどれ?』
「健康上の問題で肉食ってないだけなんで、肉の量が少ないなら、単に野菜中心のでも何とか……でも、出汁なんかの味のベースが肉や魚なのは、ちょっと……」
『全く駄目なの?』
「半年以上、肉や魚をほとんど食べてないんで、体が受け付けなくなってて……」
何が「常人より優れた能力」で、何が「常人に比べてハンデになる」かは、その「能力」や「ハンデ」そのものじゃなくて、環境や状況により変る。
そして、今や、あんな事になってる日本の旧首都圏で生まれ育ったボクにとっては、世界そのものが、案外、あっさりと変ってしまうモノにしか思えない。
もし、全世界規模の核戦争なんて起きたら……「高速治癒能力と引き換えに、癌になり易く、癌になったら常人の何倍ものスピードで進行する」体質のボク達は真っ先に滅ぶ。
ボクと同じく古代天孫族を再現にした「人間兵器」でも、変身能力を持たない日の支族がベースの「強化兵士」の「第2世代」は、「多少、能力を制限してでも『放射能や発癌物質への耐性が常人以下』という欠点を無くした方が運用の幅が広がる」という理由で、高速治癒能力などの一部の能力については、先天的にリミッターがかけられている。
特定の系統の特異能力者を一掃する為なら、他の人類も滅んでかまわない、とか、たった1人の超チート級の特異能力者を殺す為なら、何百万の無関係な人間を巻き込んでも知った事か、なんて考える@#$%野郎が、どこかの国で権力を握る事が無い事を祈るばかりだ。
「ごめん、ベジタリアン向けの食事、これぐらいしか無かった」
屋内に戻ると、ここの地元の「正義の味方」のメンバーから出されたのは、ベジタリアン向けチリビーンズの缶詰と、湯葉か麩で作った台湾精進料理風の鶏肉もどき料理のレトルト・パック。あとは、豆乳ヨーグルト。
「えっと……」
まぁ、「ウォッチメン」のロールシャッハよりはマシな食事だ。
一応、お礼を言って食べる。
貸倉庫に偽装した拠点内には、ボクたち以外にも2~3チームが泊まっている。
ボクら「正義の味方」の組織(組織と呼べるなら)には中枢や司令塔が無いだけあって、日本で言う「同じ釜の飯を食う」みたいな感じじゃなくて、各自が、勝手に食事や休憩や明日以降の準備をやってる。
一方、ボク達が、これから乗り込む予定の「大阪」は……強力な精神操作能力者によるピラミッド型の統治を理想としているテロ組織により支配されていて……警察や軍関係では政治将校を兼ねた精神操作能力者が配属されてるらしい。
小中高校なんかでも、校長や学年主任は、教員免許持ちじゃなくて、精神操作能力者だそうだ。
ある意味で、ボクらと「大阪」の喧嘩は……違うシステム同士の戦いでも有る。
「にゃんこ、それ、美味しいの?」
練習を終えた沙也加さんが、ボクの向いに座って、そう言った。
「ま……まあ……」
チリビーンズ(ただしベジタリアン向け)のソースを指先に付けて舐めた沙也加さんの表情は……。
「ふ~ん……」
かなり、ビミョ~な感じみたいだった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
エンジニア(精製士)の憂鬱
蒼衣翼
キャラ文芸
「俺の夢は人を感動させることの出来るおもちゃを作ること」そう豪語する木村隆志(きむらたかし)26才。
彼は現在中堅家電メーカーに務めるサラリーマンだ。
しかして、その血統は、人類救世のために生まれた一族である。
想いが怪異を産み出す世界で、男は使命を捨てて、夢を選んだ。……選んだはずだった。
だが、一人の女性を救ったことから彼の運命は大きく変わり始める。
愛する女性、逃れられない運命、捨てられない夢を全て抱えて苦悩しながらも前に進む、とある勇者(ヒーロー)の物語。
そろそろ寿命なはずなのに、世界がじじいを離さない
凜
ファンタジー
妻に先立たれ、酒を浴びる毎日を送り余生を楽しんでいた岡村鉄次郎70歳は、愛刀の鉄佳を月に照らした瞬間異世界に転移してしまう。
偶然ゴブリンキングから助けた皇女シルアに国を立て直すよう頼まれ、第二の人生を異世界で送ることに。
肝臓が悲鳴を上げ寿命が尽きると思っていたのに、愛刀を持てば若返り、自衛隊上がりの肉体はちょっとやそっとの魔物くらい素手でワンパン。あくまで余生を楽しむスローライフを希望するじじいの元にばばあが現れて……?
俺TUEEE改めじじいTUEEE物語が今始まる。
強いじじいと強いばばあ好きな方は是非宜しくお願いします!
称号は神を土下座させた男。
春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」
「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」
「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」
これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。
主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。
※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。
※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。
※無断転載は厳に禁じます
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。
ユウ
ファンタジー
辺境伯爵家の次男シオンは八歳の頃から伯爵令嬢のサンドラと婚約していた。
我儘で少し夢見がちのサンドラは隣国の皇太子殿下に憧れていた。
その為事あるごとに…
「ライルハルト様だったらもっと美しいのに」
「どうして貴方はライルハルト様じゃないの」
隣国の皇太子殿下と比べて罵倒した。
そんな中隣国からライルハルトが留学に来たことで関係は悪化した。
そして社交界では二人が恋仲で悲恋だと噂をされ爪はじきに合うシオンは二人を思って身を引き、騎士団を辞めて国を出ようとするが王命により病弱な第二王女殿下の婚約を望まれる。
生まれつき体が弱く他国に嫁ぐこともできないハズレ姫と呼ばれるリディア王女を献身的に支え続ける中王はシオンを婿養子に望む。
一方サンドラは皇太子殿下に近づくも既に婚約者がいる事に気づき、シオンと復縁を望むのだが…
HOT一位となりました!
皆様ありがとうございます!
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる