朝日家の三姉妹<1>~香奈の場合~

ももくり

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妄想と現実

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 部屋に入った途端、私は現実を知る。
 
 な、なんと生々しい光景なのだろうか。このベッドできっと何千何万というカップルが官能のひとときを貪ったに違いない。
 
 ああ、そうなのだ。
 私は『性』というものが怖いのである。
 
 脳内で幾度も妄想したその行為は、当然の如く補正をかけているため、いつだって私は絶世の美女に変身しているし、スタイルだって抜群でそれはもう手慣れた感じで相手を翻弄するのだ。
 
 >ああ、素晴らしいな、香奈は…。
 
 >ボリュームたっぷりの胸、
 >抱き締めると折れそうに細い腰、
 >肌だって触れると吸い付くようだ。
 
 ってコレ、妄想ですからね。
 
 >ヤバイ、だってこんなに気持ちいいなんて。
 >こんな女に出会ったのは生まれて初めてだ!
 >ごめん、今日は優しくしてあげられないかも。
 
 だからコレ、妄想なんですって。
 
 >うあっ、もう無理だッ。香奈、一緒にイクぞ。
 
 うーん、ココまでくると脳ミソ膿んでるな私。
 
「はい、ほら観念して部屋に入るぞ」
「うう、は、はい」
 
 長い髪をサラサラと揺らしながら豊満なボディを惜しみなく曝け出す妄想上の自分はとっとと退場し。残された現実の自分はささやかな胸がもっと小さく見えてしまうネコ背ちっくな姿勢でおずおずと前に進む。ああ、心の準備をするヒマさえ与えて貰えなかったな…。なんだか予防注射されるのを順番待ちしている子供みたいな気分だ…いや、噂によれば痛みはその比では無いらしいが。
 
 先にシャワーを浴びた内藤さんは、バスローブの着方があまりにも適当で。隠すつもりなんか微塵も無いらしく、腰紐で縛られた部分以外は豪快にはだけて丸見え状態である。
 
 うっ、衝撃的。
 どうしようどうしようどうしよう。
 
 妄想の世界では必ず薔薇か光の反射で隠されるアレが、とうとう私の目の前にッ。はしたないと思われないように素早く視線を逸らしたが、そんな私に内藤さんは悪びれも無く言うのだ。
 
「いいよ、見ても」
「ほ、はっ?!」
 
「これ、もう香奈ちゃん専用だし。いっぱい可愛がってあげて」
「……」
 
 いやもう、そんなエロトークに気の利いた返しなんて出来ませんしッ。
 
「ぷっ、冗談だよ。早くシャワー浴びてきな」
「ううううう、虐めないでくださいよおお。わ、私、初心者なんですからねッ」
 
 慌てて浴室に入った私は全身くまなく洗ったはいいが今度は出られなくなるという事態に陥り。

 そして今、内藤さんのノック攻撃を受けている。
  
 
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