65 / 72
64.アーサーは考えた
しおりを挟む「アーサー?」
「うん」
きっと師匠に頼んで転移させて貰ったんだろうけど、でも、師匠の転移先リストにリネン室は含まれていなかったよ?!
「なぜ、ここに」
「師匠は転移先を場所だけじゃなく、人にも設定出来るそうだ。…普段は面倒臭くてやらないらしいがな。だから、今回はモモを転移先として貰った」
ほおお、へええ。
っていうか、そんなの初耳だよッ。師匠、面倒臭いことは積極的に教えようとしないよね。でも案外そういうことの方がピンチの際に使う頻度が多いから、頑張って教えた方がいいんじゃないかなっ。
うっ、アーサーがめっちゃ私を見ている。どうしよう、とっても気まずい。だって、今生の別れだと思っていたからこそ、この人達の存在を全否定してしまったというのに。
>何千年もかけて何をチンタラ戦ってる
>そんなものに縋りついているから、
>いつまで経っても戦いが終わらないの
>戦闘用の子供を産むなんておかしいし
ぐぬおおおおおっ、ご、ごめんねアーサー。でも、ここで謝ると全てが台無しになってしまうんだな。我慢、我慢だ私。って、そんなに顔を覗き込まれたら冷や汗ダラダラなんですけど。
「モモ、どうしてもやると言うのなら、俺も一緒に連れて行け」
「なっ、ダメだよ!だって、アーサーの顔はこっちの国軍にバレてるもの」
「あのさ、たぶん第三王子はモモの存在を報告していないと思う。何故なら、他の王子に伝えればモモの奪い合いになってしまうから。それを避ける為…いや、抜け駆けする為に第三王子は誰にもモモの話をしていないはずだ」
「ほ、本当に?」
「まあ、俺の推測をもう少し聞いてくれ。だって、おかしいと思わないか?現時点でモモが捕縛されていないなんて、アシュガルトの緻密な警備から考えると有り得ない話なんだ。だとすると、第三王子は意図的にモモの脱走とその計画を隠蔽しているということになる。…それはどうしてだ?」
「さ、さあ?」
ごめんなさい、アーサー。私、今までずっと貴方のことを脳筋だと思ってた。だから今は、正直驚いてる。でも、よく考えてみれば、コンスタンティンと入れ替わりで公務なんかも熟していたワケだし、アホの子のはずが無かったんだよね。
「魔力が無くなったことで己の価値が下がってしまったのならば、周囲も同等に落としてしまえばいい。──そう考えたんだろうな。そもそも第三王子は、自ら望んで敵国の間者になるほどの野心家なんだ。王位継承権が九位くらいだったところを、自力で二位に這い上がったという逸話まである」
「そう…なんだ…」
私、そんな人の魔力を奪っちゃったのね。そりゃあ恨まれるわ。
「自分本位も甚だしいが、たぶん国力が下がることよりも…己の地位を保つことの方を優先したのだろう。だからこそ、この国に災厄を齎す女を招き入れたのが誰なのかを必死になって隠すはずだ。…ということは、モモ、もしかするとお前の計画は案外すんなりと遂行できるのかもしれない」
「そ、そっかな」
では遠慮なく、やっちゃうぞ!
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる