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自己防衛だったんだ(志季視点)
しおりを挟む※ええっ、まだ志季sideなの?って、ハイ、まだまだ続きますよ。
それは『誰でも数をこなせば上達しますよ』という感じの言葉だったと思うが、テンパっていた俺の記憶には残っていない。
うッ、俺のバカ。
どうして思ったことをすぐ口に出すんだよ?!
失言を謝ると尚更そのことが強調されてしまうような気がするし、それでも謝った方が良いと思う自分もいたりして、脳内で激しくディスカッションを繰り広げているうちに口からスルリと零れ出たのは自分でも驚きの言葉だった。
「じゃあ、俺も上手くなりたい」
「……」
いや、本心はそうなんだけどっ。
でもソレ、口に出しちゃダメなやつだろ?!
『やってしまった…』と絶望して、思わず瞼を閉じた俺に奈月ちゃんは、柔らかく微笑みながら唇を重ねてくれた。
ふあああああっ。
万人の男を腑抜けにさせる極上のキス。
もう我慢なんて無理だ!!
だって俺、メチャ好きになってるし。
もう、キスしたい、キスしたい、キスしたい。
ムッツリスケベだったんだな、俺。いや、ほんと、自分では性欲とか無くて、淡白な方だと思っていたのに。
だって彼女、リビングで俺と2人っきりなのに太腿が丸見えになるショートパンツ穿いて正座とかするんだぞ?!しかも真横でちまちまプラモデル作ってるから、微妙に体温を感じると言うか、なんかもう…鼻血出そう…。
「うふふ、意外と向いてるみたいです、私」
「う…、ああ…、そ、そうだね!」
ってゴメン!本当はエロい妄想してましたッ。
ううっ、スウェットのズボンの下で長い間出番の無かったアレが自己主張をし始めている。我慢しろ、だってこのまま距離を置いて、奈月ちゃんの方から諦めさせるんだろ?!
ひたすら我慢する俺に、更なる仕打ち。プ~ンと甘い香りが俺を誘う。香水とかではなく、どうやらシャンプーなんかと混ざり合った奈月ちゃんの体臭らしい。
って、体臭まで可愛いってどうなってんの?!
そっか、俺ってやっぱり男だったんだな。今まで女には全然興味無いと思っていたけど、どうやらそれが好きな女じゃなかったからで、好きな女にはメチャクチャ関心あるみたいだ。
自分のことを諦めさせようと思っているクセに、好きになって欲しいという感情が膨らみ続ける。ん?あれ?奈月ちゃんは俺のこと好きなんだよな?だったら両想いなんじゃね?なんで俺、諦めさせようとしてたんだっけ?
えっと、そうだそうだ『自己防衛』だったんだ。
どうせ付き合ってもスグに破局するだろうと。
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