異世界ハニィ

ももくり

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64.アーサーは考えた

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「アーサー?」
「うん」
 
 きっと師匠に頼んで転移させて貰ったんだろうけど、でも、師匠の転移先リストにリネン室は含まれていなかったよ?!

「なぜ、ここに」
「師匠は転移先を場所だけじゃなく、人にも設定出来るそうだ。…普段は面倒臭くてやらないらしいがな。だから、今回はモモを転移先として貰った」
 
 ほおお、へええ。
 
 っていうか、そんなの初耳だよッ。師匠、面倒臭いことは積極的に教えようとしないよね。でも案外そういうことの方がピンチの際に使う頻度が多いから、頑張って教えた方がいいんじゃないかなっ。
 
 うっ、アーサーがめっちゃ私を見ている。どうしよう、とっても気まずい。だって、今生の別れだと思っていたからこそ、この人達の存在を全否定してしまったというのに。
 
 >何千年もかけて何をチンタラ戦ってる
 
 >そんなものに縋りついているから、
 >いつまで経っても戦いが終わらないの
 
 >戦闘用の子供を産むなんておかしいし
 
 ぐぬおおおおおっ、ご、ごめんねアーサー。でも、ここで謝ると全てが台無しになってしまうんだな。我慢、我慢だ私。って、そんなに顔を覗き込まれたら冷や汗ダラダラなんですけど。
 
「モモ、どうしてもやると言うのなら、俺も一緒に連れて行け」
「なっ、ダメだよ!だって、アーサーの顔はこっちの国軍にバレてるもの」
 
「あのさ、たぶん第三王子はモモの存在を報告していないと思う。何故なら、他の王子に伝えればモモの奪い合いになってしまうから。それを避ける為…いや、抜け駆けする為に第三王子は誰にもモモの話をしていないはずだ」
「ほ、本当に?」
 
「まあ、俺の推測をもう少し聞いてくれ。だって、おかしいと思わないか?現時点でモモが捕縛されていないなんて、アシュガルトの緻密な警備から考えると有り得ない話なんだ。だとすると、第三王子は意図的にモモの脱走とその計画を隠蔽しているということになる。…それはどうしてだ?」
「さ、さあ?」
 
 ごめんなさい、アーサー。私、今までずっと貴方のことを脳筋だと思ってた。だから今は、正直驚いてる。でも、よく考えてみれば、コンスタンティンと入れ替わりで公務なんかも熟していたワケだし、アホの子のはずが無かったんだよね。
 
「魔力が無くなったことで己の価値が下がってしまったのならば、周囲も同等に落としてしまえばいい。──そう考えたんだろうな。そもそも第三王子は、自ら望んで敵国の間者になるほどの野心家なんだ。王位継承権が九位くらいだったところを、自力で二位に這い上がったという逸話まである」
「そう…なんだ…」
 
 私、そんな人の魔力を奪っちゃったのね。そりゃあ恨まれるわ。
 
「自分本位も甚だしいが、たぶん国力が下がることよりも…己の地位を保つことの方を優先したのだろう。だからこそ、この国に災厄を齎す女を招き入れたのが誰なのかを必死になって隠すはずだ。…ということは、モモ、もしかするとお前の計画は案外すんなりと遂行できるのかもしれない」
「そ、そっかな」
 
 では遠慮なく、やっちゃうぞ!
 
 
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