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美香編
私を好きじゃないの?
しおりを挟む現在の時刻は23時。…ってことはだよ、アナタこんな時間までずっとこの店にいたの?サアーッと血の気が引く音がした。ヤバイ、このひと絶対にヤバイ。ほら、あれだよ、あれ!
ス、ストーカー。
下手に刺激してはいけないと思い、目線を逸らしながら後退りしてみる。うん、いける!一気にココから走り出して、ウチに向かおう。『GO!』と脳内で号令をかけて右足の方向を90度変える…はずだったのに。
うおああっ!
日頃の運動不足が祟ったのだろう、残念ながらグキッという音がして私はその場で頽れた。そう、とても無様に。
「大丈夫ですか?!美香さんッ」
「ふえぇん」
幼子のような声を出してしまったのは、職場にあざとさの権化のような荒木田という後輩がいて。常日頃からソイツの真似をしていたせいに違いない。本人から『ひどーい美香さん』と言われるまでがお約束で、その一連の流れがとても楽しかったのだが、ここで咄嗟に出てしまったことに戸惑いを隠せない。
うっ、何も知らないツバ男が固まってる。
短い沈黙すらも怖くて、ついウッカリ目線を合わせてしまう。ダ、ダメだ。自慢じゃないが、私に見つめられた男は90%以上の確率で惚れてしまうのだ。
とは言え、今更どうにも出来ない(※美香はメデューサではありません)。ジッとその瞳を覗いてみると、ツバ男はゆっくりと口角を上げながら鼻の下もニョーンと伸ばす。
「美香さん、俺…」
「はい」
愛の告白か?!そうなんだな?!
「あの、昨晩は非常に失礼なことをしてしまって誠に申し訳ありませんでしたッ」
「ええ、まあ、本当ですよね」
おや?告白はこの後かしらん。
「なんとお詫びすればいいのか…。それであの、宜しければ結婚相手を紹介させてくださいッ」
「は?結婚…相手…??」
告白、しないの?
「お父様から急かされていると仰ってたので、その…俺の交友関係の中から美香さんに似合うハイグレードな男達をですね、見繕ってまいりました」
そう言って手渡されたのは見合いの釣書とまでいかないものの、クリアファイルに入れられた数人の男性に関する資料だった。写真を見るとどの人も端正な顔立ちで、職業は医師や弁護士などと記載されている。
「ツ…じゃなくて望月くんはいいの?」
「俺ですか?いや、遠慮しておきますよ~」
だって皆んな私のことを好きになるのに。
「私を好きじゃないの?」
「そうですね、どちらかと言えばあまり…」
あらまあ、それはビックリだわ。
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