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42.識者のレオン
しおりを挟む──そんなこんなで数日後。
ノノくんが戻って来た。久々に会うノノくんは心なしか草臥れているようにも見えたが、伝えたいことが山盛りだった私を止める者はいない。そう、誰もいなかったはずなのに、1人の勇者が立ち上がったのだ。
彼の名は、レオン・メイライ38歳。
通称『識者』である。
彼は誰にでも愛想が良い上に、驚くほど軽かった。そう、ロン毛に茶髪(※この世界では普通です)というチャラい感じの外見は勿論のこと、話す内容もペラッペラ。幾ら希少な固有魔法持ちだろうと、この調子なら誰も信じないよねと思える程のペラッペラぶりだ。以前、師匠も話していたがレオン自身は伯爵なので、格上の人々に昼夜関係無く呼び出され、無償で魔力量の測定や固有魔法の使用方法などをレクチャーさせられまくっていたらしい。
だとすれば、この仕上りは苦労だらけだった過去の集大成なのかもしれないが、そこんとこを鑑みても軽すぎる。この人の言うことって信用できるの?ねえ、本当に?
彼は言った。
「ふむふむ。この子…モモちゃんだっけ?職業の項目が『王子妃』になってるなあ」
そして彼はこうも言った。
「ん?王子1の妃ってどういうことだ?我が国の王子は1人だけのはずだし…。あ、もしかして他国の王子ってことなのか??でも、我が国で召喚した異世界人を、他国に嫁がせるはずは無いし」
確かに。
一緒になって首を傾げていると、ノノくんがそっと私を別室へと連れて行く。それから、いきなりのカミングアウトを始めてくださったのだ。
「今まで黙っていたが、アーサーヴェルトとコンスタンティンは双子なんだ。あ、これは極秘事項だから絶対誰にも言うなよ」
「あら、まあ」
間抜けな相槌だというのは分かっている。だけど、仕方ないではないか。アーサーヴェルトは王弟の息子ではなくて、王子なのだと。そんなの初耳だったし、だからあの2人は入れ替わることが出来るのかと納得することしきり。
「そっかあ、だから王子1…って、どっち?どっちが1でどっちが2なの?」
そこんとこが重要なのよと突っ込む娘に、ノノくんは微笑みながらこう答えた。
「さあな、どっちだろう?」
「し、質問に質問で返さないでよ!普通は最初に生まれた方でしょッ」
分かり易く首を横に振りながらノノくんは溜め息をひとつ吐く。
「この国で多胎児が生まれた場合、出てきた順ではなく魔力の量で嫡男になるかそれ以外になるかが決まるんだ。取り敢えず、赤ん坊の頃はコンスタンティンの魔力の方が多かったんだろうな。残念ながら今はアーサーヴェルトに追い越されたが」
「ちょっ、それじゃあ判断出来ないでしょっ」
あ、そうだ。レオンにアーサーヴェルトの鑑定をして貰えば、彼が王子1なのか王子2なのか分かるのでは?…我ながら妙案だと思ったのに、ノノくんが悲しそうにそれを否定する。
「ダメだ。あいつらが双子だというのはトップシークレットなんだぞ。見ただろう、あのレオンのペラッペラな感じ。あの男に口止めは出来ない、というかしても意味が無い。だったら、秘密を守るためにもアーサーヴェルトの鑑定はさせられない。そんなワケで堪えろ、モモ」
「へ、はあ」
いや、でも。私の伴侶となる人がどっちかって、重要じゃない?その答えによっては、人生が大きく変わるんですけど??
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