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63.ふ、へ??
しおりを挟むタロサ芋の皮剥きが終わると、一旦休憩に入って良いと言われたのでそのまま身を隠すことにする。コソコソと歩き回り、幸運にもリネン室へと辿り着いたので、ノノくんの安否確認のためアーサーに交信を試みた。
「モモだけど、ノノくんは大丈夫?!」
「モモ!なっ、お前いったいどこにいるんだよっ」
「それには後で答えるから、とにかくノノくんが無事なのか教えて」
「かなり酷い状態だったけど、ルイが魔力を限界まで使って治癒してくれたんだ。浅い傷は複数残っているが、致命傷になりそうなものは全部治したと。今はぐっすり寝ていて、師匠と俺達が付きっきりで看病してるから安心していい」
ホッと胸を撫で下ろし、それから正直に全てを打ち明ける。第三王子と共にアシュガルト王国の王城に転移したこと。そして、今晩の舞踏会でこの国の魔力持ちを壊滅させるということも。案の定、必死に止められたのでこちらも頑張って説得する。
「あのね、異世界から来た私から言わせて貰えば、何千年もかけて何をチンタラ戦ってんのかって感じなの。だって知ってるでしょ?アシュガルドの国軍はたったの8人で、しかも全員魔力持ちだと。イシュタールの3人に比べれば魔力は少ないみたいだけどその分、人数が多い。それで均衡が保たれているワケよね。ここで彼等の魔力を奪ってしまえば万事解決するじゃない。ついでに人員補給されないよう、アシュガルド王国内にいる魔力持ちをゼロにしてしまえばより安心なはずだわ」
「…そんな危険な賭けには乗れない」
アーサーならそう言うと思っていた。
「賭けなんかじゃなく、『確実』だよ。魔力なんて無くても生きていける。そんなものに縋りついているから、いつまで経っても戦いが終わらないの。戦闘用の子供を産むなんておかしいし、どうして誰もそう言わないのかな。アーサーもクロさんもニーニも、人は誰もが幸せになるために生まれてきたはずなのに。なぜ、3人だけが親の愛情も知らず、ただひたすら戦って青春を犠牲にしなければいけないわけ?もしかすると私がこっちの世界に来たのは、馬鹿馬鹿しいこの争いを止めさせるためなのかもしれない。…だから、頑張るね!」
「頑張らなくていい!俺達はこれで納得してるから、だから、モモはそんなことしなくていいんだ」
これ以上話しても埒が明かない気がする。そもそも、これは相談ではなく私の中では決定事項なのだ。きっと大量の魔力を一気に吸収すれば、意識を失って倒れてしまうだろう…そしてそのまま捕縛されてしまうのだ。それでも私はやり遂げてみせる。
ガシッ。
──って、ん?誰かに腕を掴まれたような。
いやいや、そんなまさかね。こんな真っ暗なリネン室に、誰もいるはず…が…
「モモッ、お願いだから考え直してくれ」
「ふ、へ??うぁ、アアアーサアー??」
そりゃあ驚くよね。だって、目の前にアーサーがいるんだもの。
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