20 / 35
私達は絶対に絶対にヨリを戻したりしない
しおりを挟む「マウンティングというのは、自分が優位だと思っているからこそ行なうんだろ?」
「はあ、まあ、そうですね」
「俺と宮丸くんを比べてみろ、どこをどう比べても俺の方が上じゃないか」
「いや、でも若さというかフレッシュさで言うと…ゴニョゴニョ」
あ、睨まれた。
「それじゃあトータルで比較してみろ。スペックはどうだ?」
「そりゃあ廣瀬さんの方が上ですけど…」
コクコクと激しく首を縦に振りながら廣瀬さんは最高のドヤ顔で続けた。
「マウンティングを止めさせるには、彼氏自慢で勝てばいいだけの話だ。どうぞ遠慮なく俺を自慢してくれ」
「はあ…」
そう言われましても。
「でも、あの、廣瀬さんの彼女が私だと広まってしまうワケですが、そこのところは宜しいのでしょうか?」
「いいよ!俺、当分は本物の彼女をつくる時間無いし。半年ほどしたら破局したということにすれば大丈夫だろ」
悪知恵が働く男だな。そう思ってジロジロ見つめていると、突然どこからかひと昔前にヒットしたテイラースウィフトの曲が流れ出した。
「えっと…、もしかしてこれって千脇さんのスマホの着信音で、相手は前田くんだったりする?」
「な、なんで分かるんですか?」
「そりゃあこの曲のタイトルを和訳するとさ」
「『私達は絶対に絶対にヨリを戻したりしない』ですもんね、あは」
そんなことを呑気に話していたら着信はいつの間にか切れていた。…ので、のろのろとサイドボードに置いてある自分のスマホを取りに行く。廣瀬さんの手前、平気そうに振る舞ってみたものの内心バクバクで。あの男、1カ月も連絡して来なかったクセに何を今さら電話なんかしてくるのか。
「掛け直したら?どんな用件か気になるんだろ?」
「う…っ、いえ、ダメです。だってもう彼には婚約者が…」
「もしかして仕事のことかもしれないし、掛け直してみればいいじゃないか」
「この時間に仕事のことで疑問が有れば、私なんかより向こうに同行している迫田さんに訊くと思うんですよね。だからきっとこれはプライベートな電話で、私は出ちゃダメなんです」
「そう言いながらも気になるクセに」
「うっ」
一瞬だけ心が揺れたが、再びテイラー・スウィフトが『絶対にヨリ戻さないってば、コンチクショウ!(※超訳)』とカッコ良く歌ったので私も仁王立ちしたまま耐えた。
「鳴ってるよ、千脇さん。前田くんからの電話だぞ」
「分かってますが、でも出ません!」
「それならいっそ着拒設定にしてしまえばいいんじゃない?」
「いえ、でももしかして仕事の電話が掛かってくるかもなのでッ」
「は?電話に応答しないで仕事の電話かそうじゃないかをどうやって判別するのさ?もしかして千脇さん、エスパーなの?」
「バカ言わないでくださいよ。えっと、日中だと休憩時間以外に掛かってくるのは仕事でしょうし、休憩時間やこんな夜中に掛かってくるのは私用だと思うんです」
『なるほど』と呟きながら廣瀬さんはチラリと私を横目で見て、そしてボソリと言うのだ。
「なんか、いじらしいな」
「は?」
「俺の前ではサバサバしてて、ちっとも女っぽくないのに。前田くんからの着信でアッという間に女の顔に変わっちゃうんだもん。なんかさー、そういうのってグッとくるね」
「う、あ、そん…な、また私を揶揄って!」
必死で強がってみせたのに、なんだか何かが決壊した。
そして慌てまくった私はどうにか話題を変えようとして、廣瀬さんが期間限定の彼氏になってくれるという提案に乗ることにしたのだ。
1
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
闇を泳ぐ
橘
恋愛
兄との恋を守れるのなら闇の中でも泳ぎ続ける――。他に何もいらないから。
私は、必死で闇の中を彷徨い続ける。
深い沼のような闇から浮き出て息をしたいなんて思わない。
この闇から抜け出たいとも思わない。
お兄ちゃんと共にいられるなら、光の届かないこの闇で永遠に泳ぎ続ける――。
心優しい兄
長谷川 春彦(ハセガワ ハルヒコ)
欲しいものはただ一つ。兄だけを想い続ける妹
長谷川 メイ
――ごめんね、お兄ちゃん。
******************
兄妹の恋愛になります。
それゆえ、完璧な清々しいハッピーエンドではありません。その点、お読みになる際、ご留意ください。
あなたと友達でいられる最後の日がループする
佐倉響
恋愛
友人の柊がお見合いをする。
相手のためにも女の小春はもう会わないで欲しいと柊の父親に言われ、いつかそういう日が来ると思っていた小春はあっさりと了承する。
だが柊と最後に食事をすると彼はヤケ酒をして酷く弱ってしまい、小春に友達をやめるのなら抱かせて欲しいとお願いしてきた。
恋心を隠して友達としての距離を守り続けてきた小春は誘惑に抗えず、柊の相手をしてしまう。
これでお別れだとその日のうちに泣きながら柊の家を出ると、柊から連絡が届く。
正気に戻った柊から嫌われるとばかり思っていた小春は「ごめんね」とメッセージを送ろうとするも、誰かに背中を押されて死んでしまった。
小春のスマホに残ったのは柊からのメッセージと、送信できないまま残ったごめんねの文字。
そして小春は柊と別れの挨拶をする朝に戻っていた。ただし、死ぬ直前の記憶だけは残らないまま。
※この作品はムーンライトノベルにも掲載しています。

元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
あまやかしても、いいですか?
藤川巴/智江千佳子
恋愛
結婚相手は会社の王子様。
「俺ね、ダメなんだ」
「あーもう、キスしたい」
「それこそだめです」
甘々(しすぎる)男子×冷静(に見えるだけ)女子の
契約結婚生活とはこれいかに。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
夫のつとめ
藤谷 郁
恋愛
北城希美は将来、父親の会社を継ぐ予定。スタイル抜群、超美人の女王様風と思いきや、かなりの大食い。好きな男のタイプは筋肉盛りのガチマッチョ。がっつり肉食系の彼女だが、理想とする『夫』は、年下で、地味で、ごくごく普通の男性。
29歳の春、その条件を満たす年下男にプロポーズすることにした。営業二課の幻影と呼ばれる、南村壮二26歳。
「あなた、私と結婚しなさい!」
しかし彼の返事は……
口説くつもりが振り回されて? 希美の結婚計画は、思わぬ方向へと進むのだった。
※エブリスタさまにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる