たぶん愛は世界を救う

ももくり

文字の大きさ
上 下
18 / 45

伏兵登場‼

しおりを挟む
 
 
 ご、ご自慢ッ?

 この何もかもドギツイ紫色の悪趣味な部屋が?天井からぶら下がってるのはもしかしなくてもミラーボール?…なんてことを考えているうちに上半身裸の光貴が覆い被さって来る。

「キャッ、何すんのっ。同意も無しに行為に及ぶのは立派な犯罪だよ!」
「またまた~。そういうポーズはいいからさ。でも、抵抗されながらってのも結構好きだぞ」

 ふんぬッ!!
 渾身の力を込めて、股間を蹴った。

 私にはソレが無いのでよく分からないが、きっと死ぬほど痛いに違いない。勢い余って床に転げ落ちた光貴は、そのまま体を“くの字”に曲げて悶絶している。

「くうおっ!いっ、し、死ぬ…、ぐうう…」
「だ、大丈夫??」

 逃げることも出来たのだが、余りにも苦しむ姿が強烈過ぎて、ついウッカリ介抱してしまう私。

 これがマズかったようだ。

「ふへへ、捕まえた」
「え?うわ、キャア!!」

 形勢逆転。床の上で押し倒されて身動きが取れない。

 バカだ…。のこのことこんな男の部屋に連れ込まれた挙句、こんな状況に陥ってしまうだなんて。

 抑え付けられた手首がジンジン痛み出し、膝の上に座られて足も動けなくなった、その時。

「はいはい、そこまでッ!!」

 救世主が現れた。

 颯爽と現れたその人が、寝室の照明を一気に点けたらしく。ついでに誤ってミラーボールのスイッチもONにしてしまったようであまりの閃光に目が眩み、明るさに慣れるまで視覚を奪われてしまう。

「なっ、なんでこんな時に来るんだよッ!!」
「だってココは元々、寛貴兄様のマンションで光貴のモノじゃ無いでしょッ」

 …えと、この声は。
 というか、『寛貴兄様』というキーワードから察するに…。

 ようやく目が慣れてきたことも有り、カッと瞼を見開きながら私は叫んだ。

「まっ、茉莉子さんッ?!」
「はあ~い」

 寝室のドアの前でヒラヒラと手を振りながら、陽気に彼女は笑っている。つい、つられて私も手を振り返し。そして疑問を口にした。

「な、なんでココに??」
「ウチの父がね、コトリさんと光貴が結婚するとか血迷ったことをワザワザ報告に来たのね。それで、榮太郎の秘書であるコトリさんと結婚させるんだから、これを機に光貴を帯刀グループの系列会社に転職させてやってくれとかホザくもんでさ」

 あのハゲ親父、無茶を言いやがる。

「でもコトリさんには浦くんがいるでしょ?しかも相手が光貴って、有り得ないし。だから、父を問い質したの。そしたら、結婚どころか見合い前の状態だって判明して。それで、日時を聞き出して事の成り行きを見守ろうと思ったワケよ」
「うーっ、茉莉子さん、でかした!偉いッ!」

 茉莉子さんは喋りながらも、しれっとした顔で光貴を突き飛ばし、素早く私を抱き起こした。

「さっきも言ったけど、このマンションは長兄である寛貴兄様の名義でね。実は一時期、結婚する方向で話が進んでいたのだけど経営が暗礁に乗った途端、先方から破談にされてしまって。

 父が新居用にと購入したココも不要になってしまったから、一時的に光貴に貸しているだけなの。それを勝手にこんな悪趣味に改装するなんて。

 もしかしてこれで『返せ』と言われないとか思ってるのかしら?本当に脳みそ空っぽよねえ。きっとコトリさんには『自分のマンション』だとか言ったんでしょ?…ほんと、見栄っ張りなんだから」

 コクコクと私が首を上下に激しく動かすと、茉莉子さんは蔑むように光貴を一瞥する。そして、私をリビングのソファに座るよう促した。

 …って、あれ?

 そこには、見知らぬ女性が先にいた。多分、年齢は私たちより少し上くらいで。ワリと地味めの、落ち着いた雰囲気の人である。

「こんにちは」
「えっ?!はい、こんにちは…」

 細かく瞬きを刻んで、『誰?』と茉莉子さんに目で問い掛けてみたところ、驚きの回答が。

「こちらは原田沙知さん。光貴ともう3年の付き合いになるそうよ。なんかねー、あいつそういう危機感無いから、プライベートをSNSで公開しまくってて」
「えっ、こちらの方、光貴と付き合ってるの?」

「そう。あちこちに登場していた『俺の彼女』と連絡を取るのもラクラクだったわ」
「う、うわあ…」

 この調子だとあの男、別れ話もせずに私と結婚する気だったんだな。

 何やら不穏な空気が流れ出したその時、寝室のドアがカチャリと開いて光貴が出て来た。このマンションはリビングが無駄に広く、左右に2つずつドアが有る。

 たぶん右の2つはキッチンと浴室に続いていて、左の2つは寝室とゲストルームだ。だから、寝室のドアを開けるといきなりリビングにいる私たちと対面することになるのである。

 平静を装いながら出ようとしたつもりらしいが、予想外の伏兵を発見し、固まる光貴。

「…あ、二度見した」
「か~ら~の~、あ、口笛吹くマネをして?ああ、寝室に戻っちゃった…」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

辺境騎士の夫婦の危機

世羅
恋愛
絶倫すぎる夫と愛らしい妻の話。

【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件

百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。 そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。 いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。) それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる! いいんだけど触りすぎ。 お母様も呆れからの憎しみも・・・ 溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。 デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。 アリサはの気持ちは・・・。

【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される

Lynx🐈‍⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。 律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。 ✱♡はHシーンです。 ✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。 ✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

【R18】今夜、私は義父に抱かれる

umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。 一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。 二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。 【共通】 *中世欧州風ファンタジー。 *立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。 *女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。 *一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。 *ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。 ※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25

寡黙な彼は欲望を我慢している

山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。 夜の触れ合いも淡白になった。 彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。 「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」 すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

処理中です...