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驚きの裏事情
しおりを挟む母曰く、父こと高梨克郎は、異常なまでに娘を愛しているのだと。
「…だってほら、お父さんってそんなに美形じゃないでしょ?
で、3人の子供のうちスミレだけが私に似て超絶美人になっちゃって。しかも、今まで自分に優しくしてくれる女は全員お金目当てだったそうなんだけど、スミレは純粋にお父さんを愛してくれてるって。
そんなの血が繋がった娘なんだし、私からすれば当たり前だと思うんだけど、あの人って複雑な家庭で育ってるから。肉親の愛に飢えていたせいか、自分に懐くスミレが天使に見えるそうなの。
息子2人は社会の荒波を乗り越えて行けるよう、幼い頃から厳しく接したせいか、なんとなく一線を引かれている気がするけど、スミレだけは違うんですってよ。
で、自分が生きている間は、全力でスミレを守り抜くとか宣言しててね。害虫…あら、こんな表現をしちゃったけど、お父さんの言葉をそのまま伝えてるの。大場さん、気を悪くしないでくださいね~。えっと、とにかくその害虫を駆除すると燃えてるワケ」
…なんとなく先が読めてしまったが、母の話は更に続く。
「それは中学の頃から既に始まってたんだけど、スミレが誰かと付き合うたび、自分の部下に相手の身辺調査をさせて。難癖をつけた挙句、別れさせていたみたい。
なんかもう、私から見ても異常だと思ったわ。だって、誰1人認められたコはいないから。要するに自分以外の男は全部却下。まさかこの人、実の娘と結婚する気じゃないか…本気でそう心配しちゃったほどよ。そのお父さんに初めて強敵が現れたの。
その人、すごく頭が良くって。見た目はイマイチだと思ったら、よくよく調べるとかなりの美形だと。陸上で都大会に入賞しているから運動神経もかなりイイだろうし、友人も多いみたいで。とにかく、本人には欠点が無かったのよ。逆にそれがお父さんの闘争心に火を点けたワケ。
勿論それは貴臣くんのことなんだけどね。
本人に問題が無ければ、周囲を攻めろと言わんばかりにその家庭環境を調べまくったらしいの。すると、母子家庭であまり裕福では無かった。しかも奨学金で大学に入ったと聞いて『借金だらけの男はスミレに相応しくない』と。
確か当時まだ就職したばかりだったのよね、彼。そんな一気に返済できるはず無いから、てっきりスミレを諦めるのかと思えば、反対にウチのお父さんに交渉して来たそうよ。
『絶対アナタの役に立ちますから、土日だけ自分を雇ってください』って。お父さんが何度断っても、それはもうしつこかったらしいわ。で、コキ使って厳しくすればすぐ諦めるだろうと思い直したお父さんは、取り敢えず彼を雇い、予想外の有能さに今度は手放せなくなって。
このまま奨学金を完済して辞められては自分が困るという理由で、早々に次の試練を与えたの。それは、20代男性には絶対無理な金額を提示し、『娘を嫁に欲しければこれだけ貯めろ』と。
更にもう1つ。『自分が多忙だったせいで、娘と触れ合う時間が本当に少なかった。だから、今から10年間はスミレを奪うな。もし、それに背けば、お前の家族はもちろん親戚縁者も路頭に迷うことになる』──そう言って脅したのよ。
本当にもう、無茶苦茶でしょ?しかも自分はスミレに嫌われたくなくて、この話は絶対言うなと口止めをして。
貴臣さんはよく頑張ったと思うわ。お父さんの1つ目の要求を無事にクリアし、先日、預金通帳を持参して結婚の承諾を得たの。そしてあと2週間で10年目を迎えるはずよ」
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