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Lesson4
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期待だけが膨らんで、
恋に恋する子供みたいになって。
自分の思いばかりを伝えたくなり、
相手の感情を無視していた。
「…ということに気付きました」
「てかさあ、それ、田之倉さんに言いなよ」
田之倉さんと付き合い始めて、はや1カ月。なかなか他人行儀な感じが拭えない。キスはしたけどその先に進めなくて。逐一、桐生さんに相談している今日この頃。最近、桐生さんにもお相手が出来て忙しそうなので主に電話で連絡を取り合っている。
「言えたら、苦労しません」
「俺の方もさあ、セックスしないんなら会話とかするしかないじゃん?でも、もたないんだよね~。共通の趣味があるワケでもなし。ていうかさァ、自分が無趣味だってことにようやく気付いたわ」
「絵梨奈ちゃん、可愛いですよねえ」
「21才。女子大生だぞ、おい」
「処女ですかねえ」
「…ワケないじゃん。三嶋さんじゃあるまいし」
とうとう処女であることをオープンにした私。
それを知った桐生さんが異常に悔しがる。
「ったく、俺の女性遍歴の中でも数少ない貴重な処女を。なんで田之倉さんなんかに持ってかれちゃうのかと思ったら哀しくて眠れないよ。先に言っておくけどな、絶対に田之倉さんは下手だぞ。先に俺で初体験を済ませておくってどうだ?」
雑誌をパラパラめくりながら私は答える。
「まさか桐生さんって、田之倉さんと寝た?」
「…怒るぞ。んなワケないだろ」
「じゃあ、なんで下手って分かるの?」
「2年もしてないって言ってたじゃん。あれは鍛錬が必要なんだよ。そんなにブランクあると、指の動きもアレの使い方も鈍る」
あ、このバッグが欲しいんだった…と雑誌の端を三角に折り込む。
「桐生さん、禁欲して2カ月でしたっけ?」
「おうよ。人生で最長記録だ」
「絵梨奈ちゃんと、いつするんですか?」
「明後日の土曜。嬉しくて眠れないんだけど~」
…ん?なんかモヤモヤするぞ。
これは、仲のいい男友達を奪われた的な?
それとも、嫉妬?
まさか。
私に限って、ねえ。
「そっちは?いつ」
「田之倉さんに訊いてくださいよ。素人の私には、ハードル高い質問です」
「そろそろ、だろうなあ」
「…ですかね?」
自宅のベッドで寝そべり、肩にスマホを挟んで電話していた私は、両脚をジタバタさせる。
「未知の世界だあ。好きな人と深く繋がるのって、どんな感じかな。もっともっと相手を好きになる?なんだか怖いような、ワクワクするような、不思議な気持ち」
電話の向こうで、ククッと笑い声がする。
「ひどい。桐生さん、笑わないでよ」
彼は心底、楽しそうにこう言った。
「ほんとに三嶋さんは…可愛いなあ。汚れてないもん。俺も、やり直せるなら純粋に恋愛して、好きでしょうがない相手と初体験したい。今さら、ムリだけどさ」
「そんなことない。今までは何とも思っていない女性と寝てたけど、次こそは本当に好きな人とすれば良いんです。リスタートだよ、頑張れ桐生さん!」
「…ん。じゃあな、おやすみ三嶋さん」
「おやすみなさい」
電話を切ると田之倉さんからメッセージが届いていることに気付く。
>明後日、ウチに泊まってく?
こ、これは、もしかして。
まさかのまさか?
考えた挙句、『はい』とだけ短く返信した。
……
田之倉さんの底抜けに優しいところが好き。ゆっくり柔らかく喋る声とか、相手の立場になって考えるところも好き。一緒にいると本当に癒される…けど、さすがに今は緊張しちゃう。
「相変わらず、無駄なものがない部屋ですねえ」
「そっかな。あ、コーヒーでいい?」
ハイと返事をしてソファに座る。この人、やっぱり几帳面だなあ。見よ、このガラステーブルを!ピッカピカだよ。
「はい。熱いから気を付けて」
渡されたマグカップは田之倉さんのとお揃いで。いつの間にか買っておいてくれたらしい。
ふうふう。
コーヒーを冷ますため唇を尖らせていると、そこにそっとキスされて。そのままマグカップを奪われ、テーブルの上に置かれた。
「…ごめん。飲み終わるの、待てないかも」
照れる表情が可愛くてもう一度、唇を重ねる。
「寝室、行こうか?先にシャワー、浴びる?」
入浴を済ませホカホカ状態のままベッドで待っていると、ほどなくして田之倉さんも腰にタオルを巻いただけの姿でやって来た。意外と筋肉質だな、なんて思ったりして。それから薄暗い間接照明のまま2人とも裸になった。飲みの席で処女であることを告白したから、その心づもりでいてくれるはず。なんだかもうドキドキし過ぎて思考回路がショートしたみたいだ。
「はは、大丈夫。取って食いやしないし。恥ずかしいことは何も無いよ。おいで」
…お、おいでと言われても。
どこへ?どのように??
立膝をついて腰のタオルを外すと、彼は見慣れぬソレを指差して言う。
「今からコレを入れるからね。まずは有香ちゃんのココを刺激して、いわゆる濡れた状態にする。たぶん1回目は痛いはずだから、無理だと思ったらそう申告して」
大学時代に教育実習をしたことがあるという田之倉さんは、まるで教師みたいな口調で説明してくれる。お陰で羞恥心は和らいだが、恐怖心は消えてくれそうにない。
「すごく痛い?」
「うん、たぶん。でもゴメン、どんな風に痛いかは分からないんだ」
なぜか謝られ、そして不意打ちで胸から攻められた。
う…あ、やだぁ、んっ、
ちょっと気持ちいいかも…。
へ?!そんなところも?
ああっ、えっ?
こうして初めての夜は更けていく……。
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