15 / 125
第三章:Here She Comes
(1)
しおりを挟む
「妹と2人暮しだけど、妹は家出中だ。けど、妹の部屋には入るな」
そこは高良山の近くの団地の1階の3LDKの部屋だった。
「は……はぁ……。家出中って……?」
「月1回は、喧嘩してどっちかが家出する。我が家の恒例行事だ」
そう言いながら……この女はダイニング・キッチンの椅子に座って郵便受けに入ってた郵便物を仕分していた。
2人暮しの筈なのに、宛名は3つ。
1つは「高木瀾」、1つは「眞木治水」、もう1つは「眞木源望」。最後の1つは公共料金の請求書が主だ。
「らん」って読める名前は最初のヤツ。
姉妹なのに名字が違うってのも……今の世の中じゃ居ても不思議じゃない。
「余計な御世話だと思うが……食事が足りてないなら、気が向いたらウチに来い。一緒に食べるか、何かおごるかする」
「余計な御世話よ」
「あ、そ……じゃ……まだ早いけど……晩飯は何がいい?」
「あなた……全世界のお腹すかせてる子供に、全部、食事をおごる気?」
「あのさ……たまたま道端に急病人が居たら、普通、救急車呼ぶだろう。その急病人がネルソン・マンデラみたいな偉人だろうが、アドルフ・ヒトラーみたいな屑野郎だろうが。それと同じだ」
「けどね……」
「お前、ひょっとして、四十・五十のいい大人になってもSNSに『道端で急病人を見付けたから救急車を呼んだんだ、って言うんなら、全世界の急病人に救急車を呼んでやったらど~ですか~wwww』とか意味不明な事を書き込んで誰かを論破した気になるような阿呆になりたいのか? 個人的見解だが、そんな人生は、つまらんぞ。この世の中に面白いモノが山程有っても何1つ楽しめず、素晴しいモノが山程有っても何1つ感動出来ず、見た事も聞いた事も無いモノが現われても何1つ驚けない、条件反射以外の感情が完全に死んでしまった残念な人間のまま一生を終えるのが確実だ」
「だから……あ……そうだ、なら1つ頼みが有るんだけど……」
「何だ?」
「手合わせして」
「はぁ?」
そこは高良山の近くの団地の1階の3LDKの部屋だった。
「は……はぁ……。家出中って……?」
「月1回は、喧嘩してどっちかが家出する。我が家の恒例行事だ」
そう言いながら……この女はダイニング・キッチンの椅子に座って郵便受けに入ってた郵便物を仕分していた。
2人暮しの筈なのに、宛名は3つ。
1つは「高木瀾」、1つは「眞木治水」、もう1つは「眞木源望」。最後の1つは公共料金の請求書が主だ。
「らん」って読める名前は最初のヤツ。
姉妹なのに名字が違うってのも……今の世の中じゃ居ても不思議じゃない。
「余計な御世話だと思うが……食事が足りてないなら、気が向いたらウチに来い。一緒に食べるか、何かおごるかする」
「余計な御世話よ」
「あ、そ……じゃ……まだ早いけど……晩飯は何がいい?」
「あなた……全世界のお腹すかせてる子供に、全部、食事をおごる気?」
「あのさ……たまたま道端に急病人が居たら、普通、救急車呼ぶだろう。その急病人がネルソン・マンデラみたいな偉人だろうが、アドルフ・ヒトラーみたいな屑野郎だろうが。それと同じだ」
「けどね……」
「お前、ひょっとして、四十・五十のいい大人になってもSNSに『道端で急病人を見付けたから救急車を呼んだんだ、って言うんなら、全世界の急病人に救急車を呼んでやったらど~ですか~wwww』とか意味不明な事を書き込んで誰かを論破した気になるような阿呆になりたいのか? 個人的見解だが、そんな人生は、つまらんぞ。この世の中に面白いモノが山程有っても何1つ楽しめず、素晴しいモノが山程有っても何1つ感動出来ず、見た事も聞いた事も無いモノが現われても何1つ驚けない、条件反射以外の感情が完全に死んでしまった残念な人間のまま一生を終えるのが確実だ」
「だから……あ……そうだ、なら1つ頼みが有るんだけど……」
「何だ?」
「手合わせして」
「はぁ?」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Neo Tokyo Site 01:第一部「Road to Perdition/非法正義」
蓮實長治
SF
平行世界の「東京」ではない「東京」の千代田区・秋葉原。
父親の形見である強化服「水城(みずき)」を自分の手で再生させる事を夢見る少年・石川勇気と、ある恐るべき「力」を受け継いでしまった少女・玉置レナは、人身売買組織に誘拐された勇気の弟と妹と取り戻そうとするが……。
失なわれた「正義」と「仁愛」を求める「勇気」が歩む冥府魔道の正体は……苦難の果てにささやかな誇りを得る「英雄への旅路」か、それとも栄光と破滅が表裏一体の「堕落への旅路」か?
同じ作者の「世界を護る者達/御当地ヒーロー始めました」「青き戦士と赤き稲妻」と同じ世界観の話です。
「なろう」「カクヨム」「pixiv」にも同じものを投稿しています。
こちらに本作を漫画台本に書き直したものを応募しています。
https://note.com/info/n/n2e4aab325cb5
https://note.com/gazi_kun/n/n17ae6dbd5568
万が一、受賞した挙句にマルチメディア展開になんて事になったら、主題歌は浜田省吾の「MONEY」で……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる