たぶん愛は世界を救う

ももくり

文字の大きさ
上 下
31 / 45

愛情の深さ

しおりを挟む
 
 
 ふう大変。
 あ、そう言えばどこで寝かせよう?

 私が先生の家に泊まった時は、ゲストルームのベッドの上で寝かせてくれたんだよね。早朝にも関わらず食事も用意されていて、車で自宅まで送り届けて貰った。至れり尽くせりにされておきながら、自分の時はソファで寝かせるとか無いよね。

 しかし我が家のベッドは2つだけ。

 今晩だけ浦くんを自分のアパートに帰…いや、きっと帰らないと言うに決まっている。じゃあ、私と浦くんが一緒に寝て、先生を…ダメダメ、数時間前に本心を聞いたじゃない。先生は私のことが好きなんだよ?なのにその私が年下男と一緒に寝ていることを知ったら、悲しませることになってしまう。

 じゃあ、私が先生と一緒に寝る?

 もしくは浦くんをソファに寝かせて…いやもういっそのこと私がソファで寝るってのはどう?客用布団や毛布なんて他に無いし、風邪をひいちゃうかもしれないナー。

 ああもう、どうすりゃいいんだ??




 …………
「ええっ?!コトリさん、本気で言ってます?」
「うーん、色々考えてみたんだけどさあ、私の部屋のベッドはシングルだけどこっちのはダブルじゃない?だから余裕だと思うんだよね」

 そんなこんなで浦くんの協力を得て無事帰宅。先生をどこに寝かせるのかと訊かれたので、悩み抜いた結果を報告したのだが。案の定、激しい抵抗に遭っている。

「だっ、俺がどうしてこの男と一緒に寝なきゃいけないんですかッ?!」
「だってウチのソファ、小さいし。浦くんも先生も長身だから絶対にハミ出るよね。残念ながら私は、ソファで寝たくないの。どうせ先生は熟睡してるし、別にいいじゃない」

 強気な私に押されたのか、徐々に浦くんは懐柔されていく。

「そんなこと言うなら私が先生と一緒に寝るよ」
「そ、それはダメ!絶対にダメですッ」

「だったらいいよね?」
「う…、し、仕方ないなあ」

 というワケで。男2人が同じベッドでご就寝となったのである。




 …そして翌朝。日課である朝イチの日光浴のため窓辺に立ち、『すう、はあ』と深呼吸をしながらコッソリと男たちの様子を伺う私。

 ダイニングテーブルに並べられた朝食をボーッと眺めている先生と、その先生を隣席から凝視している浦くん。どちらも人とのコミュニケーションが苦手なので、ひたすら無言である。不穏な空気を感じつつも、私は先生の正面の席にやわやわと腰を下ろす。

「色々と迷惑を掛けたみたいで…悪かったな。今後は二度とこんなことが無いようにするから」
「あはは、本当ですよ~。あんな先生、初めて見たのでビックリしました」

 陽気に返事をしてみたものの、ギクシャクした雰囲気はどうにも払拭出来ない。ていうか、この人たち互いを意識しているのにそれを相手に気取られないよう頑張り過ぎ。先生が私と話すと、その隙に浦くんが先生をガン見して。浦くんが私と話すと、その隙に先生が浦くんを凝視する。

 “だるまさんが転んだ”でもしているつもり?

「あの、紹介がまだでしたよね。先生、こちらが浦拓真さんです。浦くん、こちらが富樫先生だよ」

「……」
「……」

 ええ、ええ、そうでしょうね。
 何と言っていいのか分かりませんよね。

「あの…、富樫…せ…さんは、本気でコトリさんのことを好きなんですか?」
「ええ、まあ、それなりに」

 泥酔時に本音を聞かされていなかったら、きっとこの言葉にウッカリ騙されていただろう。

 でも、私は知ってしまったのだ。
 …この人の愛情の深さを。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語

六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

隠れ御曹司の手加減なしの独占溺愛

冬野まゆ
恋愛
老舗ホテルのブライダル部門で、チーフとして働く二十七歳の香奈恵。ある日、仕事でピンチに陥った彼女は、一日だけ恋人のフリをするという条件で、有能な年上の部下・雅之に助けてもらう。ところが約束の日、香奈恵の前に現れたのは普段の冴えない彼とは似ても似つかない、甘く色気のある極上イケメン! 突如本性を露わにした彼は、なんと自分の両親の前で香奈恵にプロポーズした挙句、あれよあれよと結婚前提の恋人になってしまい――!? 「誰よりも大事にするから、俺と結婚してくれ」恋に不慣れな不器用OLと身分を隠したハイスペック御曹司の、問答無用な下克上ラブ!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...