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美香編
私の半生
しおりを挟むさて、盛り上がってきたところ申し訳ないが、箸休め的に私の半生など語らせていただきたい。
>世の中な、美人には優しいけど
>ブスには厳しいもんなのッ。
>お姉ちゃんと妹がチヤホヤされてるのに
>自分だけ邪険に扱われてる…とかさ、
>他人を恨む前に肝に銘じておけっての。
…幼き頃、心無い親戚のオジさんが妹の香奈に向かってそう言った。いま思えば、あの頃から私の運命は決まっていたに違いない。
美人だから人生はイージーモード?
そんなことは絶対に無いと断言しておく。
確かに私は、親戚のオジさんが放つ暴言に一切反論しなかった。しかしそれは、相手が目上でしかも高圧的な性格だと知っていたからなのだ。そもそも9歳の女の子に何が出来ると言うのか。
なのに親戚のオバさんたちは陰で私を罵った。『なんて性格の悪い子でしょう。普通、自分の妹があんな風に貶されたら庇うわよねえ?それをしないなんて、心根が腐っているんだわ』と。
胸が潰れそうに痛んだが、それでも両親に悟られまいと平静を装って過ごしていたのに。次は執拗なまでに付き纏う男性が出現。どうやら、登下校の途中にある家に住んでいる既婚者らしかったが、これが本当に気持ち悪かった。
メガネと七三分けでパッと見は真面目そうなのにひたすら私に付き纏い、最終的には警察沙汰にまでなってゴタゴタの末、離婚してしまったそうだ。それで今度は心を病んだ奥さんの方が私を恨み出し、嫌がらせをされる始末。これも両親が奮闘してくれたお陰で奥さんの両親が責任を持って遠方に隔離してくれたので、それ以降は平穏を保っている。
自分語りを始めたら止まらなくなったぞ。
えっと、それで中学に入った私はこれまた敵を作ってしまう。同じクラスに標準よりは可愛いかな…というレベルの宮田さんという女のコがいたのだが、この人は妙に自分に自信があって、芸能事務所なんかにも所属していたそうだ。文化祭で催される寸劇で姫役を狙っており台詞も全て暗記するほどの意気込みだったらしいが、担任の一言で大きく事態は変わる。
>姫役は朝日だな。何より見映えするし。
ああそうさ。私が一番美人だったことは認める。しかし、そのお陰で宮田さんは私を憎み出し、世渡り上手な彼女はクラスどころか学年の女子全員を自分の味方につけてしまうのである。
『美人だからって図に乗ってる』『美人なら何してもイイと勘違いしてる』…それはもう意味不明な理由で私は迫害され。そんな時に優しくしてくれたのが、学年で一番人気の三浦くんだ。優等生で性格も良くしかも端正な顔立ち。彼が私に話し掛け、気遣ってくれるのは非常に有り難かったが、これがまた女子たちの怒りの炎に薪をくべてしまうことになった。
>キイイッ!!朝日のやつ、
>三浦くんをたらし込むなんてッ。
>あいつ、本当にムカつく~!!
恋愛感情なんて一切無かったのに、勝手に誤解して勝手に敵認定されて。そんなことが積み重なった結果、14歳にして人生に疲れ果てた私は漸く突破口を見い出す。
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