呪詛返死

蓮實長治

文字の大きさ
上 下
11 / 44
第2章:私人逮捕系動画配信者

(5)

しおりを挟む
「ひょっとしたら、私の勘違いかも知れませんが……警察の現場検証を隠し撮りされてませんか?」
「え……おっちゃん……何、言ってんだよ?」
 心霊ものの動画を配信している竹田尚樹なおきは、自分に声をかけた初老と中年の間ぐらいの男に、そう言い返した。
 さっきやった連れとの言い争いと、この冴えない外見の男の一言のせいで、警官達が自分の方に目を向けた。
「勝手にやってろ。あたしは、この件から降りるから」
 アドバイザーのつもりで雇った自称・霊能者の春日かすが美由紀は、冷たい口調でそう言うと、事件現場に背を向けて歩き出す。
「ちょ……ちょっと待ってよ……」
 むしろ、そう言ってくれたのは、好都合だ。
 竹田は春日を追い掛けるフリをして、その場から逃げ去ろうと試みる。
 何とか巧く行った。
 路地から西武新宿駅横の大通りに出て……。
 何故か、春日は立ち止まり、自分の方を厳しい目で見ていた。
「ああ、そうだ、あんたみたいな人間の屑にとっては愚問かも知れないけどさ……」
「へっ?」
 理解出来ない。
 予想出来ない。
 春日が自分に何を言おうとしているのかが……。
「例えばさ、あんたが何かをやりさえすれば、あんたの同業者や、あんたに関わりない誰かが大量に死にまくるのを防げるかも知れない。でも、それをやらなかったら、本当に大量に死人が出ちまった。そんな事が起きたら、あんた、嫌な気分になるかい?」
「お……おい、何、言ってんだよ?」
「この件、本当マジでヤバいよ。どんだけ死人が出るか予想も出来ない」
「だから……何を言ってんだ?」
「どこの誰か知らないけど……あのコスプレ野郎が、あまりにも馬鹿でトンデモない真似をやるように仕向けた何者なにもんかが居る。意図的にやったんなら、そいつは、無茶苦茶邪悪で頭もいい。意図しないで起きた事なら……そいつは、とんだ大馬鹿だ」
「何の事だ? おい、昨日のアレは何で起きたか……見当付いてんのか?」
「呪詛返し」
「へっ?」
「あのコスプレ野郎は……多分だけど……どっかの神様そのものか、どっかの神様の強い加護を受けてる誰かに呪いをかけてしまった。それも、本人が気付かない内にね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いつもと違う日常

k33
ホラー
ある日 高校生のハイトはごく普通の日常をおくっていたが...学校に行く途中 空を眺めていた そしたら バルーンが空に飛んでいた...そして 学校につくと...窓にもバルーンが.....そして 恐怖のゲームが始まろうとしている...果たして ハイトは..この数々の恐怖のゲームを クリアできるのか!? そして 無事 ゲームクリアできるのか...そして 現実世界に戻れるのか..恐怖のデスゲーム..開幕!

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

オカルト嫌いJKと言霊使いの先輩書店員

眼鏡猫
ホラー
書店でアルバイトをする女子高生、如月弥生(きさらぎやよい)は大のオカルト嫌い。そんな彼女と同じ職場で働く大学生、琴乃葉紬玖(ことのはつぐむ)は自称霊感体質だそうで、弥生が発する言霊により悪いモノに覆われていると言う。一笑に付す弥生だったが、実は彼女には誰にも言えないトラウマを抱えていた。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

音のしない部屋〜怪談・不思議系短編集

ねぎ(ポン酢)
ホラー
短編で書いたものの中で、怪談・不思議・ホラー系のものをまとめました。基本的にはゾッとする様なホラーではなく、不思議系の話です。(たまに増えます)※怖いかなと思うものには「※」をつけてあります (『stand.fm』にて、AI朗読【自作Net小説朗読CAFE】をやっております。AI朗読を作って欲しい短編がありましたらご連絡下さい。)

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/3/11:『まぐかっぷ』の章を追加。2025/3/18の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/10:『ころがるゆび』の章を追加。2025/3/17の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/9:『かおのなるき』の章を追加。2025/3/16の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/8:『いま』の章を追加。2025/3/15の朝8時頃より公開開始予定。 2025/3/7:『しんれいしゃしん』の章を追加。2025/3/14の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/6:『よふかし』の章を追加。2025/3/13の朝4時頃より公開開始予定。 2025/3/5:『つくえのしたのて』の章を追加。2025/3/12の朝4時頃より公開開始予定。

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
ホラー
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

無能な陰陽師

もちっぱち
ホラー
警視庁の詛呪対策本部に所属する無能な陰陽師と呼ばれる土御門迅はある仕事を任せられていた。 スマホ名前登録『鬼』の上司とともに 次々と起こる事件を解決していく物語 ※とてもグロテスク表現入れております お食事中や苦手な方はご遠慮ください こちらの作品は、 実在する名前と人物とは 一切関係ありません すべてフィクションとなっております。 ※R指定※ 表紙イラスト:名無死 様

処理中です...