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プロローグ
正義特捜トゥルージャスティス
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「見せろ……その鞄の中を見せろ……」
その青年の目は、血走り……焦点が合っていなかった。
「あの……何を言ってるんですか?」
若い女性は、そう訊き返した。
「知っているだろう? この公園には毒入りの餌を撒いて野良猫を殺そうとしてる奴が出没している。お前が犯人でない証拠は無い」
「その事件は、解決した筈でしょ? ネットのニュースで見たわ」
「おや? 妙に……落ち着いてるな? 何者だ?」
「そう言う貴方は何なの?」
「俺か……? 俺は……俺は……」
男の姿は、徐々に化け猫を思わせる姿に変っていった。
「正義の味方だぁ~ッ‼」
それは「テラーノイド」と呼ばれる存在。
自らの正義以外の正義を認めようとしない人間が肉体を変貌させた怪物。
この青年は、仕事のストレスから野良猫を毒殺していた中年男を、たまたま、見付けた事が切っ掛けで、ネット上で英雄扱いされた。
だが……それが青年が「正義中毒」となる切っ掛けだった。
英雄扱いされていた期間は短かく……やがて、この青年は忘れ去られていった。
いつしか、この青年は、自分で公園に毒餌を撒くようになり……その罪を通り掛かりに人間になすりけるようになっていった。
その目的は再び「英雄」となる為。この青年は「正義の暴走」を始め、まずは心が……最後には体が文字通りの怪物と化したのだ。
だが、その怪物達と戦う者達も、また、存在していた。
「貴方は正義の味方なんかじゃない」
「黙れ……猫殺しの狂人どもが……」
ブンッ‼
化け猫は体を一回転させる。
その異様に延長た尻尾を避けたのは……女性1人だけではなかった。
夜の闇の中に2人の男が潜んでいた。
「鼻が効くのは犬だけでは無いようだな」
「黙れッ‼」
「装神‼」
「正義特捜‼」
「トゥルージャスティス‼」
3人の男女は強化装甲服を身に付けた姿に変り……。
「ちょっと待って……」
「何ですか?」
「狂人って放送禁止用語じゃなかったけ?」
「あ……でも、放送禁止用語の一覧表なんて、どこにも無いですし……一体どこまでが放送禁止用語なのか、TV局にだって知ってる人居ませんよ」
「一応、過去に『狂人』でクレームが付いた例が無いか確認しといて」
「はぁ……」
「あとさ……この台詞だと、主人公側も本当の正義か曖昧になるよね?」
「でも……何てセリフにすればいいんですか? そもそも、『絶対の正義なんて無い』『自分の正義に囚われた者は必ず暴走する』ってテーマの特撮ヒーローって無理が有りません?」
「そうかなぁ?」
「だって、『絶対の正義なんて無い』『自分はあらゆる正義に対して中立の立場だ』って考えそのものも『正義』じゃないんですか? それも、考え得る限り最も視野が狭いタイプの……」
「その話、何回やった? だからこそ、主人公達を『特定の誰かの正義』じゃなくて、みんなが納得してる『法律』の代理人って設定にした訳じゃん」
「でも……何か引っ掛かるんですよね……」
「何が?」
「正義なんて誰も信じてないような時代に……『正義は暴走する』『正義こそ危険』『絶対の正義なんて無い』ってテーマの話を作っても……それって、何も尖った所が無い安全牌狙いの安易な企画じゃないんですか?」
「今さら言っても遅いよ。もう、番組は2クール目なんだし……。君が安易って言うなら、もう、安易なままでいいよ。このシーン以降の怪人の台詞、ただのうなり声か意味のない絶叫に差し替えといて」
その青年の目は、血走り……焦点が合っていなかった。
「あの……何を言ってるんですか?」
若い女性は、そう訊き返した。
「知っているだろう? この公園には毒入りの餌を撒いて野良猫を殺そうとしてる奴が出没している。お前が犯人でない証拠は無い」
「その事件は、解決した筈でしょ? ネットのニュースで見たわ」
「おや? 妙に……落ち着いてるな? 何者だ?」
「そう言う貴方は何なの?」
「俺か……? 俺は……俺は……」
男の姿は、徐々に化け猫を思わせる姿に変っていった。
「正義の味方だぁ~ッ‼」
それは「テラーノイド」と呼ばれる存在。
自らの正義以外の正義を認めようとしない人間が肉体を変貌させた怪物。
この青年は、仕事のストレスから野良猫を毒殺していた中年男を、たまたま、見付けた事が切っ掛けで、ネット上で英雄扱いされた。
だが……それが青年が「正義中毒」となる切っ掛けだった。
英雄扱いされていた期間は短かく……やがて、この青年は忘れ去られていった。
いつしか、この青年は、自分で公園に毒餌を撒くようになり……その罪を通り掛かりに人間になすりけるようになっていった。
その目的は再び「英雄」となる為。この青年は「正義の暴走」を始め、まずは心が……最後には体が文字通りの怪物と化したのだ。
だが、その怪物達と戦う者達も、また、存在していた。
「貴方は正義の味方なんかじゃない」
「黙れ……猫殺しの狂人どもが……」
ブンッ‼
化け猫は体を一回転させる。
その異様に延長た尻尾を避けたのは……女性1人だけではなかった。
夜の闇の中に2人の男が潜んでいた。
「鼻が効くのは犬だけでは無いようだな」
「黙れッ‼」
「装神‼」
「正義特捜‼」
「トゥルージャスティス‼」
3人の男女は強化装甲服を身に付けた姿に変り……。
「ちょっと待って……」
「何ですか?」
「狂人って放送禁止用語じゃなかったけ?」
「あ……でも、放送禁止用語の一覧表なんて、どこにも無いですし……一体どこまでが放送禁止用語なのか、TV局にだって知ってる人居ませんよ」
「一応、過去に『狂人』でクレームが付いた例が無いか確認しといて」
「はぁ……」
「あとさ……この台詞だと、主人公側も本当の正義か曖昧になるよね?」
「でも……何てセリフにすればいいんですか? そもそも、『絶対の正義なんて無い』『自分の正義に囚われた者は必ず暴走する』ってテーマの特撮ヒーローって無理が有りません?」
「そうかなぁ?」
「だって、『絶対の正義なんて無い』『自分はあらゆる正義に対して中立の立場だ』って考えそのものも『正義』じゃないんですか? それも、考え得る限り最も視野が狭いタイプの……」
「その話、何回やった? だからこそ、主人公達を『特定の誰かの正義』じゃなくて、みんなが納得してる『法律』の代理人って設定にした訳じゃん」
「でも……何か引っ掛かるんですよね……」
「何が?」
「正義なんて誰も信じてないような時代に……『正義は暴走する』『正義こそ危険』『絶対の正義なんて無い』ってテーマの話を作っても……それって、何も尖った所が無い安全牌狙いの安易な企画じゃないんですか?」
「今さら言っても遅いよ。もう、番組は2クール目なんだし……。君が安易って言うなら、もう、安易なままでいいよ。このシーン以降の怪人の台詞、ただのうなり声か意味のない絶叫に差し替えといて」
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