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これが噂のハッピーエンド
しおりを挟むそんなワケで1カ月後。
「あれ?吉良さん、もしやオールでしたか?珍しく2日続けて同じ服装ですね」
「ああ、彼女の部屋で泊まったんだ。竹松、恥ずかしいから騒がないでくれよ」
いや、それ絶対にワザとだから!
おかしいと思ったのよね。昨日に限って滅多に選ばない水玉模様のネクタイなんかしてきてさ、接待が終わったら当然のようにウチに泊まるとか言うんだもん。しかも今朝は出社早々、そのネクタイを意味無く何度でも触り続けてるし。
「彼女って…もちろん村瀬さんのことですよね、あはっラブラブじゃないですか」
「ム・ラ・セさんと俺が付き合っていることを、大声で言うのは止めてくれ!!」
こ、これも絶対にワザとだから!
私の名前をスタッカートでハキハキ発音している辺り、周囲に聞かせようとする強い意志を感じるよね?ったく、毎日何かしらこうやって地味に交際アピールを続けるところが、ほんと姑息なのよ。
…などと心の中でボヤいていたら、
いつの間にか背後に吉良が立っていた。
「ぅわあっ!吃驚するじゃないの」
「今日はバタバタしていて日課をこなせなかったから、いま言わせてください」
「もしかしてアレよね?あのさ、別に毎日じゃなくてもいいんだけど」
「いいえ、それでは俺の気が済みません。花だって丹精込めて育てると美しく育つといいますし。村瀬さんは今でも十分に美しいですが、俺と付き合っているからもっと綺麗になったと…そう周囲に言わせたいんですよ」
などと言いながら吉良は咳払いを1つして、
私の耳元にその唇を寄せる。
>今日も綺麗だ…。
>どうしてそんなに綺麗なんだ…。
「はい、どうも有難う。それじゃあ吉良、もう仕事のことを話していいかな?」
「オウ、イッツ・クール…」
さすが1時間掛けて愛の告白をする男、この程度のホメホメは序の口だ。
>そんな冷たいところも、好きですよ…。
ええい、いちいち余韻を残すな。
アンタはカラオケBOXの無駄に響くエコーかよッ。
スルーの姿勢を前面に押し出し、バッサバッサと資料を広げる私。取り敢えずひと通りの説明を終えて顔を上げれば、隣席に座っている吉良と視線がぶつかった。
あ…、ダメだ。
勝手に口元が緩んでしまうのは、
きっと吉良のことが好き過ぎるからだろう。
だって、すごく好きな人と両想いになって、しかも毎朝愛の言葉を囁いてくれるんだよ?!そんなのニヤけるに決まってるじゃない!!
「くそツンデレですね。そんな表情をされるとトイレに直行したくなります」
「な、なぜにトイレ?」
「一発抜く為に決まってるでしょう?何をウブな女学生みたいなことを言っているんですか」
「うわ、会社でそういう発言は控えて欲しいわ~、引くわ~」
「そんなことを言ってると、トイレに引っ張り込みますよ」
「やだ、絶対にトイレなんかでしないからね!」
「じゃあ夜まで我慢します。今晩は俺の部屋でしましょうか」
「ええっ、そしたらきっと明日は今日の逆バージョンで竹松にアピールするんでしょ?私の服装が2日連続同じなのは吉良の部屋に泊まったからだって」
「勿論です」
「それは周囲から反感買うから、無しの方向で」
「周囲など気にしていられません。早く村瀬さんを囲い込んで俺のモノにしないと」
「…バカ…私は…もう吉良のモノだよ」
再び視線を絡ませて、口元を緩める私。
もちろん吉良も同様にユルユルだ。
「くそツンデレかっ」
「あのさ、ツンデレってもう死語だからね!」
「じゃあ何て言えばいいんですか」
「そんなの知らないわよッ」
ニッコリ微笑みながら口調は荒く、それでも手はこっそり恋人繋ぎにしちゃう私達。
近頃なんだか意思の疎通が上手くなった気がする。それは仕草や表情から読み取る術を身に着けただけという気もするし、そうでは無いような気もする。
なぜなら恋は、人をエスパーにしてしまうから。
これからも私はその能力を高めていこう。
…この興味深い男を練習台として。
──END──
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