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プロローグ
前夜祭
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居酒屋の中から出て来た2つの集団が路上で喧嘩を始めてから一〇分以上が過ぎていた。
どちらの集団も十数名。男女入り交じっているが、やや男性が多く、皆、十代後半から三十代前半ぐらいの年齢だった。
だが……その格好だけは異様だった。
片方は……全員がストリート・ファッション風のジャージ。そこまでは……まだ普通だ……。
もう片方は……髪型こそ今風だが、時代劇の侍装束風の和装。
やがて……銃声が轟いた。「侍」の1人が懐から拳銃を取り出し発砲したのだ。
だが、その拳銃で狙われたストリート・ファッション風の一団の1人は、ブレイクダンスを思わせる華麗な動きで銃弾を避け、そして中指を立てた両手を見せながら、馬鹿にしたような表情で舌を出していた。
「クソ……ふざけ……」
だが……その時、拳銃を使った「侍」の体が派手に宙を舞った。
その「侍」と戦っていた女も……新たに現われた者達を「敵」と認識したようで……目の前に居る巨漢……いや……巨女の太股に廻し蹴りを叩き込んだ。
だが……蹴りを入れた女の胴体ほどの太さの太股はビクともせず、廻し蹴りを易々と弾き返した。
「侍」の中にも、刀を抜いて斬り付ける者が居たが……法被とTシャツを切っただけで……刃は筋肉の鎧に食い込む事さえ出来なかった。
「これは……これは……『新宿』と『渋谷』の自警団……『四谷百人組』と『原宿Heads』の皆さんですか……」
「遠くから、この浅草まで、よくお越しで……」
「広島からの長旅の直後とお見受けしますが、ここまで元気が有るとは……若いってのはいいもんですな」
その2人は、一卵性双生児のように良く似ていたが……片方はポニーテールの男で、もう片方は短髪の女だった。
共に一九〇㎝近い身長に……少なく見積っても体重は一三〇㎏を超えるであろう筋肉の塊。
十一月の後半……九州とは言え北部の日本海側なので、早ければ半月以内、遅くとも一ヶ月以内に確実に初雪が降る時期……にも関わらず、上半身はTシャツにサテンの法被だけしか着ていない。
法被の背中には仁王の絵が描かれ……女の方が口を開けた阿仁王、男の方が口を閉じた吽仁王だった。
「あ……あんたら……まさか……」
「この『浅草』で他所の皆さんが『祭』をやるのも結構ですが……」
「『浅草』の『祭』は……俺達『二十八部衆』を通せやッ‼ 判ったかッ⁉」
言うまでもなく、「本当の関東」の「本当の浅草」は……十年前の富士山の噴火で事実上壊滅し……再建の目処さえ立っていない。
ここは……日本に4つ存在し、現在、5つ目と6つ目が建設中の「東京」の名を騙る人工島の1つ。「Site04」こと通称「台東区」で最大の港を有するこの島の玄関口……通称「浅草」地区だった。
「明日だったっけな、相棒?」
「ああ……多分……『上野』と『入谷』の決闘の見物に来たんだろ」
「『渋谷・新宿区』にも『本土』のヤクザが進出しようとしてるって噂なのに……呑気なもんだな」
2人の「生身の金剛力士」は散り散りになって逃げていく2つの集団を眺めながら、そう呟いていた。
どちらの集団も十数名。男女入り交じっているが、やや男性が多く、皆、十代後半から三十代前半ぐらいの年齢だった。
だが……その格好だけは異様だった。
片方は……全員がストリート・ファッション風のジャージ。そこまでは……まだ普通だ……。
もう片方は……髪型こそ今風だが、時代劇の侍装束風の和装。
やがて……銃声が轟いた。「侍」の1人が懐から拳銃を取り出し発砲したのだ。
だが、その拳銃で狙われたストリート・ファッション風の一団の1人は、ブレイクダンスを思わせる華麗な動きで銃弾を避け、そして中指を立てた両手を見せながら、馬鹿にしたような表情で舌を出していた。
「クソ……ふざけ……」
だが……その時、拳銃を使った「侍」の体が派手に宙を舞った。
その「侍」と戦っていた女も……新たに現われた者達を「敵」と認識したようで……目の前に居る巨漢……いや……巨女の太股に廻し蹴りを叩き込んだ。
だが……蹴りを入れた女の胴体ほどの太さの太股はビクともせず、廻し蹴りを易々と弾き返した。
「侍」の中にも、刀を抜いて斬り付ける者が居たが……法被とTシャツを切っただけで……刃は筋肉の鎧に食い込む事さえ出来なかった。
「これは……これは……『新宿』と『渋谷』の自警団……『四谷百人組』と『原宿Heads』の皆さんですか……」
「遠くから、この浅草まで、よくお越しで……」
「広島からの長旅の直後とお見受けしますが、ここまで元気が有るとは……若いってのはいいもんですな」
その2人は、一卵性双生児のように良く似ていたが……片方はポニーテールの男で、もう片方は短髪の女だった。
共に一九〇㎝近い身長に……少なく見積っても体重は一三〇㎏を超えるであろう筋肉の塊。
十一月の後半……九州とは言え北部の日本海側なので、早ければ半月以内、遅くとも一ヶ月以内に確実に初雪が降る時期……にも関わらず、上半身はTシャツにサテンの法被だけしか着ていない。
法被の背中には仁王の絵が描かれ……女の方が口を開けた阿仁王、男の方が口を閉じた吽仁王だった。
「あ……あんたら……まさか……」
「この『浅草』で他所の皆さんが『祭』をやるのも結構ですが……」
「『浅草』の『祭』は……俺達『二十八部衆』を通せやッ‼ 判ったかッ⁉」
言うまでもなく、「本当の関東」の「本当の浅草」は……十年前の富士山の噴火で事実上壊滅し……再建の目処さえ立っていない。
ここは……日本に4つ存在し、現在、5つ目と6つ目が建設中の「東京」の名を騙る人工島の1つ。「Site04」こと通称「台東区」で最大の港を有するこの島の玄関口……通称「浅草」地区だった。
「明日だったっけな、相棒?」
「ああ……多分……『上野』と『入谷』の決闘の見物に来たんだろ」
「『渋谷・新宿区』にも『本土』のヤクザが進出しようとしてるって噂なのに……呑気なもんだな」
2人の「生身の金剛力士」は散り散りになって逃げていく2つの集団を眺めながら、そう呟いていた。
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