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第一章:Driving Me Wild

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「食べ盛りなのに、それ位でいいの? 何か奢ろうか?」
 その人は、そう言いながらシンガポール風土鍋ご飯をパクついた。
「い……いえ、大丈夫です」
 一方、あたしが食べてるのはザル蕎麦。自分で言うのも何だけど……大人っぽいモノに憧れる年頃なんで、ツユに山葵を入れてみたけど……ちょっと入れ過ぎたかも知れない。
 まぁ、山葵と言っても、富士山の噴火で山葵の産地が、結構、壊滅したみたいで、最近は蕎麦や刺身の薬味は山葵から北海道産の山ワサビや九州産の柚子胡椒に置き換わりつつあって、粉山葵や練り山葵に含まれてる「本物の山葵」の割合は、もう言い訳程度のほんの少しらしいけど……。
「で、そもそも、何の用? 元『魔法少女』同士の女子会じゃないよね。何か困った事でも有んの?」
 ショッピングモールのフードコートの向いの席で、そう言ったのは、あたしが所属してる魔法少女チームの「スペクトラム・ペンタグラム」と、久留米の「御当地魔法少女」チームの座を「フラワレット・カルテット」のリーダーの「プリムローズ」さん。
 あたしより3つか4つ齢上の高校生。最後に会った時の髪型は長めのツーサイドアップだったけど、今は髪も短か目にして運動したりする場合に向いた髪型になってる。
「あの……専門は精神操作系でしたよね?」
「それがね……あたしは霊力量パワーは、そこそこだけど……細かい作業が苦手。ところが、精神操作系の魔法ってのは、パワーよりも細かい職人芸が必要になる。あたしは……結果的に、自分に向いてないタイプの『魔法』を身に付けさせられてたの」
 日本各地に居る「魔法少女」の半分以上は……十年くらい前の富士山の噴火による旧首都圏壊滅の後に、あるテロ組織によって誘拐・教育された「魔法も使える少年兵」候補の成れの果てだ。
 だから……各地の「御当地魔法少女」の多くは、その「御当地」で生まれ育ったんじゃなくて、実は、いわゆる「関東難民」だったりする。
 そして……「大量生産」された「使い捨ての『魔法も使える少年兵』」なので、こういう「教えられた魔法が自分に合ってなかった」なんて事も良く有るらしい。
「でも、精神操作系の魔法について、御存知ですよね?」
「それも……ちょっとねえ……」
 まぁ……どうやら、あたし達「魔法少女」は「魔法」を使えるようになった経緯がアレなので、「魔法少女」以外の「魔法使い」からすると、「魔法」に関する知識が圧倒的に不足しているらしい。
 例えば、あたしが、「『魔法使い』かも知れない相手に、向こうが喧嘩を売ってきた訳でもないのに『気配を探る』系の『魔法』を迂闊に使うのは因縁を付けてるも同じ」なんて事を知ったのは……「芸能興業」としての「魔法少女」関係のイベントが事実上消え去った後だ。
「何が有ったの? ひょっとして例の噂は本当だったの?」
「例の……噂……?」
「元『魔法少女』の中でも、『それほど強くない』『こいつをブチのめしても、ネットで叩かれる心配は少ない』と見做されてるに喧嘩を売ってる馬鹿どもが居るってアレ」
「あ……噂になるほど……多発してるんですか?」
「うん……」
「で……それで何ですけど……」
「何?」
「持った人に、自分を『魔法少女』だと思い込ませる『精神操作』を行なうような『呪いのアイテム』って有り得ますか?」
「えっ……えっと……作るのが難しいのだけは判るけど……どの位難しいかは、見当も付かない」
「や……やっぱり、そうですか……」
「精神操作って、ある意味で、職人芸だから……人間の術者がやるなら、監禁して場合によってはマズい薬物を併用して……長時間、トライ&エラーを繰り返して……ちょっとミスっただけで、全部パーか最初からやり直しになるような手間がかかる上に凄い達人でも失敗する可能性が有るような『魔法』と同じ効果が持ってるだけで出るような『呪いの品』なんて……」
「やっぱ、有り得ませんか……?」
「その呪いの品に……精神操作が専門の達人級の魔法使いと同じ事が出来る魔物や悪霊が宿ってるか……何か……裏が有るか……」
「裏?」
「たとえば……たまたま、その『呪いの品』を持った人が『魔法少女になりたい』って願望を持ってたなら……その『願望』を暴走させるよなモノなら……ひょっとして……。ただ、それだとしたら……『呪い』が、どんな形で発動するかは人によって違うと思うけど」
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