上 下
1 / 39

彼から別れを告げられました

しおりを挟む
 
 
 …………
「えっ?」
 
 大学を出てすぐ近くにある喫茶店。
 
 そこで私はいつも通り彼を待っていた。付き合って1年半になる市尾久志いちお ひさし。大学に入ってから同じサークルに入ったことで仲良くなったこの男は明るくて見た目も素晴らしく、いつでも輪の中心になるような人気者だ。
 
 そんな彼から出会って早々に告白されたのは、自分で言うのもナンだが私も彼に負けず劣らずの美形だからだと思う。小さな頃からモデル事務所のスカウトを受けることなんて当たり前で、高1の頃には夏休みの間だけで名刺を17枚も貰ったことが有る。その頃にはもう、スカウトとかでは無くなっていて、事務所の方が口コミを頼りに自宅まで押し掛けて来たりしていた。
 
 まあ、どんなに熱心に口説かれでも面倒臭いから絶対にしないけど。だって、モデルなんて体調管理とか美肌保持とか面倒臭そうだし、私には絶対向いていないと思うから。
 
 って、えっと…、どこまで話したっけ?
 ああ、そうそう。で、この彼氏である
 
 育ちが良くて人を疑うことを知らない貴公子のような雰囲気が好きだったのだが、こうなると話は違ってくる。『こうなる』とはどうなるのかと訊かれると、こんな状況だ。
 
 遅れてやって来た彼は、なぜか女連れで。
 
 その女はしおらしく泣きそうな顔をしている。…たぶん演技だと思うけど。どうしてそんなことを思うのかと言うと、私の性格が悪いからだけでは無い。
 
 その女こと砂山紗英すなやま さえが顔見知りだからである。私はいつも女友だち4~5人とよくツルんでいるのだが、ふと気づけばそこにシレッと加わっていた。仲良しのアッちゃんが言うには、いつも1人でポツンといたコで、誘ってもいないのにある日突然、行動を共にし出したらしい。
 
 だからと言って、グループの女子たちがこのコと打ち解けるワケでも無く、大勢でいる時は顔を合わせるけど、それ以外のプライベートでは一切会うことは無かった。
 
 とにかくまあ、その程度の顔見知りで。
 
 久志は私の真正面に、紗英がその隣に腰を下ろしてそれから重い沈黙が続く。その沈黙に耐えられなくなった私が仕方なく口を開こうとしたその時、久志が意を決したようにして言うのだ。
 
 『ごめん、奈月、別れて欲しいんだ』と。
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...