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伏兵登場‼
しおりを挟むご、ご自慢ッ?
この何もかもドギツイ紫色の悪趣味な部屋が?天井からぶら下がってるのはもしかしなくてもミラーボール?…なんてことを考えているうちに上半身裸の光貴が覆い被さって来る。
「キャッ、何すんのっ。同意も無しに行為に及ぶのは立派な犯罪だよ!」
「またまた~。そういうポーズはいいからさ。でも、抵抗されながらってのも結構好きだぞ」
ふんぬッ!!
渾身の力を込めて、股間を蹴った。
私にはソレが無いのでよく分からないが、きっと死ぬほど痛いに違いない。勢い余って床に転げ落ちた光貴は、そのまま体を“くの字”に曲げて悶絶している。
「くうおっ!いっ、し、死ぬ…、ぐうう…」
「だ、大丈夫??」
逃げることも出来たのだが、余りにも苦しむ姿が強烈過ぎて、ついウッカリ介抱してしまう私。
これがマズかったようだ。
「ふへへ、捕まえた」
「え?うわ、キャア!!」
形勢逆転。床の上で押し倒されて身動きが取れない。
バカだ…。のこのことこんな男の部屋に連れ込まれた挙句、こんな状況に陥ってしまうだなんて。
抑え付けられた手首がジンジン痛み出し、膝の上に座られて足も動けなくなった、その時。
「はいはい、そこまでッ!!」
救世主が現れた。
颯爽と現れたその人が、寝室の照明を一気に点けたらしく。ついでに誤ってミラーボールのスイッチもONにしてしまったようであまりの閃光に目が眩み、明るさに慣れるまで視覚を奪われてしまう。
「なっ、なんでこんな時に来るんだよッ!!」
「だってココは元々、寛貴兄様のマンションで光貴のモノじゃ無いでしょッ」
…えと、この声は。
というか、『寛貴兄様』というキーワードから察するに…。
ようやく目が慣れてきたことも有り、カッと瞼を見開きながら私は叫んだ。
「まっ、茉莉子さんッ?!」
「はあ~い」
寝室のドアの前でヒラヒラと手を振りながら、陽気に彼女は笑っている。つい、つられて私も手を振り返し。そして疑問を口にした。
「な、なんでココに??」
「ウチの父がね、コトリさんと光貴が結婚するとか血迷ったことをワザワザ報告に来たのね。それで、榮太郎の秘書であるコトリさんと結婚させるんだから、これを機に光貴を帯刀グループの系列会社に転職させてやってくれとかホザくもんでさ」
あのハゲ親父、無茶を言いやがる。
「でもコトリさんには浦くんがいるでしょ?しかも相手が光貴って、有り得ないし。だから、父を問い質したの。そしたら、結婚どころか見合い前の状態だって判明して。それで、日時を聞き出して事の成り行きを見守ろうと思ったワケよ」
「うーっ、茉莉子さん、でかした!偉いッ!」
茉莉子さんは喋りながらも、しれっとした顔で光貴を突き飛ばし、素早く私を抱き起こした。
「さっきも言ったけど、このマンションは長兄である寛貴兄様の名義でね。実は一時期、結婚する方向で話が進んでいたのだけど経営が暗礁に乗った途端、先方から破談にされてしまって。
父が新居用にと購入したココも不要になってしまったから、一時的に光貴に貸しているだけなの。それを勝手にこんな悪趣味に改装するなんて。
もしかしてこれで『返せ』と言われないとか思ってるのかしら?本当に脳みそ空っぽよねえ。きっとコトリさんには『自分のマンション』だとか言ったんでしょ?…ほんと、見栄っ張りなんだから」
コクコクと私が首を上下に激しく動かすと、茉莉子さんは蔑むように光貴を一瞥する。そして、私をリビングのソファに座るよう促した。
…って、あれ?
そこには、見知らぬ女性が先にいた。多分、年齢は私たちより少し上くらいで。ワリと地味めの、落ち着いた雰囲気の人である。
「こんにちは」
「えっ?!はい、こんにちは…」
細かく瞬きを刻んで、『誰?』と茉莉子さんに目で問い掛けてみたところ、驚きの回答が。
「こちらは原田沙知さん。光貴ともう3年の付き合いになるそうよ。なんかねー、あいつそういう危機感無いから、プライベートをSNSで公開しまくってて」
「えっ、こちらの方、光貴と付き合ってるの?」
「そう。あちこちに登場していた『俺の彼女』と連絡を取るのもラクラクだったわ」
「う、うわあ…」
この調子だとあの男、別れ話もせずに私と結婚する気だったんだな。
何やら不穏な空気が流れ出したその時、寝室のドアがカチャリと開いて光貴が出て来た。このマンションはリビングが無駄に広く、左右に2つずつドアが有る。
たぶん右の2つはキッチンと浴室に続いていて、左の2つは寝室とゲストルームだ。だから、寝室のドアを開けるといきなりリビングにいる私たちと対面することになるのである。
平静を装いながら出ようとしたつもりらしいが、予想外の伏兵を発見し、固まる光貴。
「…あ、二度見した」
「か~ら~の~、あ、口笛吹くマネをして?ああ、寝室に戻っちゃった…」
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