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そして物語は続く
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「ごめんなさい、2人とも」
「え?!ああ、美香さんが謝ること無いよ」
お通夜みたいな雰囲気のまま、我が家で晩御飯を食べ。余程ショックだったのか、父の将棋の相手もせずに帰ると言い出した内藤さんを車まで見送ろうとしたら、そのまま助手席に座らされて。今後のことについて話し合おうとしたら、いきなり後部座席に美香ネエが乱入してきて謝罪されてしまった。
「本当は私、前々からせっつかれてたの」
「えっ?!前々って、お父さんに??」
「そうよ。内藤さんがウチに挨拶に来た時点で、香奈との結婚話が出る日も近いだろうからって。でも私が先だし、お父さんは心を鬼にして拒否すると宣言されてたの。ごめんね、ダメな姉で」
「美香ネエ、お願いだから謝らないでよ~。えと、その…、だからってそんなに焦って好きでもない男性と結婚したりしないでよ」
「香奈ァ…」
「美香ネエ…」
後部座席から手を伸ばす姉と固く手を握り合う。
いつだって女王様のように毅然としている人が、縮こまって申し訳なさそうするその姿はかなり胸にくる。私が結婚なんて言い出さなければ、姉はいつも通りの生活を続けていられたのに。ゆっくりと自分のペースで運命の出会いを待てたはずなのに。そう思うとチクチクと胸が痛む。
美しい姉妹愛を横目で見つめながら、
内藤さんは有り得ない言葉を吐くのだ。
「うーん。でも、俺は美香さんに結婚を焦って欲しいな」
「え?…あ、はい」
こ、ここにも鬼がッ。
「だってアナタが結婚してくれないと俺たちも結婚出来ないんですから。俺、早く香奈と結婚して一緒に住みたいんですよね。結婚前の同棲とかココんちのお父さん、許さないでしょう?でね、香奈とも話してたんですけど婚約したらすぐ子作りしたいんですよ。もう新居も用意してあるし、ウチの親も大賛成してるんだけどな」
「…頑張ります」
不穏な空気が流れたが、内藤さんには内藤さんの美香ネエには美香ネエの言い分があるワケで。間に挟まれた私は無言を貫くことにした。
「じゃ、2カ月を目標に相手を見つけよう」
「に、ににに、2カ月?!」
私も驚いたけど、無言無言。
「最初っから諦めちゃダメだよ~。取り敢えずハードルを高めに設定しておいて徐々に下げればいいだろう?大丈夫、美香さん結構美人だし」
「あり…がとうございます」
け、結構?!
とんでもない、すんごく美人だよッ。
だって休日にショッピングしてたらモデル事務所のスカウトから声を掛けられまくって高校の卒業式の時なんて36人から告白されたという逸話の持ち主なんだよッ?!極めて平凡なアナタの彼女を差し置いて、何をそんな上から目線で。天下の美香ネエに謝って
…と思ったけど、無言無言。
「良さそうな男がいたら紹介するからさ」
「紹介は不要です」
む、無言無言。
「でも、放っておいたら焦らないだろ」
「焦るから放っておいてください」
「それ、日本語としておかしいし」
「全然おかしくないので」
「俺の友人じゃダメだってこと?」
「ダメじゃないけど気を遣うので」
「それって、断ること前提じゃん」
「だって合わない可能性も有るでしょ?」
む~、無言無言。
「合う、合わないは会ってみないと分かんないだろうが」
「ははっ、そっちこそ日本語ヘンですよ」
「ちっともし変じゃない!音じゃなく意味を理解しろよッ」
「考えてますって!本当に紹介は不要です」
する、しない。黙れ、黙らない。
ギャアギャアとまるで水と油な2人。
えと、そっか。内藤さんと美香ネエって今までこんな感じだったんだな。美香ネエが内藤さんに片想いしてるかもとか、妄想もいいところだ。
いつの間にか争点は結婚相手の紹介をするかどうかではなく、どちらがモテるかという話に移っていて。
「ああもう煩い!こう見えてモテるんですね、私!その昔、百戦錬磨のテレビ局のプロデューサーから『このレベルは100人に1人しかいない、キミという女は最高の逸材だ』とまで言わせたほどなんだからッ」
「はあ?俺なんかな、数回通ったそこそこ高級な飲み屋のネエちゃんたちをこの魅力でトリコにしちまって、奪い合いのケンカで店を1軒潰したという過去があるんだぞ!それもこれも俺がセクシー過ぎるから悪いんだけどさッ」
「そんなの自慢にならないし~」
「アホか、十分なるっつうのッ」
「私なんか1人で飲みに行くと必ず誰かが奢りますって声を掛けてくるんだからッ」
「そりゃあ貧乏そうに見えるだけだろ」
む、無言はもうムリ~~。
「はい、もうそこまで!!お願いだから仲良くしてえええッ」
…というワケで、物語は幸せイッパイの私から美香ネエの拗らせ恋愛へと移るのでございます。
--END----
─────
※最後までお付き合いいただき、誠に有難うございました。そんなこんなで『朝日家の三姉妹~美香の場合~』に続きます。別作品として投稿済みですので、宜しければ覗いてみてくださいませませ。
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