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たどり着いた先は
しおりを挟む「違うよ、この人は会社の同僚ッ。ちょっとしたゴタゴタが有って、お詫びがてら食事してるだけなの。だって私だよ?奇跡的に内藤さんと付き合えただけで、他の男性からは見向きもされないよ~」
アハハと自虐的に笑う私の手を、誰かが握った。
「へ?あれれ??」
「ごめん、俺、急用を思い出したから」
急用?ソレは私にも関係していることですか??そんな疑問も頭に浮かんだが、内藤さんは私の手首を握って強引に立たせ、傍に置いてあったマイバッグもいつの間にか掴んでいる。
「あのっ、ないとう…さん?」
「香奈はこのまま連れて行く」
ポカンと口を開けたままの美香ネエとモッチーを置き去りにして、内藤さんは私と共に出口へと向かってズンズン歩き出す。
「いったい何処に向かっているのですか?」
「ああああッ、もうッ」
「どうしたのか教えてくださいよ」
「ううううッ、むんッ」
返事代わりの奇声に怯え、私は黙り込むしか無い。
その後タクシーに乗り込み、着いた先は内藤さん宅で。正確には内藤さんのお父様の名義でいずれ内藤さんに譲られる予定の分譲マンションなのだが、かなり以前から既に内藤さんが使用しており。『使用』というのはつまり、基本は実家で生活していて、たまにこのマンションで眠るからで。
コホン、
要するに『ヤリ部屋』というヤツだ。
そのことをまだ付き合う前のお互いに何も意識していない頃に教えて貰ったのだが、いざ付き合い出してみたら驚くほど嫌悪感を抱いてしまい。『他の女性とどうこうしたベッドで、死んでも寝たくありません!』と宣言したところ、毎回ホテルをリザーブしてくださるようになったワケで。
えっと、そんな事情で実際に訪れたのは今日が初めてなのだけれども、きっとコレが例の部屋に違いない。
「…いや、違うぞ」
「ちがう」
リビングの中央で棒立ちしている私に向かって彼はボソボソと話し出す。
「…買ったんだ」
「かった」
何を?というのは愚問だろう。この流れだと、このマンションを内藤さん本人が購入したということになる。
「香奈のために、前のマンションからこっちのマンションに買い替えたんだよ」
「?!」
『そんな勿体ない!』と言ったら傷つくよな。
『お金持ちですね!』と言うのも何か違う。
『まあ~嬉しい!!』と言ったら高飛車だ。
どの答えが正しいの??
教えて、偉い人!!
この時は、ただ返答に困っていただけなのだ。なのに、そんな私の表情を見て内藤さんは誤解してしまったらしい。
「あ…、も…しかして、重いかな、俺。ご…めん、香奈が他の女の匂いのする部屋には泊まりたくないって言ってたから…だから親父を説得して自分でも金を出して…その…、あは、…もしかして俺のこと嫌いになった?」
ああ、どうしよう、血が滾る。
なんだこの可愛い生き物?!あの自信に満ちていた強気な男が、私なんかに気に入られようとしてオドオドしてるだなんて。ごめんなさい、謝ります!!ずっと自分だけが悩んでると思ってたけど、この人も私と同じだけ悩んでいたんだな。
「何か言ってくれよ。…俺、こんなの初めてで。だって、お前に嫌われたくないと思ったら以前みたいにペラペラ喋れなくなって、そんであの望月って男に死ぬほど嫉妬して、でもそんなのカッコ悪くて言えないし、でもでも言わないともっと苦しくて泣きそうなんだけど。ああもう我慢出来ないから訊くッ!!
あのさ、香奈、俺とアイツとどっちが好き?
俺だよな?俺の方が好きだと言ってくれ!」
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