魔導兇犬録:HOLDING OUT FOR A HERO

蓮實長治

文字の大きさ
上 下
34 / 125
第五章:Premonition

(5)

しおりを挟む
 翌日の研修は何事もなく終った……筈だった。
 けど、博多駅のホームに入ろうとした途端に携帯電話ブンコPhoneに着信音。
 それも、通常の音声通話でもMeaveメッセンジャーアプリでもない。
 ユーザ側で中継サーバを立てる事が可能なセキュア・タイプのメッセンジャーだ。通話記録などは、運営会社じゃなくてユーザ側のサーバに保存されるので、犯罪組織から民間企業、「正義の味方」に場合によっては軍事・警察関係の公的機関でも使ってる国が有るらしい。
『博多遊軍チームのガルーダと落ち合う事は可能か?』
 以下、書かれてた時刻と場所は……。
 時刻は……間に合う。
 場所は……ボクは、博多駅の駅ビル内の書店に向かう。
 洋書コーナー。
 人文書。
 そこに居たのは……。
「君だったか……『お上人さん』が寄越した応援ってのは?」
「えっ?」
 お洒落でわざと乱れ気味にしてるらしい髪。
 ピンク色のシャツに白っぽいスラックス。
 青く染められた革靴は……ビジネス・シューズじゃなくてウォーキング向き。
 そして、襟元には……留め具が鷲か鷹らしき鳥の形になってるループタイ。
「あっ……。この前……」
 たしか……らんさんの家に来てた女の人。
「君が昨日の朝、博多駅で助けた病人が消えたそうだ」
「消えたって?」
「コネ入社らしいが……勤め先が『大阪』のフロント企業。親は『大阪』を含めたテロ組織と繋りが有る大物地方議員。念の為、博多のあるチームの後方支援要員が監視をしていたが……ついさっき、病院に県警のパトカーが来ていた。パトカーに乗っていた担当らしき警察官は……行方不明捜索関係を担当している部署の人間だった」
「何が……起きてんですか?」
「判らん。しかし、博多のチームの『魔法使い』系のメンバーが、対象に『式』を取り憑かせていた」
 「式」は早い話が「使い魔」の事。実は、流派によって、陰陽道系なら「式神」や「式」、密教系なら「護法」「護法童子」、西欧系なら「使い魔ファミリア」「守護天使」と呼び方は違うが……日本で一九九〇年代に起きた「陰陽師」ブームのせいで一番メジャーな呼び方になった「式」を使う場合が多い。
「でも、それなら、魔法使い系の人が、すぐに見付けられる筈で……あと、何で、わざわざ、式を取り憑かせるような事を……」
 式を取り憑かせるなら……どんな手を使ったのかはともかく、入院先の病院に入る必要が有る。結構、危い橋を渡る事になるが……。
「まず、行方不明になったのは病人だ。私は……人間の生命力そのものを見る事が出来る。そして、君は、どうやら、体臭から相手の体調などを推測出来るそうだな」
「は……はい……」
「式を取り憑かせた理由だが……念の為、対象の勤め先を調べていたら……建物内から、微弱だが妙な魔法系の気配がしたらしい」
「えっ?」
「そして……同じ気配が、対象が持っていた鞄からも検出された」
「い……一体、何なんですか?」
「不明だが……私は『魔法使い』系じゃないが、一般的な魔法には、ほぼ完全な耐性を持ってる」
 い……いや……なら、この人が関わってる理由が判るけど……どう言う事だ?
 「生命力そのものを見る」なんて魔法系らしき能力。でも、本人は「魔法使い」系じゃないと言ってる。そして、「一般的な魔法に対するほぼ完全な耐性」……。
 待て……似たようなモノや……似たような人を……。
「あ……あの……まさか……その……あなたの能力って……?」
「そうだ。『魔法』と似て非なる『神の力』だ。能力は太陽に関するモノの中でも『生命力』と『浄化』に特化している。ただ……少しばかり弱点が有るけどな」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました

加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!

身体強化って、何気にチートじゃないですか!?

ルーグイウル
ファンタジー
 病弱で寝たきりの少年「立原隆人」はある日他界する。そんな彼の意志に残ったのは『もっと強い体が欲しい』。       そんな彼の意志と強靭な魂は世界の壁を越え異世界へとたどり着く。でも目覚めたのは真っ暗なダンジョンの奥地で…?  これは異世界で新たな肉体を得た立原隆人-リュートがパワーレベリングして得たぶっ飛んだレベルとチートっぽいスキルをひっさげアヴァロンを王道ルートまっしぐら、テンプレート通りに謳歌する物語。  初投稿作品です。つたない文章だと思いますが温かい目で見ていただけたらと思います。

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。  そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。  しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。  そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。  この死亡は神様の手違いによるものだった!?  神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。  せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!! ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

俺が異世界帰りだと会社の後輩にバレた後の話

猫野 ジム
ファンタジー
会社員(25歳・男)は異世界帰り。現代に帰って来ても魔法が使えるままだった。 バレないようにこっそり使っていたけど、後輩の女性社員にバレてしまった。なぜなら彼女も異世界から帰って来ていて、魔法が使われたことを察知できるから。 『異世界帰り』という共通点があることが分かった二人は後輩からの誘いで仕事終わりに食事をすることに。職場以外で会うのは初めてだった。果たしてどうなるのか? ※ダンジョンやバトルは無く、現代ラブコメに少しだけファンタジー要素が入った作品です ※カクヨム・小説家になろうでも公開しています

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

魔女の暇つぶし

ファンタジー
 21世紀。人間が当たり前に暮らす世界に魔女はいる。3年に一度、人間からは魔女に関する記憶・記録が全て抹消もしくは改竄され、それを逆手に取った遊びが魔女の間では暇つぶしとして流行している。  千年以上生きる魔女カイは、五百年程前に人間の少女ジャンヌを拾い、少しの間だが一緒に時を過ごした。ジャンヌの死後、カイは基本的に魔女界に引きこもることになった。引きこもっている間に知り合うことになった魔女シルヴィアに誘われ、カイは巷で流行りの学生生活を送ることとなる。  魔女も多く潜む高校に入学したカイが出会ったのは、邪気を一切纏わぬ人間の少女侑希。人間界で暮らすこと自体乗り気でなかったカイも、侑希と委員会活動や行事をこなしていく上で少なくとも少女との関わりには大切なものを覚えていく。夏の終わりには文化祭で仮装をし、人間の振りをして過ごしたカイに好意を抱く人間も現れる。そんな中、文化祭に訪れた侑希の後輩という怪しい身なりの少女が姿を現し、その後侑希の周りに視線が集まるようになる。冬が近づいてきた日、侑希が何者かの襲撃を受け、ついにカイの魔女としての非情な報復が行われた。  主犯と思われた魔女は、ジャンヌという女に依頼されたと言うが、カイの知っているジャンヌは故人であり、見た目も一致しない。真相は謎に包まれたままであるが、カイは侑希が負うかもしれないリスクを回避せずに一緒にいることを選んだ。どうせ、3年しか共有できないのだからと。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

処理中です...