みどりさんの好きな人

ももくり

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8.トモ

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 自分んちでネット見ながら枝豆チップスを食べていると、スマホが鳴った。──やっぱりか。

「もしもし」
「俺、シュウだけど」

 なんかモジモジしてるし。
 また翠ちゃんに何かして、後悔してるのかな?

 …遡るコト10年前。私は翠ちゃんに、衝撃の告白をされるのだそれは、幼馴染の“完璧君”ことシュウさんが、誰もが『美しい』と評する翠ちゃんを、『ブス』呼ばわりしているのだと。

 彼女は続けた。

 >シュウちゃんったら優しいの。
 >人間には『好みのタイプ』というのがあって、
 >四角い顔が好きな人もいれば、
 >まあるい顔が好きな人もいる。

 >翠のようなタイプを好きな人間が、
 >たまたまスッゴク少ないだけで、
 >いつかお前でもイイという男が現れるよって。

『だから私、頑張るんだ~』とか笑ってたけど。翠ちゃん、たぶん世間の殆どの人が、アナタのことを『美人』だと言うよ。ああ、もう可哀想に、シュウさんに洗脳されちゃって。あの時はさすがの私も憤り、彼の自宅に押し掛けたら、驚くほど潔く白状した。

「…う、あ…。俺、翠のことが好きなんだ。でも、そんなこと言ったら、アイツ離れてくし。お互いの気持ちが熟する時期まで、協力してくれないかな、トモちゃん」
 
 頭をハンマーで10回ほど殴られたような衝撃を受けた。この、いつも自信満々で、周囲から絶大なる信頼を得ていて、欠点を見つける方が困難なモテ男・永井秋が、絶賛・片想い中?しかも素直になれず、相手をイジメてる??

「ああしてブスだと思わせておけば、他の男に自分から告白なんか出来ないだろ。大丈夫、将来的には俺がヨメに貰うから」

 とか言って、私を密使に仕立て、こうして、しょっちゅう愚痴電話を掛けて来る。

「どーしたんですか、シュウさん?」
「翠、俺のこと好きじゃないのかなあ。なんかトモちゃん、聞いてない?」

「好きか嫌いかで言うと、『好き』ですよ」
「隣のオニイサン的な『好き』じゃなくてさー。一人の男として、好きになってくんないかなあ」

 し、知らないし。本人に直接伝えなさいよ。…とは言えない。この素晴らしいウエッティっぷり。

「あんな軽い男と付き合うとか、有り得ないし。さっきさ、絶対に別れると約束させたから。翠の動向を見守っててくれよ、トモちゃん」
「あー、はい」

「絶対、登下校は俺も一緒に行くから、混ぜて。下校はさ、トモちゃんが部活で、別々の帰宅になること多いんだって?」
「はい。私、家庭部の副部長で。週3回、放課後にケーキとか作ってるんです」

 …ん??電話の向こう、グフグフと笑い声が響いている。ちぇ。面倒臭いけど、訊かないとダメかなあ。なぜなら、そうしないと電話が終わらないから。

「あのお、何かイイことありましたか?」
「う、ああ。さっきさあ、翠とキスしちゃった。いつもアイツがうたた寝してるとにきコッソリしてたけど、起きてる翠とは、初チュウ~~」
 
 そりゃあスゴイですね。もう、このまま一気に両想いで結婚ですね。…などと、適当におだててみた。ウヒウヒと悶えている声を聞きながら、私はこっそりと脇腹をボリボリ掻く。

 ああ、永井秋という男は、
 本当に面倒臭い。
 
 
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