好きですけど、それが何か?

ももくり

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嘘だろ?!(前田side)

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 ※今回もしつこく前田視点です。
 
 
 
「前田?珍しいな、俺に電話してくるなんて」
「お…おう、元気だったか、宮丸」

 本当はこんな電話を掛けたく無かったが、余りにも千脇と連絡が取れないため仕方なく宮丸なのだ。何がイヤって、プライベートタイムのコイツは絶対に佐久間と一緒にいてメチャ甘な会話をワザと聞かせてくるのである。

サトルくん、誰と電話してるの?』
『前田だよ、マリちゃんも話すかい?』

『うん!あのこと、私が確認したい』
『ふふっ、いいよ。仕方ないなあ』

 おいこら、こっちから掛けてる電話なのに勝手に代わるな。そんな抗議をする隙すら与えてくれずに、鼻息荒めの佐久間へと通話相手が入れ替わる。

「もしもし、前田くん?だーれだ!」
「え?あ…佐久間だろ」

「ええっ、どうして分かっちゃうのかなあ?当たりでえす!さすが前田くん」
「うっ、佐久間、随分とキャラが変わったな…」

 とうとう宮丸に対してだけでは無く、俺にまで愛想を振るようになったのか。いや、これは俺に話しているテイで、本当は宮丸に向けて“電話する姿まで可愛い私”をアピールしているに違いない。適当に流しておこうと決めたものの、いきなり会話の主導権を奪われてしまう。

「おめでとう!前田くん」
「へっ?な、何が??」

「またまたトボケちゃって。訊いたんだから、千脇ちゃんに」
「あ、ああ。そっか、アイツが話したのか…」

 あんなに職場では俺との交際を隠していたクセに、さすがに婚約ともなると公表してしまったのか。それなら俺も迫田さんに言えば良かった。婚約したことだけは伝えてあるけど、千脇が嫌がるから相手のことはずっと伏せていたのに。それならそうと教えてくれれば、こっちだって…ほんと面倒臭い女だよ。

「で、お相手は誰なの?ずっと訊きたかったんだけど、そっちは死ぬほど忙しいという噂だったから、なかなかそのチャンスが無かったのよね」
「え?!あれ??千脇…」

 俺の相手は千脇だし、佐久間はそれを千脇から報告受けたんじゃないのか??

「うん、千脇ちゃんにも訊いたんだけどね、相手が誰か分からないって言ってたよ。もしかして村瀬さん?それとも別の女性なの?早く教えてよ~」
「えっ、そ、あれ??千脇が…」

 俺の婚約者だよ、と続けようとしたのにソレに重ねるタイミングで佐久間は思うままに言葉を吐く。

「あ!そう言えばこっちも大事件が起きたんだよ~。千脇ちゃんに彼氏が出来て、なんと同棲中なの!!」
「……」

 驚き過ぎて、言葉が出なかった。嘘だろ?!だって俺と結婚するのに、なんで他の男と一緒に暮らしてんだよ。…あ、これはアレだな、よく有るデマだ。本人の知らないところで勝手に独り歩きする無責任な噂話の類に決まってる。

「しかもね、相手は誰だと思う?!聞いたら絶対に前田くんも驚くからッ」
「えーっと、…俺とか」

 割と本気で答えたのに、佐久間はキャッキャキャッキャと笑い転げている。

「ワケないでしょ~。なんと廣瀬さん!!あ、疑ってるな?でも、お生憎様、私の目の前で廣瀬さんと千脇ちゃんが交際宣言したから間違い無いわよ。私もね~、最初聞いた時は『似合わない』と思ったけど、それを払拭してくれるほど仲良しなの。特に廣瀬さんの溺愛っぷりが凄いんだから!私、以前は飲み会とかでよく宮丸くんのことを惚気てたんだけど、廣瀬さんが千脇ちゃんのことを惚気返してくるから近頃じゃもう止めちゃった。それほど熱烈な惚気っぷりなんだよ!!」
「うっ、あ…っと、急用が出来たからゴメン」

 最早パニックに陥り、俺は慌ててその電話を切った。

 
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