31 / 56
朝日家の一大事
しおりを挟む麗らかな土曜日の朝。
三姉妹のうち自宅に交際相手をつれて来るのは私が初めてで、朝日家は随分と賑わっていた。
「パパッ?!なんでスーツ着てるの??」
「いや、だって先方はきちんとした格好でいらっしゃるだろう?こちらもそうするのが礼儀だと思ったんだが…」
父・光太郎はそう言って譲らず、スーツ姿のままソファで新聞を読んでおり。
「ほらもうアンタはバイトに行く時間でしょ?」
「そんなの休みを貰ったわよ。だって我が家の一大事だものッ」
妹・奈月はなぜかバッチリメイクを施し、目の覚めるような真っ赤なスカートを穿いて父の隣りを陣取っている。そして反対隣りでは姉・美香が愛犬のシオンを激しくブラッシングし、母・依子は掃除にぬかりが無いか最後のチェックをしていた。
「じゅ、10時よね?内藤さん10時にいらっしゃるのよね?」
「うん、そうだってば。まだ30分も有るし、お母さん、落ち着いてよ~」
先程から母は、5分置きくらいでこの質問を繰り返しているのだ。
「か、香奈?内藤さん10時にいらっしゃる…」
「あ、来たみたい。予定より早いかも」
チャイムの音に慌てて玄関へ向かうと、そこにいたのは予想外の人物だった。
「よお、間に合ったか?」
「ええっ、なんでッ?!」
父方の祖父である茂太郎。
そう、某銀行の頭取で朝日家にとって絶対的な存在を固持している御仁だ。父は3人兄弟の末っ子で、祖父の跡目は1年後に長男(私から見ると伯父)が継ぐ予定だが、徐々に仕事を譲っているらしく。今までが余りにも激務だったせいか暇を持て余し、こうしてあちこち顔を出すようになってしまったのである。
「依子さんに聞いたぞ。3人いる娘ッコのうち、ようやく1人だけ片付きそうだと。まさかそれが香奈だとは思わんかったがな、アハハハ」
「えっと、あの、お祖父ちゃん、そんなワケで今からそのお相手の男性が来る…」
から帰ってくださいとはとても言えない、だってとっても怖いんだもんッ。この人、金融を生業にしているクセに何故かゴッドファザーに憧れているんだよッ?!朝からサングラス掛けて、スーツの襟下にペイズリー柄のマフラーを差し込むとかさ、もうアッチの人にしか見えないって!!
「そんなもん知ってて来たに決まってるだろ?あのな、朝日家の婿に一点の曇りも有ってはならぬ。我が家にふさわしい男かどうかジイちゃんがこの目でしっかりと見極めてくれるわッ。カッカッカ!!」
「う、嘘でしょ?!」
おのれ母め、余計なことをッ。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
契約妻ですが極甘御曹司の執愛に溺れそうです
冬野まゆ
恋愛
経営難に陥った実家の酒造を救うため、最悪の縁談を受けてしまったOLの千春。そんな彼女を助けてくれたのは、密かに思いを寄せていた大企業の御曹司・涼弥だった。結婚に関する面倒事を避けたい彼から、援助と引き換えの契約結婚を提案された千春は、藁にも縋る思いでそれを了承する。しかし旧知の仲とはいえ、本来なら結ばれるはずのない雲の上の人。たとえ愛されなくても彼の良き妻になろうと決意する千春だったが……「可愛い千春。もっと俺のことだけ考えて」いざ始まった新婚生活は至れり尽くせりの溺愛の日々で!? 拗らせ両片思い夫婦の、じれじれすれ違いラブ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる