43 / 56
以心伝心
しおりを挟む呆れて口が塞がらない。
この人、ことある毎に『俺に惚れるなよ』とかなんとか言い続けてたけど、あれネタじゃ無くて本心だったのね。
「ごめん、だってほら、俺のこと女性社員たちが奪い合ってるとか聞いたもんでさ。それにお前、俺に気の無いフリをしておきながら手作り菓子でイメージアップを図ろうとするし、実は少し疑ってたんだよ。そっかそっか~、本当に彼氏がいたんだ~」
「ひ、ひどい、酷すぎる…」
どうやら彼氏がいるという申告すらも、狂言だと思われていたらしい。ここで私は壁に掛けられた時計を見てハッとする。
「トイレで歯磨きと化粧直しをして10分。ロッカーに行って着替えに5分と考えると残りは5分のみ…お先に失礼します」
「えっ?!ああ、お疲れ~」
サカサカと二次会に関する資料を仕舞い、慌ててダッシュする。内藤さんを待たせてなるものかという強い信念が、いま私を突き動かしているのだ。
ゼエハア、ゼエハア。
どうにか20分後に正面玄関を出て、内藤さんと無事合流。前々から話題に出ていた会社近くの焼鳥屋に行くことになったが、意外と店内は込み合っており。相席でも良いかと問われて、断ろうとしたところ…。
「朝日さ~ん!!」
「ゲッ!もち、もち…」
なんと望月さんが吉助さんと一緒にいた。
「お久ぶりですね、内藤さん。どうぞどうぞ」
どうやら吉助さんは内藤さんと知り合いらしく、断るに断れないまま我らはそこに腰を下ろすことに。私が歯磨きと化粧直しと着替えをしていた間に、吉助さんを誘ってこの焼鳥屋で既に注文を終えているとか、どんだけ要領いいのよ望月さん。
…という目で彼を見たつもりが、なぜか意味深な笑顔を返されてしまう。
「実はさ、他の客が満席を理由に断られてたんだ。んで、その直後にドアを開けた朝日さんたちの姿が見えたもんで対応しようとする店員を呼び止め、知り合いだから相席を薦めてくれと俺が頼んだの」
「はあ、それはどうも…」
余計なことをしてくれたな!そう言いたいのをグッと堪えて私は望月さんに軽く頭を下げる。
だってっ、久々の2人きりなんだよッ?!
土曜はパン屋の打ち合わせとかで朝から晩まで美香ネエに独占されてるし日曜はその他の家族たちに独占されて私はいつでも放置なの!急に平日も仕事で忙しくなったとか言ってるしでも工務店って冬期は暇なんじゃないの?!と訊きたいけどそんなこと疑ってるみたいで訊けないしそこんとこ抜きにしても2人っきりってやっぱり嬉しいから今晩は頑張って喋るぞ~!とか気合い入れてたところにどうして望月さんと吉助さんと相席しないといけないのよおおお。
ゲホゲホ。脳内で息継ぎせずに叫んでいたら、まるでそれをお見通しだと言わんばかりに内藤さんが私の背中をそっと撫でた。
ギクリ。気が付いてるの?
2人きりになりたかったってこと。
その瞳を覗き込むと、『こういう付き合いも必要だから我慢してくれ』と謝られた(気がする)。なので、『我儘言ってゴメンナサイ』という表情で返したところ、内藤さんは優しく笑ってくれた(気がする)。
うふふ、以心伝心~。
─────
※吉助は別エピソードでヒーローとなっている男で、ちょいちょい出てくるヨッちゃんこと淑子の婚約者です。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
寡黙な彼は欲望を我慢している
山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。
夜の触れ合いも淡白になった。
彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。
「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」
すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる