36 / 44
第7章:空虚なる者達
(5)
しおりを挟む
『関係無いとは思いますが、変な動画が有りましたんで、一応、ご報告まで』
俺の担当編集者の松田からのメールには、そう書かれていた。
メール内のリンクから飛ぶと「宮部Qベエ」を名乗るスキンヘッドの……太ってる方だがデブとまでは言えない位の体格の中年男のオカルト話の動画だった。
『みなさん、SNSで気に入らない意見を見付けた時に、ネット・ミーム化してる画像を1枚、貼り付けて「はい論破」とかやってませんか?』
『で、この画像ですが、あるNPOを揶揄するのに、よく拡散されてたりするけど、別の噂も有りますよね?』
表示されたのは……おい……。
SNS上で「干し蛸」の名前で知られてた、いわゆる「ネット論客」が描いた……マンガとさえ言えないポンチ絵だった。
漫画家を名乗ってた割には、はっきり言って絵心は無い。
でも、言ってる事は正論だと思ったんで、何度か拡散してやったし、SNSでフォローもした。
ところが、自分をフォローしたのが誰かを知ると、仕事は無いか、とか、編集者に紹介してくれ、とか言い出しやがった。
困った事に、こいつの画力その他の能力・技術では……ページの穴埋めにすらならないし、俺んとこのアシスタントにも使えない。
言葉を濁してる内に……名誉毀損だか差別発言だかでアカウントを凍結され……。
ん?
あれ?
俺、今、何やろうとしてた?
いつの間に……メーラーのゴミ箱に未読のメールが入ってる?
仕事専用で、通販にも使わないし、仕事関係以外で公開してないし、そんなメアドにspamや広告が来る訳ねえし……。
そして、仕事のメールを迂闊に削除したら、編集者なんかと意思疎通が巧く行かなかった時に、言った言わないの泥仕合になりかねないので、このメアドに来るメールは、余程古いモノを除いて基本的に削除してない。
俺は何をやろうとしてたんだ?
酔い過ぎか?
まあ、いいや、後にしよう。
『この噂です』
えっ?
何だよ……これ……。
アイコンとアカウント名は隠してるけど……。
どうやら、俺がSNSにやった投稿を更に引用した投稿だ。
SNSで「公金チュ~チュ~系」と揶揄されてる自称「女性支援団体」をモデルにしたエピソードをやるぞとSNSで匂わせた時に、粘着野郎どもの誰かが、それにイチャモン付けてきた。
で、「干し蛸」のアカウントが凍結される前に、たまたま、保存してた、あいつのポンチ絵を使って反論したんだが……。
更に、それに変な反応が有った。
『「この画像を拡散しないで下さい。この画像は呪われてます」……SNSで、そう云う事を言い出した人が人が居るんですよね』
『で、ある画像処理に詳しい方からのタレコミで、この画像には、別の画像が……「電子透し」って技術で埋め込まれてるそうです』
『その電子透しのソフトが有れば、埋め込まれた画像を抽出する事は出来るそうです』
『何なら、コンピューター・プログラミングの知識が有る人なら、埋め込まれてる画像を抽出するプログラムを自作する事だって出来るそうです』
『で、抽出した画像が……これです』
そして、表示されたのは……。
一番上には……角が8つ有る星。
その下には……横5つ縦4つの線から成る格子模様。
続いて、「死ね」「苦しめ」「地獄に堕ちろ」……そんな意味だと推測出来る漢文。
一部だけモザイクがかかってるが……多分、それは誰かの名前だ。
何故、判るかと言えば……俺の漫画「本家・祟り屋」の主人公達が使う呪符に、そっくりだからだ。
ただ、一番上の角が8つの星は……俺の漫画の方では鋭く尖った角になってるのに対して、この画像の星は……正方形を2つ組合せたような……。
そして、モザイクがかかってる場所には、呪う相手の名前が入る。
『ただ、モザイクをかけた場所には、ある実在の……ある界隈では、そこそこ、有名な個人名が入ってるんですが……その人、まだ、生きててピンピンしてんですよね』
『まぁ、効力のない「呪殺ごっこ」を誰かがやってるだけかも知れませんが……誰かを呪い殺そうとか思ってる気持ち悪い人の片棒を担ぐのが嫌な人は……ネット・ミーム化してる画像をSNSに貼り付けたりするのは、やめた方がいいかも知れませんね』
おい……どうなって……あっ?
俺……何やろうとしてた?
何で、メーラーのゴミ箱の中身を確認するつもりだったのに……無意識の内に、ゴミ箱を空にしようとしてたんだ……?
俺の担当編集者の松田からのメールには、そう書かれていた。
メール内のリンクから飛ぶと「宮部Qベエ」を名乗るスキンヘッドの……太ってる方だがデブとまでは言えない位の体格の中年男のオカルト話の動画だった。
『みなさん、SNSで気に入らない意見を見付けた時に、ネット・ミーム化してる画像を1枚、貼り付けて「はい論破」とかやってませんか?』
『で、この画像ですが、あるNPOを揶揄するのに、よく拡散されてたりするけど、別の噂も有りますよね?』
表示されたのは……おい……。
SNS上で「干し蛸」の名前で知られてた、いわゆる「ネット論客」が描いた……マンガとさえ言えないポンチ絵だった。
漫画家を名乗ってた割には、はっきり言って絵心は無い。
でも、言ってる事は正論だと思ったんで、何度か拡散してやったし、SNSでフォローもした。
ところが、自分をフォローしたのが誰かを知ると、仕事は無いか、とか、編集者に紹介してくれ、とか言い出しやがった。
困った事に、こいつの画力その他の能力・技術では……ページの穴埋めにすらならないし、俺んとこのアシスタントにも使えない。
言葉を濁してる内に……名誉毀損だか差別発言だかでアカウントを凍結され……。
ん?
あれ?
俺、今、何やろうとしてた?
いつの間に……メーラーのゴミ箱に未読のメールが入ってる?
仕事専用で、通販にも使わないし、仕事関係以外で公開してないし、そんなメアドにspamや広告が来る訳ねえし……。
そして、仕事のメールを迂闊に削除したら、編集者なんかと意思疎通が巧く行かなかった時に、言った言わないの泥仕合になりかねないので、このメアドに来るメールは、余程古いモノを除いて基本的に削除してない。
俺は何をやろうとしてたんだ?
酔い過ぎか?
まあ、いいや、後にしよう。
『この噂です』
えっ?
何だよ……これ……。
アイコンとアカウント名は隠してるけど……。
どうやら、俺がSNSにやった投稿を更に引用した投稿だ。
SNSで「公金チュ~チュ~系」と揶揄されてる自称「女性支援団体」をモデルにしたエピソードをやるぞとSNSで匂わせた時に、粘着野郎どもの誰かが、それにイチャモン付けてきた。
で、「干し蛸」のアカウントが凍結される前に、たまたま、保存してた、あいつのポンチ絵を使って反論したんだが……。
更に、それに変な反応が有った。
『「この画像を拡散しないで下さい。この画像は呪われてます」……SNSで、そう云う事を言い出した人が人が居るんですよね』
『で、ある画像処理に詳しい方からのタレコミで、この画像には、別の画像が……「電子透し」って技術で埋め込まれてるそうです』
『その電子透しのソフトが有れば、埋め込まれた画像を抽出する事は出来るそうです』
『何なら、コンピューター・プログラミングの知識が有る人なら、埋め込まれてる画像を抽出するプログラムを自作する事だって出来るそうです』
『で、抽出した画像が……これです』
そして、表示されたのは……。
一番上には……角が8つ有る星。
その下には……横5つ縦4つの線から成る格子模様。
続いて、「死ね」「苦しめ」「地獄に堕ちろ」……そんな意味だと推測出来る漢文。
一部だけモザイクがかかってるが……多分、それは誰かの名前だ。
何故、判るかと言えば……俺の漫画「本家・祟り屋」の主人公達が使う呪符に、そっくりだからだ。
ただ、一番上の角が8つの星は……俺の漫画の方では鋭く尖った角になってるのに対して、この画像の星は……正方形を2つ組合せたような……。
そして、モザイクがかかってる場所には、呪う相手の名前が入る。
『ただ、モザイクをかけた場所には、ある実在の……ある界隈では、そこそこ、有名な個人名が入ってるんですが……その人、まだ、生きててピンピンしてんですよね』
『まぁ、効力のない「呪殺ごっこ」を誰かがやってるだけかも知れませんが……誰かを呪い殺そうとか思ってる気持ち悪い人の片棒を担ぐのが嫌な人は……ネット・ミーム化してる画像をSNSに貼り付けたりするのは、やめた方がいいかも知れませんね』
おい……どうなって……あっ?
俺……何やろうとしてた?
何で、メーラーのゴミ箱の中身を確認するつもりだったのに……無意識の内に、ゴミ箱を空にしようとしてたんだ……?
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
家で少女は夢を見る
ピエロ
ホラー
※この作品は、気分を害する場合がありますがご了承ください。
中学2年生14歳のあいかは、いつか歌手になるという夢を抱いていた。彼女と共に住む会社員のワタルはその夢を応援し、彼女の支えとなっていた
ある日行方不明少女のニュースが流れる。
少女の名前は渡辺あいか
中学2年生 14歳。
そのニュースを気に、二人の生活は一変する
ノック
國灯闇一
ホラー
中学生たちが泊まりの余興で行ったある都市伝説。
午前2時22分にノックを2回。
1分後、午前2時23分にノックを3回。
午前2時24分に4回。
ノックの音が聞こえたら――――恐怖の世界が開く。
4回のノックを聞いてはいけない。
(いいね🧡 + リツイート🔁)× 1分しか生きられない呪い
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ホラー
――1日生き残る為に必要な数は1,440個。アナタは呪いから逃げ切れるか?
Twitterに潜むその『呪い』に罹った人間は、(いいね🧡 + リツイート🔁)× 1分までしか生きられない。
1日生き延びるのに必要ないいね🧡の数は、実に1,440個。
呪いに罹った※※高校2年4組の生徒たちが次々と悲惨な怪死を遂げていく中、主人公の少年・物部かるたは『呪い』から逃げ切れるのか?
承認欲求 = 生存欲求。いいね🧡の為なら何だってやる。
血迷った少年少女たちが繰り広げる、哀れで滑稽な悲劇をどうぞご覧あれ。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
黒猫館の黒電話
凪司工房
ホラー
雑誌出版社に勤める黒井良樹は十年前のある失踪事件について、調べていた。
それは彼の大学時代、黒猫館と呼ばれたある建物にまつわるもので「黒猫館にある黒電話を使うと亡くなった人と話すことができる」そんな噂話が当時あった。
それを使って肝試ししようと、サークル仲間の安斉誠一郎が提案し、仲の良かった六人の男女で、夏のある夜、その館に侵入する。
しかしその内の一人が失踪してしまったのだった。
風俗探偵瑠璃の事件簿 ~呪いの肉人形~
戸影絵麻
ホラー
潰れたコンビニの中で発見された3人の幼女の死体。そこには常人の想像を絶するおぞましい細工が施されていた。姿なき猟奇殺人犯の陰に怯える私は、ふと、以前勤務していた小学校で出会った少年のことを思い出す。他人のオーラを視ることのできるその少年、榊健斗の行方を追う私は、その過程でパンクな風俗探偵、浅香瑠璃と出会い、未曽有の事件に巻き込まれていく…。
(完結に伴い、タイトルを変更しました)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる