真冬のカランコエ

ももくり

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第一章

Rain 2

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こぶしの大きさぐらいの小さなだるまを買った。
特に理由があるわけではないのだが、通りかかった神社で縁日をしており、そこで売っていたのだ。
あいつのためのお土産に、わたあめを買ったついでに買ったものだ。
赤くてだるまっぽい形と模様をしただるまである。

家に帰ると待ちわびていた犬のように俺を出迎えるあいつにわたあめを渡すと、、キッチンの机の上にだるまを置いた。

『何? これ?』

はむはむと綿あめを食べながらだるまをつつくあいつ。
だるまは一度横になるが、元の位置に戻った。

『わ、もどった!?』
「だるまだ。転んでも戻るから不撓不屈の象徴なんだ」
『ふとうふくつ?』
「不撓も不屈も、困難に負けないという意味だ。困難に負けてもやり遂げる、そういう意味だな」
『へー、えらいんだね、だるまさんは』

片手でわたあめを食べながら、つんつんとだるまを指でつついてもてあそんでいる。
すぐにビビッてひるむこいつにも、少しは見習ってほしいものである。

『あと、白目はあるけど黒目はないよね』
「ああ、モデルとなったのは達磨法師っていうえらいお坊さんなんだ。座禅を組んで悟りを開いたという人で、目を入れると開眼、つまり悟りを開いたっていうことになるんだな」
『さとり?』
「その辺になると仏教の難しい話になるから勘弁してくれ」

悟りとは何かといわれるとなかなか困る。おそらくそれが分かったら悟りを開いたことになるとかいうたぐいの概念だ。

「で、何か遂げようと決意をした時に片目に黒目を入れて、達成した時にもう片方に黒目を入れるんだ」
『なるほど、じゃあボクもなにか決意しようかな。どらやき100個食べるとか』
「それ、単に俺に集ってるだけだろ。どこに苦労があるんだよ」

それのどこに苦労があるのか、はなはだ疑問である。

『真っ赤なのも何か理由があるの?』
「達磨法師は9年座禅を組んで、悟りを開いたって言われているんだ。で、9年間も壁に向かって座禅を組み続けたから、手足が腐ってなくなったという伝説がある」
『何それこわい!!』
「だから悟りを開いたときに手足がなく、血まみれだったと。だからだるまにも手足がなくて血まみれで真っ赤なんだという俗説があるな」
『ひいっ!! 呪いの人形じゃない!!!』

わたあめ片手にサメ君の後ろに隠れてしまった。
深く考えていなかったが、確かに呪いの人形的な要素もありそうだ。

結局だるまはあいつには不評であり、俺の机の上の片隅に飾られることになった。
そうしたらあいつは俺の机に近寄らなくなったから、確かに魔よけの効果はあるのかもしれない。
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