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たぶん愛は私を救う
しおりを挟む「でもまあ、例の年下男ってのが案外良くて。小椋不動産のバカ息子とムリヤリ見合いさせてみたり、俺と奪い合ってるフリをしたりして、揺さぶりを掛けてみたワケ。
浦っての?アイツ、ほんとイイな。
身も心も健康だ。そこそこ苦労してるっぽいし、親の仕事を恥じていない。無駄にプライド高くないところも好感持てる。取り敢えずアレにしておけよ、コトリ」
な、なんなのこの上から目線ッ。あのバカ親父といい、どいつもこいつも本当に
大好き!!
「ったくもう、父さんもせんせ…じゃなくて、に、兄さんも私のこと好き過ぎよね」
悔しいから動揺させてやろうと思ったのに。敵はむしろ胸を張って言い返してくるのだ。
「だってコトリ、めちゃくちゃ可愛いもん。見た目だけじゃなく、中身も全部可愛いし。我が妹ながら、非の打ちどころが無いだろ。これほど愛されるべき存在は、この世に2つと有るものか。
俺にもし魔法が使えたならば、こう、コトリを小さく手の平に納まるサイズにしてな、いつもポケットに入れて連れ歩く。そんで、お前が俺ナシでは生きていられない様に溺愛しまくってやる。
『くすん、お兄ちゃん、仕事が忙しかったの?でもコトリのことももっと構ってよ』
とか毎日言わせて悦に入るんだ。
…どうだ!気持ち悪いだろう?
お前の兄はそういうことをいつも考えている、ちょっとイカレた野郎だ」
…………
「アハハ、なんだそれ。その時の富樫さんの顔を見たかったなあ」
「それがいつも通りの顔だったんだよ!表情筋をほぼ動かさずにそんなことを言ったの。なんか、激ヤバだったわ」
祖父の葬式が終わった後も暫く実家にいたため、5日ぶりで自宅マンションに戻って、こうして浦くんと寛いでいるのだが。
ちなみにこの人は今日、仕事が休みなので何もかも洗濯しまくったそうで。ウッカリ部屋着も全部洗ってしまったらしく、肌寒いこの時期にハーフパンツ1枚という姿でソファに座っている。
もちろん、上半身は裸だ。
こういう状況にも驚かなくなった自分もどうかと思うが、とにかく平気なのだから仕方ない。
「…でさ、長いあいだ保留にしてたけど、ここらでハッキリしておこうかと思って」
「あ、ハイ」
ゴクリとその喉が大きく上下したかと思うと、浦くんは改めて浅く座り直した。
なので私は座ったままペコリとお辞儀する。
「えっと、改めて私と付き合ってください。もちろん、結婚前提で」
「ええええっ?!い、いいんですか??」
なぜ驚く。
「なんで?全然いいけど」
「結婚なんて人生の一大事を簡単に決めて…、その…後悔とかしません??そんなこと言われたら俺、絶対にもう離してあげませんよ??」
「うん、望むところなんですけど~」
「わお!望まれちゃってもイイんッスか?!」
「世界で一番可愛いと評判のこの私を、慎んで受け取るといいわよ」
「はいっ!!受け取らさせていただきますッ」
世界一だなんて照れ隠しのつもりで言ったけど、父や先生のことを考えると、満更ウソでも無いような気がした。
だって彼らにとって私は、
本当に世界一可愛い存在なのだから。
ふわりと浦くんの匂いが鼻孔をくすぐる。何故かと言うと、まあるくなった私を包むかのようにして彼が抱き締めているせいだ。
「俺、一生コトリさんには敵わない気がする。だから死ぬまで俺を翻弄してください。我儘を言って、俺を試して、俺をトリコにして」
「ぷっ、回文みたい。コトリのトリコ?“ト”と“リ”が入れ替わったら完璧なのにね」
耳元で何度も浦くんが囁く。
>俺はコトリのトリコ。
>コトリのトリコ…。
そして私は幸せで心を満たされるのだ。
--END--
※最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました!ちなみに、富樫は『私たちは恋をする生き物です』にもメインで登場しております。そして、今作は公開の順番がメタメタになり誠に申し訳ございませんでした。予約投稿していたはずが、どうやらスマホ操作を誤って一話だけ即公開としてしまったようなのです。ダメダメだな、私。しょんぼり…。
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はっ!!浦君の事完全に忘れてた‼️
おっ、思い出してください。
一応、本作ではヒーロー的な位置づけに…いる…(言い切る自信は無い)はずなんですよッ。