60 / 101
全面開戦 ― Parabellum ―
眼鏡っ子 (2)
しおりを挟む
「なぁ……こいつ……誰だ?」
「秋葉原」の表通りの雑居ビル。
あたしが「出向」中の自警団「Armored Geeks」は、「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」のいわゆる「フロント企業」の名義で、そのビルを丸ごと借り切って本部に使っていた。
そのビルの中で、倉庫代りに使われている地下室。
そこには、「入谷七福神」のメンバーが十二人と「寛永寺僧伽」のメンバーが十三人、監禁されている筈だった。
だが、二十六人目が居た。
ボウボウに延びた髪と髭。
長い期間、お風呂に入っていないらしい垢だらけの肌。
痩せ細った体。
この時期に、何故か、ボロボロの夏物の服。
腕には無数の注射の跡。
薬物依存症らしき虚ろな目。
足には、拘束に使われていたらしい頑丈そうな鎖。
「おい……『Armored Geeks』は、何やってたんだ一体?」
「いえ……知り……えっと……?」
「どうした?」
どこかで見た事が有る。……しかし……いや……まさか……そんな……。
あまりにも姿が変っていたのと、こんな所に居ると云う発想さえ浮かばなかったせいで、その男の人が誰か気付くのに時間がかかった。
何故、この人が、ここに居るの?
夏の事件で……勇気さんに「精神操作」の魔法をかけた……「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」の先輩……ただし、あの事件以降は……行方不明中の……。
「ええっと……その眼鏡の人、この男が誰かは知ってるけど……何で、ここに居るかは判んないみたい」
本土から来た女の子が、そう言った。
そ……そう……その通り……。あたしは……何も聞いていなかった。
判るのは、ただ1つ。「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」は「Armored Geeks」を完全に操っている訳では無かったらしい事だけ……。
多分……最早、主要メンバーが生き残っていないであろう「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」。数少ない生き残りであろうあたしを含めて、あたしが所属していた「自警団」は夏の事件から重大な教訓を学び損ねていたのかも知れない。
「精神操作」系の「魔法」にかかった相手は……その「魔法」をかけた者の思う通りに動いてくれるとは限らない……。
それどころか、大昔のSFか何かの「作られた通りに動いているのに、作った者からすると暴走しているようにしか見えないロボットやコンピューター・システム」のように、「精神操作」の「魔法」をかけた者が想像もしていなかった暴走をしてしまう事が有る、と云う事を……。
「秋葉原」の表通りの雑居ビル。
あたしが「出向」中の自警団「Armored Geeks」は、「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」のいわゆる「フロント企業」の名義で、そのビルを丸ごと借り切って本部に使っていた。
そのビルの中で、倉庫代りに使われている地下室。
そこには、「入谷七福神」のメンバーが十二人と「寛永寺僧伽」のメンバーが十三人、監禁されている筈だった。
だが、二十六人目が居た。
ボウボウに延びた髪と髭。
長い期間、お風呂に入っていないらしい垢だらけの肌。
痩せ細った体。
この時期に、何故か、ボロボロの夏物の服。
腕には無数の注射の跡。
薬物依存症らしき虚ろな目。
足には、拘束に使われていたらしい頑丈そうな鎖。
「おい……『Armored Geeks』は、何やってたんだ一体?」
「いえ……知り……えっと……?」
「どうした?」
どこかで見た事が有る。……しかし……いや……まさか……そんな……。
あまりにも姿が変っていたのと、こんな所に居ると云う発想さえ浮かばなかったせいで、その男の人が誰か気付くのに時間がかかった。
何故、この人が、ここに居るの?
夏の事件で……勇気さんに「精神操作」の魔法をかけた……「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」の先輩……ただし、あの事件以降は……行方不明中の……。
「ええっと……その眼鏡の人、この男が誰かは知ってるけど……何で、ここに居るかは判んないみたい」
本土から来た女の子が、そう言った。
そ……そう……その通り……。あたしは……何も聞いていなかった。
判るのは、ただ1つ。「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」は「Armored Geeks」を完全に操っている訳では無かったらしい事だけ……。
多分……最早、主要メンバーが生き残っていないであろう「薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ」。数少ない生き残りであろうあたしを含めて、あたしが所属していた「自警団」は夏の事件から重大な教訓を学び損ねていたのかも知れない。
「精神操作」系の「魔法」にかかった相手は……その「魔法」をかけた者の思う通りに動いてくれるとは限らない……。
それどころか、大昔のSFか何かの「作られた通りに動いているのに、作った者からすると暴走しているようにしか見えないロボットやコンピューター・システム」のように、「精神操作」の「魔法」をかけた者が想像もしていなかった暴走をしてしまう事が有る、と云う事を……。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
人生負け組のスローライフ
雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした!
俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!!
ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。
じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。
ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。
――――――――――――――――――――――
第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました!
皆様の応援ありがとうございます!
――――――――――――――――――――――
【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】
一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。
しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。
ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。
以前投稿した短編
【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて
の連載版です。
連載するにあたり、短編は削除しました。
世界史嫌いのchronicle(クロニクル)
八島唯
SF
聖リュケイオン女学園。珍しい「世界史科」を設置する全寮制の女子高。不本意にも入学を余儀なくされた主人公宍戸奈穂は、また不本意な役割をこの学園で担うことになる。世界史上の様々な出来事、戦場を仮想的にシミュレートして生徒同士が競う、『アリストテレス』システムを舞台に火花を散らす。しかし、単なる学校の一授業にすぎなかったこのシステムが暴走した結果......
※この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『ノベルアップ+』様にも掲載しております。
※挿絵はAI作成です。
善とか悪とか、魔法少女とか
結 励琉
ファンタジー
銀行の金庫室からの現金紛失事件や、女子高生の失踪事件が立て続きに起きていたある日、高校に入ったばかりの少女、藤ヶ谷こころはSNSで勧誘を受けアルバイト紹介会社を訪れた。
会社の担当者箕輪は、自分たちは魔法のような力(ウィース)を持っているティーツィアという組織であり、マールムと呼ぶ現金紛失事件の犯人と戦うために、こころに魔法少女となってくれないかと依頼した。
こころの決断は?
そして、「善」とは?「悪」とは?
彼女の運命はどうなる?
結励琉渾身の魔法少女ファンタジー、今開幕!
転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。
ヒットマン VS サイキッカーズ
神泉灯
SF
男が受けた依頼は、超能力の実験体となっている二人の子供を救出し、指定時間までに港に送り届けること。
しかし実戦投入段階の五人の超能力者が子供を奪還しようと追跡する。
最強のヒットマンVS五人の超能力者。
終わらない戦いの夜が始まる……
データワールド(DataWorld)
大斗ダイソン
SF
あらすじ
現代日本、高校生の神夜蒼麻は、親友の玄芳暁斗と共に日常を送っていた。しかし、ある日、不可解な現象に遭遇し、二人は突如として仮想世界(データワールド)に転送されてしまう。
その仮想世界は、かつて禁止された「人体粒子化」実験の結果として生まれた場所だった。そこでは、現実世界から転送された人々がNPC化し、記憶を失った状態で存在していた。
一方、霧咲祇那という少女は、長らくNPCとして機能していたが、謎の白髪の男によって記憶を取り戻す。彼女は自分が仮想世界にいることを再認識し、過去の出来事を思い出す。白髪の男は彼女に協力を求めるが、その真意は不明瞭なままだ。
物語は、現実世界での「人体粒子化」実験の真相、仮想世界の本質、そして登場人物たちの過去と未来が絡み合う。神夜と暁斗は新たな環境に適応しながら、この世界の謎を解き明かそうとする。一方、霧咲祇那は復讐の念に駆られながらも、白髪の男の提案に悩む。
仮想世界では200年もの時が流れ、独特の文化や秩序が形成されていた。発光する星空や、現実とは異なる物理法則など、幻想的な要素が日常に溶け込んでいる。
登場人物たちは、自分たちの存在意義や、現実世界との関係性を模索しながら、仮想世界を揺るがす大きな陰謀に巻き込まれていく。果たして彼らは真実にたどり着き、自由を手に入れることができるのか。そして、現実世界と仮想世界の境界線は、どのように変化していくのか。
この物語は、SFとファンタジーの要素を融合させながら、人間の記憶、感情、そしてアイデンティティの本質に迫る壮大な冒険譚である。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる