魔導兇犬録:HOLDING OUT FOR A HERO

蓮實長治

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第三章:Here She Comes

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「巧く噛み合ってねえな、こりゃ」
 そう言ったのは……茶髪のボブカットの女。
「お前が教えたら、お互いの長所を潰し合うだけだな」
 続いて、そうコメントしたのは金髪の五分刈りの女。
「何かイマイチ……」
 最後に銀髪の白人の女がそう言った。
「この人達……誰?」
 あたしは、あたしとクソ女の稽古を横で眺めている3人を指差して、そう訊いた。
「知り合いだ」
 今日、クソ女の家に行ったら、稽古の前に三〇分以上、柔軟体操をやらされた。
 クソ女基準では、あたしはかなり体が固いらしく柔軟体操が終る頃には、クソ女は「やれやれ」と云う表情かおになっていた。
 それから一時間近く、素手VS素手という条件で組み手。
 何で勝てないかが全く判らないほどの絶望的な腕の差だった。
 その間に、気付いた時には見物人が3人。
「じゃ……何が噛み合ってないか実演してみるか」
 金髪短髪が、そう言って、強化プラスチック製らしい六〇㎝ぐらいの黒い棒をクソ女に投げ渡す。
「よし、じゃあ、来い」
「ああ……」
 金髪短髪の女はリュックサックの中から……え? あんなモノ、どうやってリュックの中に入れてたの?
 金髪短髪の女の手には……一八〇㎝ぐらいの白っぽい棒。
 一方、クソ女が受け取った黒い棒も同じ位の長さに変っていた。
 どうやら、クソ女の黒い棒は折り畳み式だったらしい。
 けど……金髪短髪の女の手に有る白い棒には……折り畳む為の機構しくみがパッと見では見当らない。
 そして……。
 打つ。
 払う。
 突く。
 避ける。
「打てば剣、振れば薙刀、突けば槍」
 どこかで聞いたかも忘れた……そんなセリフが頭に浮かぶ……。
 棒と棒の戦いじゃなくて……完全に、時に剣、時に槍に変る武器同士の戦いだ。
 その時……。
 あれ?
 金髪短髪の女の方が押してるけど……でも、微かな違和感……。
 そうだ……今まで、2人とも棒を真横に振る事は無かったのに……今は違う……。
 真横に何度も何度も……それも……鞭か何かみたいな、目にも止まらないスピードだ。
 クソ女は、それを、かろうじて避け……。
 えええええ?
 何やってんの?
 とんでもないスピードで棒が振られてるその中に、思いっ切り自分から突撃して……。
 へっ?
 金髪短髪の棒は……地面に突き立てられたクソ女の棒で止められ……。
 いや……棒じゃない……。
 金髪短髪が使っていたモノの正体は……単なる棒じゃなくて、中国武術の多節鞭に似た……いくつもの短い棒を綱で繋いだ武器。
「理屈では、相手の懐に飛び込むのが正解だ。あの武器は、威力もスピードも一番先が一番デカい」
 茶髪のボブカットが、そう解説。
「理屈では、そうでも……出来る人居る?」
「あそこに居るよ」
 銀髪の白人がクソ女を指差す。
 クソ女は棒高跳びの要領で、棒の上端を掴んで金髪短髪の顔に蹴り。
 金髪短髪の女は多節鞭を手から放してクソ女の蹴りを払う。
「おい、それ、あたしが、そいつをやっつけた時に使った技だぞ。二度も通じるか」
 茶髪のボブカットが、そう声をかけた。
「残念だか、その先が有る」
 クソ女は、バランスを崩さず着地し……。
 え?
 えっ?
 えええええッ⁉
「それ、有りなのッ⁉」
「有りだ」
 そう言ったのはクソ女。
「悔しいが私の負けだ」
 続いて金髪短髪。
「これが、あいつがお前の師匠に……お前が、あいつの弟子に向いてない理由だ」
「キミの戦い方は綺麗過ぎる。ランくんはキミに基本は教えられるけど……キミがランくんの戦闘スタイルを真似るには、キミが今まで身に付けたモノを一端全部捨てるしか無い」
「どんな戦い方よッ⁉ 軍隊式か何かッ⁉」
「でも、お前の師匠も、元は軍人だろ……特務憲兵隊の魔法部隊所属だけど」
 そう言ったクソ女は……
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