朝日家の三姉妹<1>~香奈の場合~

ももくり

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二次会当日

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 …………
「ご結婚おめでとうございまーす!!」
 
 盛大な拍手が沸き起こり、続けてグラスのぶつかり合う音が響き出す。会社関係の人ばかりを集めた二次会は、予想どおり何処を見ても男・男・男で。50人ほどいる参加者のうち、女性は約10%…いや、5%といったところだろうか。
 
 自慢では無いが二次会への参加経験が幼い頃に従兄のもので一回のみというレベルなので、これが一般的かすらも分からない。
 
 >これマジ?!全然女がいねーぞッ。
 >こんなじゃ出会いは期待出来ないなあ。
 
「そっか、これほど女性が少ない二次会はやっぱり普通じゃないんだね」
「そりゃあそうだよ。っていうか、カナスケと会うの久しぶりだな」
 
 話し相手は勿論、モッチーだ。
 
 幹事であるはずの我らだが、さすが天下の帯刀グループ。懇意にしているプロの司会者が祝儀代わりに無料で進行をすると言い出したお陰で、当日はお役御免となってしまい。こうしてウダウダと参加者の声を聞いているしかないのだ。
 
「あはは。久しぶりって3日前に焼鳥屋へ一緒に行ったじゃないの」
「あ~、ヤキモチ彼氏に連れ去られた、アレな。なんか、ここんとこカナスケとは毎日会ってたからさ。数日会わないだけでも、すっごく長い間会っていないような気がしちゃうんだよなあ」
 
「あの、その節は申し訳ありませんでした」
「それは何に対する謝罪なんだ?」
 
 モッチーは軽く膝を曲げることで私の視線の高さまで顔を下げてくれた。
 
「うっ、焼鳥屋に1人でおきざりにしたことと、あ!そう言えばお会計…私、飲み物を注文したまま飲まずに帰っちゃったでしょ?」
「それは大丈夫。あの後、美香さんが残ってくれて一緒に食事した…から、さ」
 
 なんだその歯切れの悪い言い方は?などと突っ込める立場でも無く。仕方なくひたすらモッチーを凝視することで思考を読み取ろうとしたが、特に何も分からず。
 
「じゃあね~!お疲れさま~っ!」
 
 そんなこんなで無事に二次会は終わり、何だかずっと上の空な感じのモッチーとそのまま別れ。帰りは内藤さんが車で迎えに来てくれたので、短いドライブの後、我が家へと向かったのだが。
 
 
 
「香奈さんとの結婚をお許しくださいッ」
 
 おかしいと思ったんだよね。だって、直前までいつものパン屋さんで作業していたとか言ってたクセにメチャクチャ高そうなスーツ着てたし。でもまあ、私も結婚式用に正装してたからてっきりソレに合わせてくれていたのかと思っていたら、実は…。
 
 いつも通りウチの車庫と庭の境目に車を駐車し、そしてサイドミラーで身だしなみをチェックしまくり、皆んなが揃ったところで急に結婚の許可を願い出るんだもん。
 
 
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