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大好き
しおりを挟むその後。
廣瀬さんが『浴室掃除も兼ねて先にシャワーを浴びたい』と言うので、私はドキドキしながらリビングで待ち、ドキドキしながらシャワーを浴び、ドキドキしながら寝室へと向かった。
間接照明の仄暗い灯りの下でベッドに腰掛けて両手を握りしめているその姿は、まるで何かに祈っているようにも見える。
「お待たせしました」
「……」
普段はよく喋る廣瀬さんが珍しく無口だ。まあ何といってもこちらは初めてなので、そしてそれは既に伝え済みなので、全てお任せすることにしよう。
ここに辿り着くまでに幾つか悩みポイントが有って、使用済みタオルは何処に置けばいいのか?とか、メイクを落としたけど眉毛だけでも描くべきか?とか、どうせ脱ぐなら下着は身に付けなくていいのでは?などと、とにかくいちいち手を止めていたせいでかなりの時間をロスしてしまった。
最終的には裸のままバスタオルを巻き、眉毛も描いてみたのだがこれが正解かどうかは分からない。ベッドの傍で立ち尽くし、モジモジしている私に廣瀬さんは未だかつて見せたことの無いだらしない笑顔で『グフッ』と言った。
いや、正確には“言った”のではなく声が自然と漏れたという感じだろうか。
「朱里」
「はい」
意味不明。膝の上に私を座らせてひたすら頭を撫でたかと思うと、私の鳩尾辺りに自分の額をグリグリと擦りつけている。
なんだ、どうすればいいんだ??
「朱里」
「はい」
今度は潤んだ瞳でひたすら見詰められ、対面座位もどきにされてしまう。
あのう、私、初めてなんですけど。
チュッチュッと私の顔全体にキスをしながらパジャマを脱ごうとする廣瀬さんは、私が膝に乗っているせいで苦戦を強いられているらしい。気を利かせて体を浮かせようとすると、それを拒否するかのように肩に顎を乗せてグイグイと押さえつけてくるので、身を捩っているうちに体に巻いていたタオルが落ちてしまった。
「朱里」
「はい」
もうこれで名前を呼ばれるの3回目なんですけど。用事が無いのなら呼ばないで欲しい…などと思っていたら、物凄い勢いで押し倒された。
「朱里、エロい、もう、無理」
「え?あ、…っ、きゃあ!」
上から下へ徐々に攻めてくると予想していたのに、いきなり本丸ですか?!
両脚が豪快にこじ開けられ、廣瀬さん身体がその間に滑り込んだせいで閉じることが出来ない。
「朱里ッ、舐めて」
「あ、はい」
最初は人差し指、続けて中指と親指を無心で吸っていると咥内が唾液まみれになってくる。
「あー、ヤバイ。指を舐められてるだけで勃ってきた…」
「ふが…は、ふふってふ」
『それは良かったです』と言ったつもりだが、絶対に伝わっていないだろう。
ぴちゃぴちゃ、
れろれろ、
むぐむぐ。
何度もシツコイですけどね、私は初めてなんですよ。とっとと2人とも全裸になって、廣瀬さんの指を舐めるだけでかれこれ10分は経過したと思うんですけど、これって普通ですか?
もしやこの人ってマニアックな性癖をお持ちなのでは?
「朱里、もういいよ。俺の指、ふやけちゃう」
「ご、ごめんなさい」
どうやらストップの指令を待つ必要は無く、自発的に止めるべきだったらしい。──反省。相手に確認しないで思い込みだけで突っ走ってはダメですね。
「さすが朱里、めちゃくちゃ綺麗だ」
「えっ?!ああ…そ、そんなところを見ちゃダメでしょッ!!」
いつの間にやら股間辺りで廣瀬さんの頭が揺れており、自分ですらジックリと見たことの無い恥部を凝視されていた。
「朱里は初めてだから知らないだろうけど、普通、パートナーは相手の状態をこうして念入りに確認するんだぞ。これでも俺は紳士だからな、朱里が恥ずかしく無いように間接照明だけで我慢しているんだ。むしろ感謝して欲しいくらいだよ」
「そっ、そうなんですか?!知らなかった…」
「じゃあ、解すために指を入れるから」
「そ、それもやっぱり一般的なんですか?」
「勿論!指を1本ずつ増やして、最終的には3本くらい入れるんだ。で、ここのところを俺が舐めることで男性器を受け入れる準備が整うんだよ」
「聞いているだけで死ぬほど恥ずかしいんですけど、本当に普通なんですよね?」
「ああ、皆んながやっていることだ!」
「みんな、スゴ~イ!」
この他にも様々な恥ずかしいことをされ、ほどほどの痛みを伴って無事に貫通。
「あ…はは…、とうとう…」
「入っちゃい…ました…ね」
「朱里」
「はい」
「…好きだよ」
「私も…好きです…よ」
そっか、先程から何度も私の名前を呼んでいたのは、その後に続くこの言葉を言いたかったからなのか。モテモテで甘い言葉なんか囁き慣れているように見えるクセに、肝心なところで不器用なんだから。
「朱里」
「はい」
「大好き」
「私も…大好きです…よ」
身も心も繋がって、私達は幸せの絶頂にいた。
そして、その数日後に事件は起きるのである。
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