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第八章:Tears

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「って、ここ、何なの?」
 夕方ぐらい。
 途中で西鉄に乗り換えて、やって来たのは……小郡おごおりの住宅街。
 あたし達が北九州でエラい事になってる間、太宰府と博多で、何か「正義の味方」達が出動するような騷ぎが起きてたらしい。
「瀾おねえちゃんの家んち
「え? いや、だって、久留米……」
「気付いてたよね? 瀾おねえちゃんと治水おさみおねえちゃんが……双子の姉妹きょうだいなのに、名字が違う事」
 あっ……。
「あの2人のお父さんとお母さんは、2人が赤ん坊の頃に離婚して、瀾おねえちゃんはお父さんに育てられ、治水おさみおねえちゃんは、お母さんに育てられた。ここは、お父さんの方の家んち
「ああ、そう言えば……そんな事、聞いた覚えが……色々と複雑な事情が有るんだね……」
「もっと、複雑な事情もね……。多分、まだ、ここには残ってる。瀾おねえちゃんが小学校や中学校の頃に使ってた『道具』が……」
「何の道具?」
優那ゆなちゃんを助けに行くのに役立ちそうな道具」
「えっ?」
「これも薄々は気付いてるよね……。瀾おねえちゃんが『正義の味方』だって事に……」
「あっ……」
「けど、瀾おねえちゃんのお父さんは……行方不明になる前に、『正義の味方』仲間にもバレたらマズい事をやってたんだよ」
「えっ? 何を?……って行方不明?」
「瀾おねえちゃんのお父さんが行方不明になった経緯は、あたしも良く知らない。ともかく、瀾おねえちゃんのお父さんは、瀾おねえちゃんが小学校の頃から……自分の跡を継がせる為の基礎訓練として……現場に連れ出してた。それも、仲間に報せてない1人仕事ソロプレイでね……」
「む……無茶苦茶だよ……」
「とは言え、その無茶苦茶な父親も、流石に娘に防具を着けさせてたし、護身用の武器も持たせてた」
「って……そんな事出来るの?」
「まあね……。でも、気になる」
 沙也加ちゃんは……玄関のドアの鍵をピッキングしながら、そう答える。
「順調過ぎ……」
 ドアは開き……。
「あっ……」
 家の中の床の埃には……足跡。
 スニーカーとかじゃなくて、登山靴とか、そんな感じの……。
「ね……ねえ……戻った方が……良くない?」
「でも、気に食わない。全部、瀾おねえちゃんの手の内なら……何か1つぐらいは……瀾おねえちゃんの予想外の事をやって……」
 そんな話をしながら、あたし達が、家の中に入ると……。
 ドンッ‼ ドンッ‼ ドンッ‼
 その時、大きな音と共に……予想外の事が起きた。
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