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愛情の深さ
しおりを挟むふう大変。
あ、そう言えばどこで寝かせよう?
私が先生の家に泊まった時は、ゲストルームのベッドの上で寝かせてくれたんだよね。早朝にも関わらず食事も用意されていて、車で自宅まで送り届けて貰った。至れり尽くせりにされておきながら、自分の時はソファで寝かせるとか無いよね。
しかし我が家のベッドは2つだけ。
今晩だけ浦くんを自分のアパートに帰…いや、きっと帰らないと言うに決まっている。じゃあ、私と浦くんが一緒に寝て、先生を…ダメダメ、数時間前に本心を聞いたじゃない。先生は私のことが好きなんだよ?なのにその私が年下男と一緒に寝ていることを知ったら、悲しませることになってしまう。
じゃあ、私が先生と一緒に寝る?
もしくは浦くんをソファに寝かせて…いやもういっそのこと私がソファで寝るってのはどう?客用布団や毛布なんて他に無いし、風邪をひいちゃうかもしれないナー。
ああもう、どうすりゃいいんだ??
…………
「ええっ?!コトリさん、本気で言ってます?」
「うーん、色々考えてみたんだけどさあ、私の部屋のベッドはシングルだけどこっちのはダブルじゃない?だから余裕だと思うんだよね」
そんなこんなで浦くんの協力を得て無事帰宅。先生をどこに寝かせるのかと訊かれたので、悩み抜いた結果を報告したのだが。案の定、激しい抵抗に遭っている。
「だっ、俺がどうしてこの男と一緒に寝なきゃいけないんですかッ?!」
「だってウチのソファ、小さいし。浦くんも先生も長身だから絶対にハミ出るよね。残念ながら私は、ソファで寝たくないの。どうせ先生は熟睡してるし、別にいいじゃない」
強気な私に押されたのか、徐々に浦くんは懐柔されていく。
「そんなこと言うなら私が先生と一緒に寝るよ」
「そ、それはダメ!絶対にダメですッ」
「だったらいいよね?」
「う…、し、仕方ないなあ」
というワケで。男2人が同じベッドでご就寝となったのである。
…そして翌朝。日課である朝イチの日光浴のため窓辺に立ち、『すう、はあ』と深呼吸をしながらコッソリと男たちの様子を伺う私。
ダイニングテーブルに並べられた朝食をボーッと眺めている先生と、その先生を隣席から凝視している浦くん。どちらも人とのコミュニケーションが苦手なので、ひたすら無言である。不穏な空気を感じつつも、私は先生の正面の席にやわやわと腰を下ろす。
「色々と迷惑を掛けたみたいで…悪かったな。今後は二度とこんなことが無いようにするから」
「あはは、本当ですよ~。あんな先生、初めて見たのでビックリしました」
陽気に返事をしてみたものの、ギクシャクした雰囲気はどうにも払拭出来ない。ていうか、この人たち互いを意識しているのにそれを相手に気取られないよう頑張り過ぎ。先生が私と話すと、その隙に浦くんが先生をガン見して。浦くんが私と話すと、その隙に先生が浦くんを凝視する。
“だるまさんが転んだ”でもしているつもり?
「あの、紹介がまだでしたよね。先生、こちらが浦拓真さんです。浦くん、こちらが富樫先生だよ」
「……」
「……」
ええ、ええ、そうでしょうね。
何と言っていいのか分かりませんよね。
「あの…、富樫…せ…さんは、本気でコトリさんのことを好きなんですか?」
「ええ、まあ、それなりに」
泥酔時に本音を聞かされていなかったら、きっとこの言葉にウッカリ騙されていただろう。
でも、私は知ってしまったのだ。
…この人の愛情の深さを。
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